ここから本文です

アグネス氏、「 日本でも10人に1人が低出生体重児」

ニュースソクラ 7/10(日) 12:00配信

【Agnesのなぜいま(4)】グアテマラで発育障害に出会う

 ユニセフの視察で先月、グアテマラ共和国を訪ねました。
 先住民が居住する地区で出会った29歳のシングルマザーは、身長135cm。
 これは日本の9歳児の平均身長と同じで、慢性栄養不良による「発育阻害」が原因と言われています。
 彼女の4歳と1歳半の子どもも発育阻害と診断され、病院で治療を受け、栄養食を与えられていました。

 「グアテマラの先住民は極端に小さいが、アメリカに移民したグアテマラ人の子どもは普通の身長なんです」
 ユニセフのグアテマラ事務所の副代表は、単に遺伝と思われがちの身長の低さが、実は貧富の差と、歴史的な社会の不公平に起因していると話してくれました。

 日本の中ではあまり知られていませんが、世界では現在5歳未満の子どもたちの4人に1人が発育阻害と言われています。乳児期の栄養不良により体が小さくなるだけでなく、抵抗力が下がって病気になりがちになり、脳も十分に発達することができず、知能面での問題も懸念されています。

 急性栄養失調のように、骨と皮しかないような身体状況ではないので、その現状は目に見えにくく、「静かな危機」と言われているのが発育阻害なのです。
 ユニセフは、こうした状況を改善するために、妊娠してから子どもが2歳になるまでの間を「赤ちゃんの最初の1000日」として、十分な栄養を与えるようにと、世界中でキャンペーンを行なっています。

 しかし、この問題は発展途上国や貧困の国だけのことではありません。
 実は調査対象となった先進41カ国の中で、日本は「低出生体重児率」が最も高く、9.6%。つまり100人の子どもが生まれると、9.6人は2500g未満で生まれてくるのです。(早産、未熟児を除いた数字。2013年厚生労働省)

 なぜ豊かな日本で「低出生体重児」が多いのか?
 それには日本独特の原因があると言われています。
 一つは低体重の日本女性が多い事です。綺麗イコール細い、という観念が根強く、外見を気にする女性は、万年ダイエットをしていると言われています。

 日本では「小さく産んで、大きく育てる」という言葉もあるので、女性は小さく産むことは良いことだと信じて、妊娠してからも少食を続け、結果的に胎児に栄養が行き渡らないことになるのです。
 喫煙や飲酒をする女性が増えていることも要因の一つとされています。

 そして、見えにくいことですが、所得の格差により満足に食べられない層が増えているのも、現実です。こうした傾向は、近年、さらに増加しています。
 ユニセフをはじめ、世界の医学界は、2500g以上で出産することをすすめています。
 それ以下の低出生体重児は、情緒が不安定になりがちで、抵抗力も低いため、育てにくく学習能力にも問題が出ることがあるので注意が必要です。

 では、何をすればいいのか?
 まずは妊娠したら、女性は体重が増えることを心配し過ぎずに、高タンパクでビタミンや、ミネラルが豊富な、バランスの良い食事をきちんととることです。
 そして、タバコもお酒も基本的にはやめて、質の良い睡眠をとるように心がけ、赤ちゃんの体を作るための準備をしなければなりません。
 経済的な原因で満足に食べられない妊婦には、補助食を配るシステムを構築することも必要です。

 もしかしたら、日本社会の美意識が変わらない限り、女性は体重が増えることを気にして、食べたいものも食べない日々が続くのかも知れません。
 しかし、10人に一人の子どもが低体重で生まれてくる現実は、まさに静かな危機と言っても良いでしょう。
 国も社会も、こうした現実に目を向けて、具体的な対策を講じる時期だと思います。

■Agnes M Chan(教育学博士)
1955年香港生まれ。本名金子陳美齢。72年日本で歌手デビューしトップアイドルに。上智大学を経て、トロント大学(社会児童心理学)を卒業。94年米スタンフォード大学教育学博士号取得。98年日本ユニセフ協会大使。2016年ユニセフ・アジア親善大使も兼務。

最終更新:7/10(日) 12:00

ニュースソクラ

北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。