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消えゆく「お焚きあげ」 三浦富士の山頂祭、2年連続中止

カナロコ by 神奈川新聞 7月9日(土)19時3分配信

 横須賀市の津久井、長沢にまたがる三浦富士(183メートル)で毎年7月8日に行われていた山頂祭が、2年続けて中止された。参拝客の減少で神社の氏子組織が祭りを維持できなくなり、江戸時代から続いた伝統行事「お焚(た)きあげ」の歴史も途絶えた。民俗学の専門家は「踊りや歌を覚える郷土芸能とは違い、精神的な部分の大きな年中行事。受け継ぐのが難しかったのでは」とみている。

 三浦富士を富士山に見立てた山岳信仰の一つで、お焚きあげは山頂祭の大きな見どころ。先達(せんだつ)と呼ばれる行者の指導者が白装束を身に着け、富士山の浅間神社の分霊が祭られた祠(ほこら)の前で護摩祈とうする。

 かつては登山口に露店が並び、山頂に大漁旗がはためいていたという。魚群探知機のない時代には、三浦富士を海上からの道標にした漁師らの信仰を集めた。「山頂から長い列ができて、おはらいをしてもらうのに半日がかりだった」。氏子組織の一つ、長沢氏子総代長の山田勇夫さん(67)は振り返る。

 だが近年、氏子自体の衰退や信仰者の高齢化が影響してか、参拝客は激減。山頂にテントや飲み物を運び入れるコストをお札の販売で賄えなくなった。先達の体調不安も重なり、津久井の氏子組織と相談して昨年に続き中止を決めた。山田さんは「これも時代の流れ。参拝客がいなければ張り合いがない」と話す。

 市自然・人文博物館の瀬川渉学芸員(民俗学)は、「1次産業をなりわいとする人が多い地域ほど、民間信仰や年中行事が生活に密着してきた」とし、2月の初午(はつうま)に行う稲荷講も地域から次々と姿を消す現状を「昔ほど地域に根差して暮らしていないという社会の変化の表れ」と受け止める。

最終更新:7月9日(土)19時3分

カナロコ by 神奈川新聞