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GACKT 歌い、踊り、奏で、演じ、多様な姿を見せた“LAST VISUALIVE”最終日/レポート

エキサイトミュージック 7/11(月) 20:00配信

 
■GACKT/【GACKT WORLD TOUR 2016『LAST VISUALIVE 最期ノ月 -LAST MOON- supported by Nestle】ライブレポート
2016.07.03(SUN) at さいたまスーパーアリーナ
(※画像8点)

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「命を懸けてみんなに届けたい、何か特別なものをみんなで探したい」(GACKT)

7月3日(日)、さいたまスーパーアリーナにて、約4か月に及んだ『GACKT WORLD TOUR 2016「LAST VISUALIVE 最期ノ月 -LAST MOON- supported by Nestle」』のファイナル公演が行われた。“VISUALIVE”とは、音楽、映像、パフォーマンスによって総合的に表現されるGACKTオリジナルのコンセプトツアーで、前作からは7年ぶり。まさに待望の開催となる。音楽のみならず、これまで自身が生み出して来た舞台作品や映画を包括する“MOON SAGA-義経秘伝-”という世界観を軸に、徹底的につくり込まれた4時間以上に及ぶステージ。GACKTは歌い、踊り、奏で、演じ、多様な姿を見せて、壮大な物語へと12,000人の観客を誘っていった。

16時15分、GACKTの舞台作品『MOON SAGA‐義経秘伝‐第二章』の映像で第一部が幕開けた。「なぜ人は同じ過ちを繰り返すのか?」などと、殺し合いを止めない人類の根源的な愚かさを問い掛けるナレーションに続き、野に咲く花を踏みつけて戦場に赴く男たちの姿、やがて、何本もの矢が体に突き刺さり呻く源義経(GACKT)が映し出される。


止めを刺すための「放て!」という異母兄・源頼朝の非情な号令を合図に無数の矢が放たれると、イントロがスタート、会場では観客がルミトンライト(観客が演出と連動してスイッチを操作し、色を変える)を点灯。巨大な骨のように見える禍々しくも美しいセットの前で、「ARROW」を披露した。漆黒のエナメル衣裳にドレッドヘア、赤く長い爪。ビジュアル・インパクトは相当なものだが、それを上回る、圧倒的な歌唱力に射抜かれてしまう。

続けて、笙や琴など和の楽器と古来の美しい日本語を織り込んだGACKT流変拍子プログレ「花も散ゆ」では、バンド・メンバーと揃って勇ましくヘッド・バンギング。スモークが立ち込める中、「RETURNER ~闇の終焉~」では繊細なファルセットを美しく響かせ、「RIDE OR DIE」においては、疾走するリズムとテンポに一見反するかのように、ゆったりと艶めかしく身体を左右に揺らす。背後では炎がめらめらと燃え盛り、ラストは特効の火薬が炸裂。まるでGACKTの威力が拡張し、その場のすべてを支配しているかのようにも思えて来た。


そして、「暁月夜 -DAY BREAKERS-」では静の世界へ一転。雨音が鳴る中ピンスポットに照らされ、アカペラで密やかに歌い始め、やがて情感を迸らせていく。合戦の映像が差し挟まれ、いつか会えた時はもう一度強く抱きしめてほしい、と今生では叶わぬ義経の願いを重ねるかのように熱唱。ばる(Dr)の激しいドラミングもその迫真の表現を後押しして強い印象を残す中、第一部は終幕した。

このライブは、4月にリリースされた19thアルバム『LAST MOON』のほぼ曲順通りに展開。2月に実施した本サイトでのインタビュー時にGACKT本人が予告していた以上に、この“VISUALIVE”とアルバム制作が緊密に連動していたことを実感する。

再び暗転した会場には、第一部で描かれた場面の9年前にあたる1180年の映像が映し出された。烏帽子をかぶった公家装束で兄と再会する義経。そんな彼が平安時代から現代へとワープしてステージにやってきた、という風情のGACKT。ダンサー陣を従え、「泡沫の夢」を、三味線を鬼気迫る激しさで掻き鳴らす。地獄の業火のようなファイアーボールが噴出する中、跪いて歌唱し、鮮やかな立ち回りを見せた「斬~ZAN~」。カクカクとした操り人形のようなロボットダンスを取り入れた群舞、美しい和装ヘッド・バンギング、そして大きく90度に仰け反るアクションで魅せた「傀儡が如く」。


