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[ニュース分析]対北朝鮮強硬策で外交解決の道閉ざすオバマ大統領

ハンギョレ新聞 7月8日(金)14時44分配信

金正恩委員長を対北朝鮮制裁リストに

オバマ大統領任期内の「朝米関係の改善」絶望的
実務者10人から金委員長まで制裁対象に
ムスダン発射による米議会など強硬世論を反映
北朝鮮は制裁に対応せざるを得ず
韓米合同軍事演習など緊張高まる要因に

 米国政府が6日(現地時間)、金正恩(キムジョンウン)労働党委員長兼国務委員長を初めて制裁対象に指定した。前例のない極めて強力な措置だ。最高指導者の問題に敏感な北朝鮮体制の特性からして、北朝鮮の強い反発と、これに伴う(朝鮮半島)情勢の不安定をもたらし兼ねないにもかかわらず、これを強行したからだ。バラク・オバマ大統領の任期中に、米朝関係が取り返しのつかない道に進んでしまったことで、次期政権にも少なからぬ負担を与えるものと予想される。

 米国務省は今年2月に議会を通過した対北朝鮮制裁強化法に基づき、「北朝鮮人権侵害や検閲報告書」を同日、議会に提出しており、財務省はこれを根拠に金正恩委員長をはじめ個人15人と機関8カ所を制裁リストとして発表した。アダム・ジュビン米財務省テロ・金融情報担当次官代行は同日、金正恩委員長を制裁対象に指定した理由について、「金正恩(委員長)のもとで、数百万の北朝鮮住民たちが超法規的処刑や強制労働、拷問など、耐えられない残酷さと苦難を強いられている」と明らかにした。 金委員長の他に、リ・ヨンム元国防委副委員長やオ・グクリョル元国防委副委員長、ファン・ビョンソ国務委員会副委員長といった高位級はもちろん、カン・ソンナム国家安全保衛部3局長、チェ・チャンボン人民調査部調査局長、リ・ソンチョル人民保安部参事など中間官吏および実務者も多く含まれた。これと関連し、ジョン・カービー国務省報道官は同日に発表した声明で「強制収容所管理者と警備、尋問者たち、脱北者逮捕チームなど、北朝鮮で人権蹂躙に責任があるすべての政府高官に、このような行動を変えるように求めるメッセージを送ることに目的がある」と述べた。 これは、北朝鮮が崩壊した場合、国際法を基準に従って責任者たちを処罰できるという警告を送ったということだ。

 今回の制裁発表は異例の強力な対応だ。一般的に第3国の最高指導者を狙った制裁は、どんなに象徴的レベルであっても、外交的解決策に向けた希望がほとんどないと判断した場合に行われる。シリアのバッシャール・アル・アサド大統領、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領、リビアの前最高指導者ムアマル・カダフィ大佐、ジンバブエのロバート・ムガベ大統領などに対する米国の制裁が代表例だ。今回の措置で米国は北朝鮮との関係改善のための道を断ち切ってしまったものと見られる。

 今回の措置は基本的に今年2月に議会を通過した対北朝鮮制裁強化法に則って行われた。しかし、実際に行政効力を発揮する制裁リストは財務省が告示することになっているため、オバマ政権が制裁リストの発表を無期限延期することもできた。同日、国務省の報告書と財務省の制裁対象リストが同時に発表されたのは、今後の情勢を考慮することなく、北朝鮮に対する圧迫を強化するという基調を示すものである。

 米政府のこのような強硬基調には、二つの要素が考慮されたという。まず、先月末に発射された北朝鮮のムスダンミサイルの発射が技術的に向上を示したことで、米政府内で懸念の声が高まった。ムスダンミサイルが在日米軍基地とグアムを射程に収めるからだ。また、ケリー国務長官が議会との関係を考慮し、金委員長を制裁対象に指定することを強く注文したという。北朝鮮に対する強硬な議会の雰囲気に合わせるためには、「金正恩(委員長)を含む」ことは避けられないという政務的な判断を下したのだ。

 米国の今回の処置は実質的な制裁効果を狙っているわけではない。制裁対象に含まれると、米国への入国禁止とともに、米国内の資金凍結および取引中止などの処置が実施されるが、金委員長をはじめとする制裁リストに載った人たちに実質的な苦痛を伴うことはなさそうだ。また、米政府当局者も電話会見を通じて、今回の制裁で北朝鮮が人権を改善する可能性が高くないという点を認めている。ただ、大統領選挙を控えている米国の国内政治的理由と、国際社会に米国の意志を見せる一方、金委員長個人に対する評判を下げるための戦略と言える。

 しかし、米国が今回の措置によって失うものは、外交的に得られるものよりも大きい。何よりも人権と政治的事案を分離するという米国の長い外交的伝統が崩れた。北朝鮮を圧迫するため、オバマ政権が「人権」を道具に使うという事実を公開的に認めたことに他ならない。米政府の高官も同日、記者との電話インタビューで「今日の措置は(核問題とは)異なる別の努力」としながらも、「長期的には(人権と核問題)の二つ努力は効果を互いに強化していくものと見られる」と話した。

 次期政権が発足しても、今回の処置の影響で、朝米関係を回復させるのにかなりの困難を強いられるものと予想される。北朝鮮は関係改善のためには敵視政策の撤回の一つとして、今回の処置を取り上げることはほぼ確実だ。ところが、制裁をするのは簡単でも、制裁を解除するのは、米議会などの北朝鮮に対して否定的な世論を考えるとかなり難しい作業になるだろう。

 短期的に朝鮮半島および北東アジア情勢の緊張が高まる可能性がある。2014年、北朝鮮の人権状況を国際刑事裁判所(ICC)に付託するよう勧告する内容の北朝鮮人権決議案が国連総会などで議決される過程で、北朝鮮は「9・19共同声明の無効化宣言」や核実験まで取り上げ、かなり攻勢的に対応した。北朝鮮は今回もいかなる形であれ、対抗せざるを得なくなるだろう。

 しかも、来月には韓米合同軍事演習が予定されており、高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備を公式発表する可能性もある。ただでさえ冷え込んでいる朝米関係がさらに冷え込むのはもちろん、中国とロシアによるTHAAD配備への反発まで重なれば、北東アジア情勢は再び混乱の渦に巻き込まれるおそれがある。

ワシントン/イ・ヨンイン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:7月8日(金)21時39分

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