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昭和シェルと出光、流通改革だけじゃない未来への合併メリットとは

ニュースイッチ 7月9日(土)11時45分配信

再生可能エネルギーそろい踏み。石油元売り大再編、M&Aの裏を読み解く

 「創業家の乱」で終わらせていけない石油元売り大再編。先日、ニュースイッチでエネルギー業界の分析力で定評のある東京理科大学大学院・橘川武郎教授のインタビューを掲載した。その中では、出光興産と昭和シェル石油の合併メリットなどについて示唆に富む指摘がある。再編集してお届けする。

 ―昭和シェル石油と出光興産の経営統合はどう分析しますか。
 まず意外な方から言うと、両社とも石油会社ですが、実は出光は大分県の滝上(たきがみ)で九州電力と地熱発電所をやっているし、新しく北海道でも実施しようとしているなど、地熱発電に熱心な会社です。それから青森県の六ヶ所村に蓄電池付きの最新鋭の大規模風力発電所を持っています。

 以前に石原元都知事が熱心だったので、東京都では大きなビルに二酸化炭素の排出量の規制が掛かっているんですが、例えば、新丸ビルの電気は出光の風力発電所の電気を使っています。それと王子製紙の北海道の水力発電を使い、丸の内一帯のビルの電気を賄っています。つまり出光は地熱と風力に強い会社なんです。

 ―丸の内の高層ビル群は、出光の風力と王子製紙の水力というグリーン電力で賄われていたんですね。
 そうです。一方の昭和シェルは、子会社に有名なソーラーフロンティアという会社を持っていまして、これは太陽光パネルの国内最大手なんですね。それから日本で一番大きなバイオ発電所は、昭和シェルの100%子会社が川崎で稼働しているわけです。

 つまりこっちは太陽光とバイオに強いわけです。そうすると、「太陽光・バイオ・風力・地熱」と再生可能エネルギーそろい踏みになるわけです。

 ―環境保全の意識が高い企業や個人に需要がありそうですね。
 固定価格買い取り制度(FIT)を使うと、電気を売る時に「完全再生可能エネルギーです」とは言いにくいわけですが、FITなしで販売すればそれを正面から言うことができて、たとえ少々価格が上がっても電気が売れる。

 二酸化炭素も排出しないし、使用済み核燃料も出ない。そういう状況を生み出すのに一番近い位置にたどり着くのが、出光と昭和シェルの合併によって生まれる会社だと思います。これもM&Aが一種「奇跡」を起こしていると言えます。

<サウジアラムコとつながるメリット>

 ―他にも昭和シェル石油と出光興産の経営統合にメリットはありますか?
 出光は外国資本の入っていない企業です。昭和シェルはロイヤル・ダッチ・シェルの傘下にありますが、昭和シェルの二番目の株主は世界最大の石油会社であるサウジアラムコです。

 このうちのロイヤル・ダッチ・シェルの株式が出光に移転するわけですが、出光はサウジアラムコとこれまで疎遠であったため、80年代のサウジアラムコの原油だけが安かった時代に、それが買えなくてつぶれかかった歴史があります。その出光とサウジアラムコがなんと、今度の経営統合でつながるんです。

 ―サウジアラムコは、産油国サウジアラビアの国営石油会社ですね。
 そうです。サウジアラムコとつながるということは、原油価格のインサイダー情報に近いものが手に入るようになるということです。例えばいつ減産を始めるとか、始めないとか、そういう情報も入手できるようになり、アジアのトレーディングで有利になります。

 もともと昭和シェルは、ロイヤル・ダッチ・シェルとの契約で日本でしか営業してはいけないのに、妙にアジアのトレーディングだけ強かったのですが(笑)、それはサウジアラムコとの関係があったからだと推測できます。それが国内に強い出光の力と合体してアジア全域で展開できるようになります。今出光は、優秀なトレーディング部隊をシンガポールに送り込んでいます。

 それに出光は、ベトナムに製油所をつくっていますので、昭和シェル・出光グループは日本の石油会社からアジアの石油会社に変身していくでしょう。産油国のサウジアラムコとつながり、トレーディングにも力を入れていく。そういう大きな変換のステップとしてM&Aが使われるわけです」

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最終更新:7月9日(土)11時49分

ニュースイッチ