「揺籃歌-LULLING-」ではスモークの漂う舞台上で、深い歌声を響かせ、身体を徐々に折り畳んでいくような、パントマイムのようなダンスを脳裏に焼き付かせた。和のテイストとプログレッシヴ・ロック、耽美なメロディー、クラシック、更にはストリート感すら混ぜ合わせた音楽・ダンスはGACKTにしか指揮できない配合バランス。驚嘆するばかりだった。

続いてスクリーンに映し出されたのは、死にゆく平教経を背後から抱きしめている義経。涙のキスに続き、異空間へと引っ張られるようにして義経が飛び去っていく感動の場面なのだが、ここでいきなり『神威♂楽園』(GACKTそっくりな“性”徒会長・神威樂斗率いる“楽”園をコンセプトとした人気シリーズ)の映像に切り替わって絶句。「あの義経はCGでした!」というネタバラシ(?)を皮切りに、“義経秘伝”“VISUALIVE”のおさらいと題した笑いの時間へ。性徒会長がHIRO(安田大サーカス)先輩と相撲対決するという珍場面でクライマックスを迎えた。


そんな映像を楽屋で観ていたGACKTがステージへ向かう、という入れ子構造の凝った演出で、第三部がスタート。メタリックな素材の赤いスカジャンを素肌に羽織り、舞台に登場。ストレートな16ビートのロックサウンドに乗せ、大きく脚を開いてステップを踏みつつ「ONE MORE KISS」を歌唱する。超絶テクニックの速弾きギターソロで存在感を示すCHACHAMARU(Gt)。大きな「GACKT~!」コールを観客に幾度も求め、まだまだ聞こえない、と煽ると、サイケデリックな浮遊感の心地よい「MIRROR」へ。GACKTはゴールドに輝くギターを掻き鳴らし、時にはYOU(Gt)と向き合ってプレイ。長く果てしない、ファイナルらしい本気のコール&レスポンスを観客と繰り広げた。

転換タイムは、ダンサーの君沢ユウキ主導で「恋のFRIDAY!!」のフリを観客にレクチャー。すると、レインボーカラーのルミトンライトで客席が彩られる中、ベロア素材の黒いパーカーセットアップに猫耳を装着したGACKTが登場。「おかえりー!」「ただいまー!」という恒例のやり取りをファンと繰り返し、観客の声の大きさを称えながら、「もう、GACKTの声は閉店です(笑)」と笑わせた。

ここからはすべてばるが歌って自分はドラムを叩く、などとジョークを飛ばすと、ルミトンライトをクロスさせ一斉に×マークをつくる観客(その光景をGACKTが“巨大なワッフル”と表現する一幕も)。ひとしきりファンをイジる愛ある応酬の後、GACKTは、最後はみんなで笑って声がなくなるまで叫んでバイバイしたい、命を懸けてみんなに届けたい、何か特別なものをみんなで探したい、と想いを語った。そして、もし特別なものがここにあったと感じたら“次を考える”と、意味深な言葉を放った。


また、ソロになって今年で17年、その軌跡を振り返り、自分のようなマニアックなことを大きな会場でやるミュージシャンはいないという自覚、その背中を押してくれたファンへの深い感謝を述べる場面も。自分はカッコつけるのは苦手で、限りなく2.9枚目である、との告白も。バラエティー番組での人気も高く、(『芸能人格付けチェック』で)“AかBの部屋に入る人”だと思われているかもしれないが、部屋にも入るがコンサートもする、と語って笑わせた。

メンバー紹介もぬかりなく、白髪の女性に見えるがギターの腕前は日本で三本の指に入る、とCHACHAMARUを紹介。17歳で出会い、バンドからソロに転向して以来そばに居続けてくれているとYOUを紹介。一見かわいい風でGACKT Job一の腹黒、とSato(Ba)を、そして、LUNA SEAの真矢、SIAM SHADEの淳士、など次々と別人の名前でムードメイカー・ばるを紹介した。


すると、DJ KOOがTRFの代表曲「EZ DO DANCE」に乗せて、7月4日(月)に誕生日を控えたGACKT用のケーキを運ぶTAKUMI(サウンドプロデューサー)と共に登場。マイペースなDJ KOOにたじろぐGACKTだったが、「Happy birthday」を会場が一体となって歌うと、うれしそうに顔をほころばせ、「世界で一番カッコいい50歳目指しますよ」という宣言も飛び出した。終演後、みんなでこんなふうに思えたらいいと思います、との前置きに続いて叫んだのは、「ファミリー!」の一言。大きな拍手の中、いよいよライブは最終章へと突入した。

