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[社説]パンドラの箱開けた韓国のTHAAD配備

ハンギョレ新聞 7月9日(土)19時27分配信

 韓米両国が8日、最新鋭の地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル」(THAAD<サード>)を朝鮮半島に配備する決定をした。前日、米政府が北朝鮮の人権弾圧を問題視し、金正恩(キムジョンウン)労働党委員長を制裁対象に指定したことに続く強攻策だ。金正恩委員長を制裁対象に指定したのが北朝鮮だけを対象にしたものであるなら、THAAD配備は中国とロシアまで含めた北東アジア地域の政治、軍事、安保をめぐる対立をもたらし兼ねないより包括的な処置だ。今後の朝鮮半島では当分の間、対話と交渉は後回しとなり、対決と緊張が高じる危険な状況が続くものと見られる。THAAD配備決定で北東アジア危機の「パンドラの箱」を開けてしまったといえる。

■予想より激しい中国とロシアの反発

 韓米両国は同日、国防部で記者会見を開き、「在韓米軍にTHAADを配備することを韓米同盟のレベルで決定した」と発表した。 両国は発表文を通じて「両国は北朝鮮の核と大量破壊兵器、弾道ミサイルの脅威から大韓民国と韓国国民の安全を保障し、韓米同盟の軍事力を保護するための防衛的な措置として(THAAD配備を)決定することになった」と背景を説明した。THAAD配備に反対する中国とロシアを特に意識し、「THAADが朝鮮半島に配備されれば、いかなる第3国に向けられることなく、北朝鮮の核とミサイル脅威に対してのみ運用される」と強調した。韓国政府も前日、中国とロシアに同様の趣旨の事前説明をしたという。

 しかし、この説明が中国とロシアにそのまま受け入れられるはずがない。中国とロシアはこれまで首脳レベルで数回にわたり、THAADの朝鮮半島配備が米中・米ロ間の戦略的バランスを崩すとして、公開の場で反対してきた。中国外交部は韓米両国の決定に直ちに外交部声明を発表し、「強烈な不満と断固とした反対」という極めて強硬な立場を示した。また、キム・ジャンス駐中大使を呼び出し、強い抗議の意を伝えた。

 中国とロシアの反発は二つの面で、韓国に大きな負担になりかねない。第一に外交・安保的なもので、北朝鮮の核問題解決がさらに難しくなり、朝鮮半島周辺で「韓米対朝中ロ」の新冷戦構図が一層強化されるという事実だ。これまで韓国政府は、最大の安保脅威である北朝鮮の核問題解決のために、中国の協力を得るのに多大な努力を傾けてきた。日米などの反対にもかかわらず、朴槿恵(パククネ)大統領が昨年、中国の戦勝節記念式典に出席するなど、北京を通じて平壌(ピョンヤン)を懐柔するため尽力してきた。しかし今回の決定で、これまでの全ての努力が水泡に帰したと言える。さらに、今回の決定は韓国が日米主導の中国包囲網、ミサイル防衛網に一層深く足を踏み入れることになったことを意味する。韓国が中国とロシアの軍事状況を監視し、牽制する前哨基地となることで、韓米日対朝中ロの対立の中心に立たされることになった。北朝鮮の脅威を牽制するため配備したTHAADが、朝鮮半島の安保をより不安にさせる矛盾を抱えることになったのだ。

 第二に、中国とロシアの反発は、韓国経済にも深い暗雲をもたらす可能性がある。中国の強い反発は貿易と観光など経済分野にどんな形であれ、悪影響を及ぼすものと見られる。韓国経済が中国に大きく依存していることを考えると、憂慮せざるを得ない事態だ。すでに市場では中国と関連した株が急落するなど、敏感な反応が表れている。

 他の要因を除き軍事的な面だけを見ると、THAAD配備が北朝鮮のミサイルの脅威を抑止するのに役立つ面があるのも事実だ。しかし、こうした論理は木を見て森を見ないようなものだ。THAADは、米国で実戦配備されたのがグアム1カ所しかないことから分かるように、まだ性能が十分に検証されておらず、価格も1式当たり1.5兆~2兆ウォン(約1300~1730億円)と巨額の費用がかかる兵器だ。専門家らは朝鮮半島の長さを考えると、THAADで北朝鮮のミサイルを迎撃するのは難しいと指摘している。

■朴槿恵大統領の全面的な責任

 朴槿恵政権は2014年6月、カーティス・スカパロッティ前在韓米軍司令官が初めてTHAAD配備を公論化させた後、年初に北朝鮮が4回目の核実験を行うまで、「要請も、協議も、決定もない」は3否政策を貫いてきたが、1月13日、大統領の年頭記者会見でいきなり配備する方針を示した。それまで米国と協議を続ける一方で3否を口にしてきたのなら、国民と周辺国を騙していたことになり、北朝鮮の4回目の核実験を受けて急に政策を変えたのなら、浅はかで感情的な反応だ。いずれにせよ、責任ある政府の姿勢とは言えない。

 政府の決定に伴い、国内ではどの地域に配備されるか注目が集まっている。軍当局は遅くとも数週間以内に敷地の選定結果を発表し、来年末をめどに作戦配備して運用を始める計画だと明らかにした。配備候補地に名前があがっている慶尚北道漆谷(チルゴク)郡などの地域では、早くも住民と自治体長らによる激しい反発と抗議が始まっている。

 最終的には朴槿恵大統領が配備を決定した当事者であるだけに、国内外への影響も全面的な責任を負わねばならない。

(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:7月9日(土)19時27分

ハンギョレ新聞

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。