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スマホで有毒ガスを検知できるセンサー材料――NFCタグに組み込むだけ

EE Times Japan 7月8日(金)15時38分配信

■10ppmの有毒ガスを5秒で

 物質・材料研究機構(NIMS)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点のフロンティア分子グループで主任研究員を務める石原伸輔氏は2016年7月7日、有毒ガスにさらされると導電性が大きく上昇するセンサー材料を開発したと発表した。

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 また、NFC(近距離無線通信)タグの電子回路内に同センサー材料を組み込み、スマートフォン(スマホ)で10ppmの有毒ガスを5秒で検知できることも実証したという。

導電性は最大3000%上昇

 このセンサー材料は、弱い相互作用で分子が連結した「超分子ポリマー」と呼ばれる高分子でカーボンナノチューブ(CNT)の表面を覆ったもの。これが求電子性*)の有毒ガスにさらされると、導電性が最大3000%上昇するという。

*):化学反応において、電子を受け取る側、奪う側の化学種を指す。化学的な反応性が高く、急性毒性を示すものが多い。化学兵器の多くが求電子性化学物質に分類される。

 CNTは本来電気の流れやすい材料だが、超分子ポリマーは絶縁被膜の役割を果たし、CNTを電気が流れにくい状態にする。特に、超分子ポリマー中に含まれるオキシム基(C=N-OH)は、サリンなど神経ガスの解毒剤として知られる2-PAMに似せた化学構造。サリンやホスゲンを含む幅広い種類の求電子性有毒ガスと高い反応性を示すという。これにより被覆が破壊され、CNTの導電性が元の高い状態に戻る。導電性の変化量は、有毒ガスの濃度と被ばく時間に比例し、市販の抵抗計で容易に検知できるとしている。

 同研究チームが実際に、超分子ポリマーで被覆されたCNTをサリンやホスゲンなどの有毒ガスにさらしたところ、最大3000%の導電性の上昇を示した。水やエタノール、ヘキサンなど環境中に存在する蒸気に同センサーをさらすと、導電性は数%減少するのみで、同センサーが有毒ガスセンサーに特異的に反応することが確認されたとする。

■1グラムで、400万個のセンサーを作成可能

 さらに、同センサー材料を市販のNFCタグの電子回路中に組みこむことで、スマホで読み取り可能な有毒ガスセンサーを実現。NFC通信可能なスマホをかざし、スマホでNFCタグを読み取れるかどうかで、有毒ガスの有無を容易に判定できるという。

 上記図Aに示す回路設計では、安全な環境下ではスマホでNFCタグの商法を読み取ることはできない。NFCタグが有毒ガスにさらされて、センサー部位の導電性が約100%上昇すると、NFCタグの共振特性に変化が起こり、NFCタグを読み取ることができるようになる。つまり、スマホでNFCタグが読み取ることができると、危険であることを指す。化学兵器の一種である塩化チオニルに対しては、10ppmの低濃度ガスを5秒間同センサーに当てるだけで、NFCタグが読み取れる状態に変化することを実証したという。

 上記図Bに示す回路では、安全な状態ではスマホでNFCタグの情報を読み取ることができる。NFCタグが有毒ガスにさらされると、スマホでNFCタグを読み取ることができない。2つの応答の異となるNFCタグセンサーを組み合わせることで、スマホの故障やセンサーの断線による誤判定を防止でき、高信頼性の有毒ガスセンサーを構築できるとした。

 センサーは使い捨てとなっているが、NIMSは「今回開発した材料が1グラムあれば、400万個のセンサーが作成できるため、安価に大量供給できる」と語る。

■今後は、幅広い有毒ガスを検知可能に

 今後、超分子ポリマーの分子構造を改変し、さらな高感度と高速化や、さまざまな有害化学物質を簡単に検知できる化学センサーを開発する予定。また、応用先に適した無線通信技術(通信距離、消費電力など)を選択し、クラウド技術と融合しながら、安心で安全な社会の実現に貢献できるシステムを開発していくとしている。

 なお、同研究は、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)と共同で行われている。

最終更新:7月8日(金)15時38分

EE Times Japan