滑り出しはひたすら眩しく、ポップで明るかった。「U+K」では着ぐるみの猫が登場、子どもダンサー2人を交えて歌い踊り、時にはジャンプするGACKT。「舞哈BABY!! -WooHa-(ウーハーベイビー)」では、和太鼓を打ち鳴らすようにスティックを持ち、ダンサー陣と呼吸を合わせてパフォーマンス。観客があらかじめフリをレッスンしていた「恋のFRIDAY!!!」では、いつの間にかジッパーを下げ大きく開けた胸元を露わにして、ドスの効いた煽りを随所に交えながら、雄々しいロック・ボーカルを前面に押し出していく。

金テープが噴出し、高まるパーティームードに沸く客席。暗転の後、アリーナの遥か後方から届くピンスポットを浴びながら腰掛け、シンプルな白シャツ姿で歌い始めたのは「キミだけのボクでいるから」。やがて立ち上がり、真っ直ぐな歌、そして力強いながらも歌に寄り添うバンド演奏で、魂の音楽を届けて行く。背後には女性の横顔や後ろ姿などのシルエットが映し出され、切ない歌詞のイメージを増幅させた。


続いては、歌詞の形式通り、遺した恋人へ綴った手紙が映し出される中歌った「P.S.I LOVE U」。「さよなら」という最後の言葉を、天を仰いで手を挙げて絶唱。ピンスポットを浴びて佇むGACKTの姿から目を離すことができなかった。

ついにライブは最後の場面第四部へ。再び舞台は“MOON SAGA-義経秘伝-”の世界へと戻り、「お前たちはなぜ短い人生を争いに生きるのか?」「お前たちはなぜ傷付け合うことを止めないのか?」といった、尽きない問いが次々と発せられ、答えもないまま会場に響き渡っていた。月を見ながら杯を傾ける義経の元に、弁慶をはじめ、続々と今は亡き仲間たちが集まって来て、出逢えたことを感謝しながら、「同年同月 同じ日に生まれることは叶わぬとも 我ら同じに日死ぬことを願う」と声を合わせる。目を伏せ、口の端から血を流す義経に雪が舞い降り、「綺麗な月だ…」と見上げた先にあるはずの赤い月が、この舞台のスクリーンに描かれていたのだろう。何本もの矢が刺さった壮絶な姿の義経・GACKTが椅子に腰掛け、「雪月花 -The end of silence-」を歌い始めた。

バンド・メンバーらは白い衣装に白髪姿で、青いライトに照らされるステージと、雪のように舞い落ちる赤い花びら……色彩が織り成す幻想美と音楽のエネルギーとが相まって、異世界に入り込んだかのような感覚に陥った。すると、背後に仲間たちが一堂に会し、やがてすぐに姿が消えて、人数分の火の玉となって昇天。息絶えた義経の魂が、仲間を追い掛けるようにして合流、天に昇っていく場面で終幕した。時空を超えた壮大な物語に、すすり泣く声と溜息があちこちから聞こえ、大きな拍手が沸き起こった。


最終日だけのスペシャルとして、ラストに、可憐な花をつまんで笑顔を見せる義経が、スクリーンを飛び出してこちらに向かってくるかように歩き出す映像が映し出された。「The Story does not end」という字幕に続き、ワールドツアー2017が始動すること、「キミだけのボクでいるから」がシングルとして発売されること、このライブの模様がWOWOWにて10月に放送されることなど、歓喜のアナウンスがなされた。そして、会場に心拍音が鳴り響いた後、2017年に日本凱旋公演決定、との告知。もちろん、大歓声と拍手が沸き起こる。再び赤い月がスクリーンに浮かぶ中、20時30分に終演。4時間15分に及ぶ一大ショーは幕を閉じた。

これまでに自身が表現してきた物語世界を、最新アルバムを軸にして再構築し、凄まじいクオリティーと強度のステージ表現に昇華したGACKT。セリフでストーリーを辿れるような“分かりやすい”ステージではなく、これまでの彼の表現に触れたことのない観客には、もしかすると、難解な部分もあったかもしれない。しかし、互いに愛し合いながらも傷付け合ってきた人間という存在の性、業のようなものを太い軸としてエピソードを紡ぎ、洋の東西、時代、音楽のジャンルといったあらゆる境目をやすやすと超えて生み出した表現には、2016年の今だからこそ訴求する強い力があったし、一度この世界に触れればきっと、胸を打たれずにはいられないだろう。最期になることを覚悟して観たこのステージだが、更なるブラッシュアップを重ね、2017年に再会できることも決まった。果たしてどんな進化形を見せてくれるのだろうか? 期待して待ちたい。
(取材・文/大前多恵)

最終更新:7/12(火) 19:45

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