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欧米が見限った危険な高速増殖炉をなぜ続けるのか

ニュースソクラ 7月8日(金)12時10分配信

「もんじゅ」はすでに、1兆2000億円を浪費

 通常の原発以上に危険とされ、費用も食うため、欧米で「コスト増殖炉」と揶揄されてきた原発がある。日本で「もんじゅ」(福井県敦賀市)の名で知られる高速増殖炉のことだ。

 日本は、先行した欧米の失敗に学ぶ後発のメリットがあるはずだったが、「もんじゅ」は1995年以来、事故やトラブル、点検漏れが相次いだ。このため、国の原子力規制委員会は運営主体の原子力研究開発機構を「安全管理の資格なし」と認定し、代わりの主体の提示を文部科学省に求めた。ところが、政府文科省は参議院選を前に、代わりの運営主体の目処を立てず、結論の“先送り戦術”に出た。国費の無駄使いが続く。

 高速増殖炉は、使用済みの核燃料からプルトニウムを分離し、効率よく再利用することを目指す。開発の歴史は、米国の1940年代にさかのぼり、51年には実験炉「EBR-1」で発電に成功した。実は、発電ではこの高速増殖炉の方が、軽水炉(通常の原発)よりも早い。欧米は限られたウラン資源を考えれば、高速増殖炉こそ「原発の本命」と考えていた。

 例えば、フランスの1977年当時の原子力庁長官は「世界で2000年までに高速増殖炉は540基稼働するだろう」と予測した。しかし、今も高速増殖炉の実用化は見通しがまったく立っていない。

 各国とも研究と開発を怠ってきたわけではない。先頭ランナーの米国は、複数の実験炉を試したが、福島第1原発事故のような炉心溶融事故を起こすなど深刻な複数の事故を経験した。続いて発電性能などを確かめる「原型炉」段階の「CRBR」の建設に着手した。この炉は、長い配管を使う「ループ型」と呼ばれる高速増殖炉のタイプで、炉型も開発段階も後のもんじゅと同じだ。しかし、「コスト高なうえに、核拡散を招く」と米国は83年に建設途中で放棄した。

 ドイツも同じループ型の原型炉「カルカー・SNR300」をほぼ完成させた。しかし、運転前、冷却材のナトリウムが漏れる複数の火災が発生した。さらに、高速増殖炉の特性から、チェルノブイリ原発事故(86年)のように制御が効かなくなる核暴走事故の可能性も指摘された。結局、核燃料を使う前の91年に放棄された。幸い、放射性物質で汚染される前の廃炉だった。このため、カルカーの跡地は後に遊園地になった。原子炉建屋などを利用した「ワンダーランド」として再利用された。

 英国もループ型の原型炉「PFR」を運転させた。しかし、87年に蒸気発生器の破損からナトリウムと水が爆発的に反応し、伝熱管40本が破断する事故が起きた。94年に閉鎖された。

 フランスは、配管が比較的短い「タンク型」の開発に注力し、原型炉の次段階の実証炉「スーパーフェニックス」(電気出力124万キロワット)を建設した。しかし、ナトリウム漏れで長期停止した上、先行した原型炉で不安定な核分裂が起き、核暴走の危険が疑われてほとんど動かなくなり、98年に廃止になった。

 欧米がそろって撤退を決めているのは、増殖炉があまりに危険であることが大きな要因だ。冷却材にはナトリウムを使う。これは空気に触れると燃焼し、水とは爆発的に反応する。これが何度と なく深刻な事故の原因となった。

 さらに恐ろしいのは、高速増殖炉の原子炉は、異常(気泡の通過や燃料のたわみ)が起きると、核分裂が加速してしまうことだ。車に例えれば、ブレーキが効きにくく、アクセルが一方的に踏まれた状態だ。核分裂の暴走(核暴走)が起こる危険が指摘されている。

 通常の軽水炉の原発では一般的に、冷却材の沸騰や燃料の変形トラブルが起きれば、核分裂自体は収まる方向になる。この違いが増殖炉の特異な点だ。こうした 危険性を防ぐために、数多くの検知・警報設備や安全対策を施す必要があり、コストが過大となる。

 もんじゅはほとんど成果のないまま、既に約1兆2000億円を浪費した。欧米は長年の失敗で、ほぼ撤退を選んだ。G7諸国で日本だけがガラパゴスになりかけている。見切りをつけるのは今をおいてないはずだが、不思議なことに参院選の争点にも上がってはいない。

山形次郎 (ジャーナリスト)

最終更新:7月8日(金)12時10分

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