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年間25億ドル以上の資金流入 過熱する宇宙投資はまだ続くのか?

ITmedia ビジネスオンライン 7月8日(金)10時54分配信

 米国を代表する宇宙ビジネスカンファレンス「NEWSPACE 2016」が6月21日~23日の日程で開催された。これまで開催地はシリコンバレーだったが、今年はシアトルに場所を移した。

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 筆者は昨年初めてこのイベントに参加したが、今回は「Global Space」というパネルディスカッションに登壇して、他国で新宇宙産業のアクセレレータとして活躍する方々と議論した。今回はそこで見聞きした宇宙投資の現状をお伝えしたい。

●宇宙ベンチャー投資が2015年は15億ドル

 近年、宇宙ベンチャーへの投資が急ピッチで加速している。今年4月に米調査会社のTauri Groupが発表した調査レポート「START-UP SPACE」によると、2015年の宇宙ベンチャーへの資金流入は年間で約25億ドルを超えた。内訳としてベンチャーキャピタルなどからの投資が約15億ドル近くに上っており、これは過去10年間のベンチャーキャピタルなどによる投資額の合計を超える金額だ。

 投資額だけではない、宇宙ベンチャーに投資するベンチャーキャピタルの数も2000年代前半は年平均5社以下であったが、2000年代後半では10社近くなり、2015年には50社以上が投資を行った。近年の米SpaceXの成功はもちろんだが、2013年の化学メーカー大手・米Monsantoによる気象データベンチャー・米Climateの買収(約1000億円)、2014年の米Googleによる衛星画像解析ベンチャー米Skybox Imaging(現Terra Bella)の買収(約500億円)などが投資家にエグジットの可能性を見せた影響もあるかもしれない。

 日本でも、小型衛星ベンチャーのアクセルスペースが2015年にシリーズA投資ラウンドで約18億円を調達。また、スペースデブリ(宇宙のゴミ)除去を目指すアストロスケールが2016年にシリーズB投資ラウンドで産業革新機構などから約30億円を調達するなど、盛り上がりを見せている。

●200人のエンジェル投資家をネットワーク化

 こうした世界的なベンチャー投資を支えているのが、各国のベンチャーキャピタルやアクセレレータである。

 その中でも有名なのが、今回のNEWSPACE 2016でもスピーカーとして参加した米Space Angels Networkだ。同社はエンジェル投資家の世界的なネットワークを有しており、有望な起業家と投資家を繋ぐ役割を果たす。その投資領域は宇宙のみに特化している。

 メンバーの数は既に200人を超えており、米国だけでなく、世界各国に広がっている。これまで投資を受けた宇宙ベンチャー企業の数は20を超えており、小型衛星の米Planet Labs、小惑星資源探査の米Planetary Resources、月面輸送プラットフォームを目指す米Astrobotic Technology、小型衛星専用ロケットを開発する米Firefly space systemsなど有力ベンチャー企業が顧客リストに名を連ねている。

 同社は初期段階での投資が特徴であり、投資額は10万ドル前後のケースもあるが、今年発表されたPlanetary ResourcesのシリーズA投資ラウンドは約2000万ドルに及んだ。昨今の投資領域として同社のチェアマンを務めるジョー・ランドン氏は「Terrestrial(地上)、In-Space(宇宙空間)、Planetary(惑星)の3つがあり、Terrestrialが最も成熟している。In-Spaceは成長期で参入が多い」と語っていた。

 同社では非常にクオリティを重視している。エンジェル投資家に名を連ねるには一定の基準を満たす必要があり、毎年数百人の応募があるものの、現在まで200人のみとなっている。また評価プロセスを経て投資を受けられる企業も、ランドン氏は「5%程度にすぎない」と語るなど、狭き門である。

●イスラエルやオーストラリアにも広がる支援

 今や米国だけではなく、各国で宇宙ベンチャーを支援するアクセレレータが登場している。今回筆者がパネルディスカッションで一緒になったのが、Space-Nest(イスラエル)の共同創業者であるオファー・ラピッド氏、Delta-V(オーストラリア)の創業者、ティム・パーソンズ氏だ。

 Space-Nestはイスラエル初の宇宙分野のアクセレレータであり、同国から優れた宇宙ベンチャーを生み出すことを目的に設立。航空宇宙大手のIAI(Israel Aerospace Industries)がバックアップしている点も注目だ。ベンチャー企業に対して、資金面に加えて、技術面や事業面での支援も行う。シーズ投資からプロトタイピングや試験など、フェーズに合せた支援を展開している。

 Delta-Vもオーストラリアで最初の宇宙アクセレレータだ。オーストラリアでは2018年までに小型衛星6基を打ち上げるプロジェクトが動いており、同社は従来の1000分の1のコストとなる衛星開発を支援している。またベンチャーに対しても独自の立ち上げプログラムを保有しており、提携先を紹介することでシリーズA投資やオペレーション支援を行っている。

 両社とも近年Space Angels Networkとパートナーシップを結び、それぞれの国の起業家と世界の投資家をつなげている。

●今後の見通しは?

 このように過熱する宇宙ベンチャー企業への投資だが、今後の見通しはどうなのだろうか? この点に関しては、有力投資家の間でも見方が分かれている。

 今年4月にコロラドで開催された宇宙カンファレンス「Space Symposium」では、著名投資家が登壇するパネルがあったが、Space Angels Networkのマネージング・ディレクターであるチャド・アンダーソン氏は「エンジェル投資家の興味は広がっている。投資がスローダウンする兆候は見られない。2016年の第一四半期の入りは2015年を既に超えている」と発言した。

 他方で、金融サービス業務を行っている米Raymond James & Associatesでシニアバイスプレジデントを務めるクリス・クィルティ氏は、「2015年に株式公開した企業の70%が、上場当初より安い価格で株式取引されている」と発言し、これを良くない傾向であると指摘した。今後の動向を見守りたい。

(石田真康)

最終更新:7月8日(金)11時10分

ITmedia ビジネスオンライン

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