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参院選 与党も野党も「託せぬ」 “農村無党派” じわり拡大

日本農業新聞 7月8日(金)12時30分配信

 自民党支持者が多くを占めていた農村で、どこの党も支持しない“農村無党派”の存在が目立ってきた。10日の参院選の投開票日を前に、日本農業新聞が実施した農政モニター調査でも「支持政党がない」と答えた人は3割に上る。各党が打ち出す農業政策の位置付けが低いとして、現場の不満が募っているためだ。特に若手や高齢の農家で政治と距離を置く傾向にあり、「投票を呼び掛けても手応えがない」と嘆くJA幹部もいる。

・農家の不満、期待 耳傾ける候補なく政治と距離広がった

 7月上旬、山形県米沢市の上新田地区。同県は自民党の元JA全農山形副本部長の月野薫氏と、無所属で元農水政務官の舟山康江氏の与野党が激突する、注目度の高い選挙区だ。

 大物議員が連日県内に入り、熱く支持を訴える中、7ヘクタールで米を作る農家の須藤広行さん(49)が言った。「農家は政治にかなり冷めているよ」

 須藤さんは父親が自民党系の市議会議員で、自民党を応援してきた。だが今、須藤さんの脳裏に浮かぶのは、2012年の衆院選で自民党が環太平洋連携協定(TPP)について掲げた「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。」と書かれたポスターだ。

 それでも自民党はTPP交渉を推し進め、合意してしまった。須藤さんはそうした自民党の対応に煮え切らない思いを抱えている。

 ただ、野党第1党の民進党も、民主党政権の時に交渉参加を表明しただけに、支持できるかというと心中は複雑だ。「長年、自民党の農林議員は現場を歩いて現場の声に耳を傾けてくれた。でも今、農業のことが分かる政治家が与野党で何人いるんだ」。須藤さんは語気を強める。

 担い手7人でつくる同地区の農事組合法人「新田営農組合」も同様だ。米価下落、資材高騰と18年産からの米の生産調整見直しに、誰もが「このまま稲作を続けられるのか」と不安を口にする。かつてこの地区で自民党は農家から強い支持を受け、選挙というとわが事のように燃える農家が何人もいたという。だが、代表の手塚隆さん(60)は最近、「地域に政治への熱がなくなった」と感じている。

 ある大物議員が地域で講演するため同組合に動員要請があったが、誰も行かなかった。参加した人に聞くと、会場は空席が目立ったという。

 「例え一人の担い手を守れたとしても、小規模農家がいなくなり地域農業が廃れたら農村は維持できない。そんな当たり前の現場を分かっていない政治家が多い。農政に忠実に経営をしてきたが、特定政党を応援したからといって農村が良くなるのか」。手塚さんは問う。

 若手農家や兼業農家ほど政治と距離を置く。同組合の農家、土屋智紘さん(23)は「ぶっちゃけ、参院選で誰が当選しても、俺らの生活は良くならないって思いが強い」と明かす。誰が立候補しているのかも分からない兼業農家の友人も少なくないという。

 自民党を推薦する各農政連も対応に苦慮する。中国地方のJA幹部は、組合員に投票を呼び掛けると「JAをたたく与党をなぜ応援するのか」と逆に質問されるという。投票日まであと2日。終盤になっても盛り上がらない状況に、政治と農村の距離が広がってきていると感じている。(尾原浩子)

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 日本農業新聞のモニター調査の結果を見ても、安倍内閣が実施する農業政策に対する支持は(25.3%と)低い一方、自民党を支持すると答えた割合は(43.1%と)一番高い。一方、野党の支持率は(民進党で13.4%と)低い。

 野党は政権を批判はするものの、安倍農政に対する対案を出せてないため、批判票の受け皿になり切れていない。そうした側面が、政治から農家を冷めさせてしまう一因となっている。各党と候補者は、農政に対してもっと突っ込んだ議論をすべきだ。

日本農業新聞

最終更新:7月8日(金)12時30分

日本農業新聞