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松本カルビー会長、「今のカルビーを作った、馬鈴薯の調達システム」

ニュースソクラ 7月10日(日)18時0分配信

「わが経営」を語る 松本晃カルビー会長兼CEO(2)

――カルビーはこれから、さらに革新的で高収益の企業を目指していくのでしょうか。(聞き手は森一夫)

 大きなビジョンとしては、スナック菓子の分野において世界でストロング・ナンバーツーになれればいいなと思っています。世界一は、私が生きている間は無理です。フリトレー、すなわち米国のペプシコのスナック菓子部門があまりにも大きいからです。

 60年前にトヨタ自動車はGM(ゼネラル・モーターズ)を抜くぞとは言いませんでした。今は抜きましたが、それだけ時間がかかるのです。カルビーが今、フリトレーを追い抜くなんて言うのはおこがましい。

 カルビーは2016年3月期で売上高が2461億円で、今は2番手集団の中にいます。年間売上高が1兆円になれば、団子レースから抜け出して間違いなくストロング・ナンバーツーです。現在、1位のフリトレーははるか先を独走していて、背中が見えません。

 トップのフリトレーは時々、後ろを振り返って「あいつはやばそうだ」と思うと、第2集団のそいつをぱくっと食う。ペプシコにとって10年先、20年先に、どこが怖いかというとカルビーです。だから彼らはカルビーに食指を動かして、今、うちの20%の株を持っています。向こうが狼なのか羊なのかはわからない。ある日、ぱくっと食うかもしれません。

――ストロング・ナンバーツーの売上高営業利益率は20%ですか。

 売上高1兆円、営業利益2000億円というのが1つの理想ですね。売上高は国内と海外で半々。それがカルビーの8年後ないし10年後でしょうね。国内はスナック菓子の柱がまあまあしっかりしている。

 2本目の柱は、シリアル食品の「フルグラ」を中心とした朝食関係が育ちつつある。新たに必要なのは3本目の柱で、それが何かはまだわかりません。今、あれこれ楽しみながら考えています。

――売上高1兆円に向けてM&A(合併・買収)はいかがですか。

 あり得ますが、カルビーは慣れていない。他人のものを買うのは面白いので、M&Aをやるぞと旗を立てると、うれしがってやりたがるのが大勢出てきます。だから旗を振るつもりはありません。

 日本企業の多くは、面白がっていっぱい買ったはいいが、ほとんどが失敗しているでしょう。うまくやっているように見えても、のれん代を償却したら、利益が残らないというのが多い。買収後の経営の仕方を知らずに手を出すからです。私はM&Aそのものを否定しませんが、もしあったらおまけです。

――いずれにしても人材の確保が鍵になりますね。

 そう、人ですね。Our business is people businessです。これからはわかりませんが、今までは私のやり方として、外の人間をいっぱい入れるということはしない。私は外から来ましたよ。もちろん何人かは外から採りましたけど、できるだけ中の人でやる。それでどうしてもという場合は、仕方がない。

――採用は新卒中心になるのですか。

 私の経験では新卒と中途は1対1がいい。新卒ばかりだと、いわば幼稚園になる。中途だけに頼ると、会社が薄汚くなる。

 というのは企業文化に問題が出てくるからです。カルビーには創業者がつくり、息子さんたちが育ててきた文化があります。その文化、色は、変えない方がいいと私は思っています。もし、いろいろな人が入ってきて、そちらが多数になると、文化が乱れて、会社のカラーが汚くなる。

 短期的には、外部から経験者をたくさん集めた方がいいかもしれない。しかしかつての長島ジャイアンツみたいになってしまいます。戦力の補強を急ぐあまり、外人選手を呼びトレードで他チームから有力選手を集めた結果、どうなったでしょうか。

――会長兼CEOを7年やって、変えることも大いにやりましたね。

 もちろんです。カルビーに来て、最初にやったのは仕わけです。制度や慣行で、いいものは何ですか。いいけれど、できていないものや、無い方がよいのは何ですかと。

 棚卸をして、いいものは残せ。いいけど、できていないことはきちんとやれ。あかんことは捨てろ。これを繰り返して、今もやっています。過去7年間、私がやったことでも、すべてよいはずはない。みんなで議論して、止めるべきだと結論が出たら、止めてしまえ。それに私は絶対に口を出しません。

――残すべきだと、一番思ったものは何ですか。

 ポテトチップスの原料になる馬鈴薯の調達です。これがなかったら今のカルビーは無いですよ。今から「松本さん、同じ仕組みをつくれ」と言われても、できません。あとは商品の開発と造り方、それにサプライチェーンがよくできている。食品安全対策も大したものです。だから私がやったことは単純に言えば、効率化してコストを下げただけです。

――馬鈴薯については、契約農家から計画的に全量買い取るシステムにより、鮮度の良い原料を大量に調達してポテトチップスで断トツのシェアを確保しているわけですね。

 一時期、馬鈴薯がたくさんできると、カルビーが全部買ってくれないというので、農家の間で馬鈴薯離れが始まっていたんです。私は「全部買え」と言いました。「いいんですか」と言うので「いいんだ」と。「買ってどうするのですか」には「残さず造れ」。「みんな造って、どうします」には「全部売れ」。それだけです。

 要は3次方程式を1次方程式にしたのです。従来は買う、造る、売るの3次方程式でやっていた。私は算数が得意でしたが、3次方程式より1次方程式の方が楽に解けるのに決まっている。だから売るという方程式だけにしたわけです。私は頭が悪いので、何でもシンプルにしないとわからないんです。
(次号に続く)

■森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:7月10日(日)18時0分

ニュースソクラ

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