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原油価格は「45~50ドルでレンジ形成」後に40ドル前後まで水準訂正か

ZUU online 7月10日(日)17時10分配信

年初に一時1バレル=26ドル台まで下落していた原油価格(WTI、期近)も6月には50ドル台を回復しており、年前半は急落からの持ち直しとなった。相場の流れはほぼ昨年と類似しており、今年も年後半は軟調な展開が見込まれる。ただし、生産者は昨年の経験から学んでおり、今年はより落ち着いた値動きとなりそうだ。年後半のメインシナリオは45~50ドルでレンジ相場を形成した後、40ドル前後を目処に水準訂正が予想される。今回は、その背景を説明する。

■リグ稼動数の増加で相場は頭打ち、昨年と同じ展開

2016年前半の原油相場とリグ(石油採掘施設)稼動数の動きは昨年の展開と極めて似ている。

昨年を振り返ると、原油価格は3月に43ドル台まで下落した後に切り返し、5月には60ドル台を回復した。60ドルは当時のシェールオイルの採算ラインだったことから、この水準で上昇は頭打ちとなったものの、リグ数の減少が続いていたことで6月に入っても60ドル前後を維持していた。しかし、7月に入りリグ数の増加が確認されると相場は軟調に転じ、さらに9月以降は生産量も緩やかな増加に転じたことでその後の原油安に拍車をかけた。

現在、シェールオイルの採算ラインは40~45ドルと推定されている。相場が50ドル近辺まで上昇した6月に入り、それまで減少していたリグ数が増加に転じるとおおむね歩調をあわせて上昇も頭打ちとなった。今後、生産量の増加が確認されれば、原油価格は一段安となる公算が大きいだろう。

■サウジと米シェール企業は昨年の経験から学んでいる

ただ、サウジアラビアと米シェーオイル企業のシェア競いの結果、原油価格が当事者の予想を超えて30ドル以下まで急落してしまったことへの反省から、昨年と同じ轍を踏むとは考えづらい。

まず、シェール企業の対応をみると、原油価格の急落で多くの企業が破綻に追い込まれた経験から、これまで以上に収益に敏感になり、増産にも慎重な姿勢をみせている。

リグ稼動数は6月初旬から増加に転じたものの、米国内での原油生産高はわずかながらも減少が続いており、まだ増産には至っていない。昨年のように採算を度返ししてでも生産を維持するといった方針は捨てて、収益が確保できる水準、すなわち50ドル近辺で原油価格が安定するまでは、増産が見送られる可能性もありそうだ。

また、シェアの維持を優先して減産を拒んできたサウジアラビアも再びかつてのように需給の調整役を果たすことに前向きになっている。サウジアラビアのファリハ・エネルギー相は6月、原油価格の回復を受けて、サウジアラビアが原油需給の調整役に復帰する可能性があるとの考えを示した。

こうした状況を踏まえると、50ドルからさらに上昇することは難しいと考えられる一方で、年初来の安値を探るような展開も考えづらく、40ドル前後が下値の目安となりそうだ。

■供給サイドのカギを握るリビアとナイジェリア

OPECの6月の月報によると、5月の生産量が維持された場合、1~3月期に259万バレルあった供給過剰が、今年後半には解消される見通しとなっている。

ポイントとなるのがリビアとナイジェリアでの供給障害だ。供給障害が解消された場合には自動的に増産となることから、需給の均衡は少なくとも来年以降にずれ込むことになり、原油価格にとっては弱材料となる。

統計を確認すると、5月のリビアの生産量は日量30万バレル、ナイジェリアが142万バレルとなっている。リビアの生産能力は短期的には100万バレル、中長期的には150万バレルまで回復が可能とされており、ナイジェリアでの供給障害は50万バレル程度と推計されている。したがって、供給障害が解消した場合には、年後半の供給は100万~150万バレル程度増加する計算となる。

両国での供給障害は政治的な混乱を背景としており、将来を予想するのは難しい。だが、リビアでは国連が支援する暫定政府のもとで徐々に国家としての機能を取り戻しつつある。ナイジェリアでは既に供給障害の一部復旧が伝えられており、生産の減少にも歯止めがかかっている。

こうした状況を加味すると、年後半に需給が均衡するとは期待しづらい。状況が改善するにしたがって、再び供給過剰が問題視されることになりそうだ。

■需要サイドでは中国に注目

需要面での最大の関心は中国となる。中国は原油価格の急落を好機と捉えて石油の備蓄ペースを速めており、その影響で原油の輸入量も急拡大している。

しかし、JPモルガンが6月29日に公表したリポートでは、備蓄能力の限界が近づいており、備蓄の積み増しはほぼ終了した可能性が指摘されている。備蓄向けの購入が終了した場合には、原油輸入量は約15%減少する見通しだ。5月の原油輸入量が日量770万バレルだったことを踏まえると、15%の減少は116万バレルに相当する。これが現実となった場合、かなり大きなインパクトが予想されよう。

さらに、景気に対する不安も高まっている。IMFのリプトン副専務理事は6月11日、膨張する中国企業の債務について、中国政府に早急な対応を求めた。IMFの推計によると、中国の債務総額は対GDP比で225%、企業債務は145%に達している。中国企業が過剰債務を解消しなければ、経済成長がさらに鈍化し金融危機を招く恐れがあるとしている。

今年後半には中国企業のデフォルトが増加し、金融機関の不良債権が膨らむとの見方も出ており、ここ最近では人民元の下落に歯止めがかからなくなりつつある。人民元安は中国経済そのものにはプラスとなる可能性があるとはいえ、昨年8月の人民元切下げが世界的な株価の急落を招いたことはまだ記憶に新しい。

中国ではスピードこそ鈍化しているものの、外貨準備高も減少傾向が続いており、人民元安と外貨準備の減少が中国からの資本流出懸念を再燃させる可能性がある。今年も昨年同様、中国発の世界同時株安のリスクを抱えており、中国経済が揺らぐことになれば、原油価格も失速を免れないだろう。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)

最終更新:7月10日(日)17時10分

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