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特殊詐欺抑止の切り札 暴力団組長の「使用者責任」とは?

THE PAGE 7/9(土) 14:00配信

 増加の一途をたどる振り込め詐欺などの「特殊詐欺被害」。その抑止につながる民事訴訟を先月末、被害者7人が東京地裁に起こした。指定暴力団住吉会系組員らによって現金をだまし取られたとして、暴力団対策法の「使用者責任」に基づき住吉会トップの西口茂男総裁(87)らに損害賠償として総額約2億2千万円を請求したのだ。特殊詐欺事件をめぐり、上部団体トップの使用者責任を問う訴訟は全国初。暴力団への民事的な対抗措置として有効とされる使用者責任について、暴力団対策に精通する中村和洋弁護士(大阪)に聞いた。

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今回の事件で「受け子」は暴力団とは名乗らず

「特殊詐欺事件で使用者責任を追及する訴訟が過去になかった背景として、現金の『受け子』や電話の『掛け子』の背後に暴力団員が存在するという事実の立証が難しかったからではないか」

 使用者責任とは、暴力団組員らが行なった犯罪でも、その損害賠償を使用者である組長が負うというもの。中村弁護士は続けて「詐欺グループの末端の『受け子』や『掛け子』はフリーターなどが多く、被害者に対して暴力団とは名乗りません」と指摘した上で、「組員が関与していると突き止めれば、暴力団組織としての資金獲得目的ということですから組織のトップの使用者責任は十分問えるはず」と話した。

 今回の訴訟や事件をおさらいすると、提訴した被害者の女性7人は2014年、詐欺グループから「債権購入の権利が当たった」などと実態のない医療会社の社債購入などを持ち掛けられ、計約2億円を詐取された。被告は西口総裁ら幹部に加え、詐欺罪ですでに有罪が確定した組員ら計7人。

「暴力団の威力を利用」など立証で賠償請求可能に

 中村弁護士によると、2008年に改正された暴対法によって、「上部団体トップらに対する使用者責任の追及は容易になった」という。法改正のもとになったのは2004年の最高裁判決で「下部組織の構成員の対立抗争での殺傷行為は、暴力団組織の威力を利用した資金獲得活動に密接に関連する行為であり、上部組織トップが使用者責任を負う」という画期的な内容だった。

 この判決を踏まえた改正暴対法は(1)指定暴力団員によって不法行為が行われたものであること(2)不法行為が威力を利用した資金獲得行為を行う目的であったこと(3)損害が不法行為により生じたものであること――を立証すれば、使用者責任での損害賠償請求が認められるとした。

 ちなみに改正暴対法の使用者責任を活用した第一号は、京都府内の暴力団員によるハンバーガー店からのチーズバーガー持ち去り事件だ。この組員は08年夏、刺青を見せたうえでチーズバーガーを脅し取っており、同店は改正条項に基づき京都府警を通じて組員が所属する上部団体本部に代金を全額請求した。その後も暴力団員による一般人の殺人や傷害はもちろん、恐喝などの「しのぎ」をめぐって上部団体トップや組長の使用者責任が問われる事例は相次いでいる。

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最終更新:7/9(土) 14:00

THE PAGE

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北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。