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習近平政権に打撃も、国際仲裁裁の判断12日に

ニュースソクラ 7月8日(金)12時1分配信

フィリピン提訴 南シナ海の中国の領有権判断

 7月12日、来週の火曜日には、南シナ海の中国による領有権主張を巡り、仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)が国連海洋法条約に基づいて判断を出す予定だ。

 その中身に世界が注目している。中国に不利な内容になるとの見方が多いためだ。

 中国政府は、いかなる判断も受け入れない姿勢を示し、南シナ海の一部海域で軍事演習を行うことを発表した。中国はなぜ、これほど神経質になるのか? 3つの観点から考えて見た。

 仲裁裁判所は、国際海洋法条約の解釈や適用範囲などに関する紛争が起きた場合に設置される国際司法機関の名前のことだ。ある国が申し出れば、たとえ相手国が出席や協力を拒否しても、審理が始まり、判断が出される。

 5人の仲裁人(裁判官に相当)が審理を進める。裁判長役の仲裁人はスリランカ出身、判事に当たる残り4人は、それぞれポーランド、ドイツ、オランダ、フランスの出身者だ。

 2013年にフィリピンが申し立てた時には、関心を呼ばなかったが、ここ数年、中国が南シナ海での権益を主張し、人工島や滑走路の造成を急ピッチで進めたため、仲裁委の判断に注目が集まった。強制力はない。

 最大の焦点は、中国が主張している「9段線」と呼ばれる海の境界線だ。中国側から舌のように垂れ下がって、周辺国の海岸線まで迫っており、紛争の原因となっていた。

 フィリピンはこの9段線について「国際的に違法」と訴えている。

 まず中国が恐れているのが、9段線の正当性を否定されることだ。中国は、これまで歴史的文書を土台に、領有権を主張してきた。「裁定は無効」(中国外務省報道官)であり、当事者間での解決を主張している。国際機関が違法と認めれば、中国に対して「国際法を無視している」との批判が高まることは避けられない。

 2つ目は、習近平国家指導部への打撃だ。国益の拡大や民族主義を訴えて支持を集めている中国の習近平主席への風当たりが強まる可能性がある。

 習氏は今月1日に行った演説で「いかなる外国もわれわれが核心的利益で取り引きに応じると期待すべきではない」と演説し、南シナ海問題妥協しない姿勢を示した。求心力を高めるため、国内外で、より強硬姿勢に出てくることも予想される。

 3つ目は米国からの直接の圧力が高まることだ。6月上旬に北京で行われた米中戦略・経済対話の席で、ケリー国務長官は、南シナ海での中国の行動について言及し、「挑発的な動きがあれば、必要な行動を取る」と警告した。

 米国は昨年10月と今年1月、中国が南シナ海の岩礁を埋め立てた人工島から12カイリ(約22キロ)内に、米海軍のイージス駆逐艦を派遣し、中国側を牽制している。裁定を受け、米国は作戦をさらに頻繁に実施する可能性が高く、米中間の緊張が高まるだろう。

 ただ、裁定が近づくにつれ、9段線の周辺国の姿勢は微妙に変化している。フィリピンの新大統領に就任したドゥテルテ氏は、「どの国にとっても穏便な決着となるべきだ。われわれは(中国を)あざけったり、(判断内容を)ひけらかしたりはしない」と述べ、遠回しに穏便な対応を求めた。

 いつもは中国に批判的なベトナム政府も、先月末にベトナムを訪問した中国の楊潔チ国務委員と会談した際に同国の高官が、「双方が受け入れ可能な解決策を見いだすべきだ」と発言したという。中国の経済的影響力に配慮したものだろう。

 一方、インドネシア国会は先月末、南シナ海の南端にある同国のナトゥナ諸島で、軍事基地を整備するための補正予算を承認した。周辺海域で横行する中国漁船を牽制する狙いで、中国との対決姿勢を打ち出している。

 仲裁人はいずれも国際裁判の経験の長いベテラン。どこまで踏み込んで判断を示すのか、まだはっきりしない。海洋問題の専門家の中には、「勝者がはっきりするような、明確な判断にはならないのではないか」との観測も出ている。

■五味洋治 ジャーナリスト
1958年7月26日生まれ。長野県茅野市出身。実家は、標高700メートルの場所にある。現在は埼玉県さいたま市在住。早大卒業後、新聞社から韓国と中国に派遣され、万年情報不足の北朝鮮情勢の取材にのめりこんだ。2012年には、北朝鮮の故金正日総書記の長男正男氏とのインタビューやメールをまとめて本にしたが、現在は連絡が途絶えている。最近は、中国、台湾、香港と関心を広げ、現地にたびたび足を運んでいる。

最終更新:7月8日(金)12時1分

ニュースソクラ