ここから本文です

値上げされた「Evernote」 ユーザーは他サービスに移行すべき?

ITmedia PC USER 7月8日(金)17時58分配信

 多くのユーザーに親しまれている「Evernote」(エバーノート)は、PCはもちろん、スマートフォンやタブレットといったデバイスからユーザーが作成したノートブックや簡単なメモ、ToDoリスト、プレゼンテーションのスライド、PDFファイル、名刺まで、ユーザーが必要とする情報を一カ所にまとめられるクラウドノートサービスだ。

【AndroidスマホからWeb版Evernoteにアクセスすると】

 利用プランには無料の「Evernote ベーシック」と、有料の「Evernote プラス」「Evernote プレミアム」という3つが用意されている。それぞれ利用できる機能に差をはあるが、無料のベーシックプランであっても月間でアップロードできる総データ量が異なる程度の差なので、十分実用的に利用できる。Evernoteを使いこなしているユーザーにとっては、もはや無くてはならないサービスになりつつあるのではないだろうか。

 ところが、6月29日に価格プランと内容の改定が発表された。無料のベーシックはアプリで同期できるデバイスが2台までに制限され(Web版は制限なし)、プラスは“月額240円または年額2000円”だったものが“月額360円または年額3100円”、プレミアムは“月額480円または年額4000円”だったものが“月額600円または年額5200円”に値上げとなった。

 無料で“ほぼ”フル機能を使えることがEvernoteの特長だったのに、なんということか! と思った人は多いかもしれないが、冷静に状況を考えれば無料でサービスを提供し続けられることのほうが不思議だったともいえる。

 無料でサービスを提供し、一部の人からは有料で金を集めるというのは、いわゆる「フリーミアム」モデルと呼ばれるものだ。このビジネスモデルについてはWIRED編集長のクリス・アンダーソン氏が「フリー」という書籍で解説しているが、端的に言えば、「多くの人に無料でサービスを提供し、より高い機能やプレミアムなものが欲しい一部の人にある程度の価格でサービスを提供することで、トータルで収益を上げる」というもの。

 なぜEvernoteは値上げせざるを得なかったのか? というと、比率と分母の予想をしくじったということだろう。比率というのは、無料ユーザーと有料ユーザーの比率のことだが、さらに問題なのは分母、つまりユーザー数の想定だ。

 先進国では既に飽和しているスマートフォン市場の伸びだが、後進国では加速度的に市場が伸びている。その爆発的に増えるスマホの多くにEvernoteがインストールされるとしたら、その数は実に膨大なものになりそうだ。しかも、有料で使用するユーザーの比率は先進国のそれとは大きく異なるだろう。Evernoteはあまりに世界的に使われるようになったことで、経営陣が想定した比率を超えてしまったのではないだろうか?

 また、Evernoteの有料コースはプレミアムとプラスの2つ用意されているが、当初はプレミアムだけであった。プレミアムとプラスではプレミアムのほうが料金が高い。このあたりからも、集金がうまくいっていないことが推測される。そして、今回はこの2つのプランの値上げも行われたわけだ。Evernote社はその名前通りにEvernoteが主力製品で、そこから利益を上げる必要がある。こういったことから、今後、Evernoteの価格が上がることはあっても、下がることはなさそうに思える。

●Evernoteを無料で使い続けることはできる?

 Evernoteは仕事でヘビーに使っている人がいる一方、無料で気軽に使っているユーザーも非常に多い。仕事で使っているユーザーであれば、これを機に有料プランへ移行するのも仕方がないと判断することも考えられるが、無料で利用しているライトユーザーであれば、「無理にEvernoteにこだわる必要はないのでは?」と考えても不思議はない。現在は、Microsoftの「OneNote」やGoogleの「Keep」など、Evernoteと同様にメモ的にデータを保存したり、検索できる無料のクラウドノートサービスが充実している。

 さて、そんな他のサービスやアプリを検討する前に、「Evernoteを使い続けることはできないか?」と考えてみよう。Evernoteがベーシックプランで提示する「1ユーザーで2台まで」という制限は、Evernoteアプリを使う場合のみに適用される。つまり、Webブラウザを使ってアクセスする場合は特に制限は設けられていない。Webブラウザからの利用ではデータを読み込むのにやや時間がかかるものの、全く使えないよりはマシというモノだ。

 ということで、試しにベーシックプランにデバイス2台を登録した上で、AndroidスマートフォンからEvernoteにWebブラウザでアクセスしてみると、Androidでは「ブラウザでEvernoteを使えないのでアプリを使ってね」というメッセージとともにアクセスを拒否されてしまった。そもそもAndroidではWebブラウザからは使えないようだ。デバイス2台制限は複数台のスマートフォンやタブレットを使いこなすユーザーにとってはかなりの不自由さをもたらすものになりそうだ。

●どのサービスを選ぶか?

 ではEvernoteを使い続けることを諦めて、無料で他のアプリを使おうとした場合、ユーザーにはどんな選択肢があり、どんなメリットがあるだろうか? すぐに思い付くのは、前述したようにMicrosoftのOneNoteとGoogleのKeepだ。

 KeepはGoogleサービスらしく完全無料で利用できる。短期的なメモに使うのであれば、非常に気軽に使えて便利だ。分類のためにラベルが使えるものの、階層的な管理が使えないので大量のデータ管理には限界があると思うが、それ以外ではクイックに使えてイイ。リマインダーも使うことができる。ちなみにPDFといったファイルの管理は扱えないのでEvernoteのようにデータを蓄積するといった用途には向かない。

 OneNoteはマイクロソフトの製品ながら無料で使えて、データはノートブックで階層的に管理できるなど、Evernoteに近い機能を搭載している。機能で有利な点は保存容量だ。無料プランのEvernoteが、月間60MBの容量しか転送(アップロード)できないのに対して、OneNoteは空き容量があればいくらでも保存できる。起動速度や操作レスポンスなどに関して、Evernoteのほうが良好に感じる場合もあるが、OneNoteも十分実用レベルのスピードは実現しているように感じる。

 凡庸(ぼんよう)な結論ではあるが、Evernoteを仕事で使い込んでいるユーザーにとっては新しく環境を学習する手間などを考えると、有料プランに加入してでもEvernoteを使い続けるという選択肢もアリだろう。仕事以外で使っているような人、あまりヘビーには使っていない人はOneNoteなどに移行を考えてもいいのではないだろうか。

最終更新:7月8日(金)17時58分

ITmedia PC USER