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きっかけはお父さんの“思い”――保育園の連絡帳をクラウド化する「kidsly」開発ストーリー

ITmedia Mobile 7月11日(月)6時25分配信

 待機児童や男性の育児休暇取得率の低さ、保育士の給与の低さなど、現代の日本では子育てに関して多くの問題が指摘されており、参院選の争点の1つになるなど注目度も高い。

【登園するかどうかも簡単に入力できる】

 今後、子育てを助けるさまざまなサービスの登場を期待したいが、リクルートマーケティングパートナーズ(RMP)が2016年3月に提供開始した「kidsly(キッズリー)」は、保育園と保護者をつなぎ、子どものさまざまな情報を共有できるサービスとして、多くの保育園、幼稚園に導入され、業界で評価を高めつつある。また、保育士の養成学校として有名な鎌倉女子大学 児童学部 児童学科の小泉裕子教授が研究にkidslyを活用するなど、アカデミックな分野からも注目されている。

 今回は、このkidslyを企画・開発したRMPの森脇潤一氏に、サービスの具体的な内容や現場の反応や開発に至った背景などをうかがった。

 なお、リクルートは「子育てしながら働きやすい世の中を、共に創る」をキーワードに、「はたらく育児」を応援する「iction!」プロジェクトを、産業界、行政・NPOなどと進めている。kidslyはプロジェクトのテーマの1つである「育児と仕事の両立によるストレスを減らす」サービスに位置付けられている。

●保育士の負荷を大幅に軽減する「登降園管理」

 kidslyは、保育士と家族がやりとりする“連絡帳”をデジタル・クラウド化し、情報を共有できるようにしたコミュニケーションツールだ。保育士用と家族用に2種類のスマートフォン用アプリがあり、そのアプリを使って出欠確認の「登降園連絡」、保育士から園内の様子が届く「連絡帳」、ケガや病気などのときに保護者に知らせる「個別連絡」、写真を共有できる「写真」などの機能を使うことができる。

 保育士の負担を大幅に軽減して大好評を得ているのが、登降園連絡機能だ。家族から入力された、「登園する」「お休みする」「遅刻する」といった園児の登園状況を、保育士はスマホやタブレットの画面でひと目で確認できる。

 従来、保育園を休んだり遅刻したりするときには、家族から電話で連絡が入る。毎朝、その応対で人と時間を取られ、情報の共有もホワイトボードや紙、口頭で行われ、やりにくい状況があった。

 「どこの保育園も朝は大量に電話が来ます。そこに保育士が張り付いて対応しなくてはいけないけれど、当然、朝は園児の受け入れがあるので、そこに人が多い方がいい。登降園連絡機能が業務負荷の圧倒的な軽減につながっていると好評です」(森脇氏)

 保護者側も、朝の忙しいときに、つながりにくい電話をかける必要がなく、手軽かつ確実に連絡することができる。

 夕方の園児引き渡しも管理が必要な部分だ。これも従来は、何時に誰がどの園児を迎えに来るかが紙で管理されていたが、kidslyを使うと、どの園児の保護者が迎えに来るかが、デバイスの画面に時系列で一覧表示される。

 「保育園では、乳児は保護者が迎えに来る直前におしめを変えて渡すことが一般的です。kidslyを見れば、17時に引き渡すなら16時半くらいにおしめを変えようという予定が立つので便利です」(森脇氏)

●子どもの情報をみんなで共有できる

 一方、保護者側に喜ばれているのが連絡帳機能だ。一般的に保育園では、0~2歳児は連絡帳を交換日記のように使い、園児の情報を保護者と細かくやりとりしている。kidslyの連絡帳には、体温、検温時間、朝の子どもの機嫌、睡眠時間、便、授乳、投薬、食べたもの、引き渡し、コメントを入力でき、一般の紙の連絡帳でやりとりする情報を網羅している。「手書きより素早く入力できる」点が好評だそうだ。

 しかも、紙のノートは1冊しかないが、kidslyであればお母さんだけでなくお父さん、祖父母、園長など複数の関係者と簡単に共有できる(保護者側のkidslyは本人を含め4アカウントまで登録可能)。

 「大切なお子さんの成長の記録は、みんなで見ることでさらに価値が上がると考えています。もちろん、出張中のお父さんも見ることができます。連絡帳は大体夕方に更新されるので、それを楽しみにしているお父さんの話をよく聞きます」(森脇氏)

 紙の連絡帳だと、帰ってから読むことが多いが、kidslyの連絡帳は夕方に更新されるので、保護者は迎えに行く途中にチェックできる。その内容で保護者と保育士のコミュニケーションが活発になるといったメリットもあるという。また、コメントには写真を入れることもでき、保護者、保育士両者にとって、たくさんの情報を知りたいという要望に応えるものとなっている。

●新機能の追加も予定

 写真メニューには、保育園側が撮った写真が掲載される。どの保育園でも、掲示板に写真がコメント付きで貼り出されるものだが、このメニューはそれを同じ役割を担っている。保育士たちにとっては、これまで手書きでやっていたことをスマホでするだけだ。この写真に対して、保護者は「いいね!」やスタンプ、コメントで反応できる。これも、アカウント登録している人全員が見ることができる。

 また、急な発熱やケガなどの場合は、個別連絡機能で保護者に連絡が入る。保護者が仕事中ですぐに電話に出られないような状況でも、スマホに通知が届くので確実に伝えることができる。保護者がメッセージを確認するとLINEのように既読マークが付き、履歴も残るので、言った/言わないの食い違いもなくなる。

 また今後は、保育園から送られる連絡事項を一覧できる「掲示板」機能、保育園の行事をカレンダーで確認・管理できる「カレンダー」機能も追加される。保護者側はいつでも連絡事項や行事を確認でき、保育園側は更新が簡単にできるのがメリットだ。

●開発のきっかけは「個人的な体験」

 保育士、保護者、両方にとって便利なkidsly。どちらかの要望をつかんで開発に至ったのかと思われるが、森脇氏によると意外にも「両親がお子さんの情報をうまく共有できていない事実を目の当たりにした」のがきっかけだという。

 「子育て中のお母さんの気持ちや自分の子どもの成長、出来事を知らないことに対して罪悪感を持っていたお父さんがいました。知っていればもっと理解できたと彼は言っていて、もっと家事を手伝えたんじゃないか、もっと早く家に帰れたんじゃないか、母親にしてあげられたことがもっとあったんじゃないか、もっと子どものことを考えることができたんじゃないか、と後悔していたんです」(森脇氏)

 調べてみると、どの家庭も子どもの情報をうまく共有できていなかった。しかし、父親も子どものことを知りたくないわけではない。知る方法があったら知りたいと思っている。そこで、子どもの情報を簡単に届ける仕組みができないかと考えた。

 「大切な子どもの情報はみんなで知っていた方がいい、という考えが最上位概念にあります。その手段として、どこから情報を引っ張ってくればいいか、と考えたときに保育園がありました。最初から保育士さんの作業を楽にしようとして進めたわけではなくて、もっと普遍的なことを社会に届けたいと思ったのです」(森脇氏)

 保育園には連絡帳というものがあることを知ったとき、この情報をデジタル化することに思い至った。保育園をリサーチしてみると、そこでは先生も手書きで困っていた。保護者ともっとコミュニケーションを取って、仕事を円滑に進めたいという要望があった。普遍的なテーマを追求することが、保育士の負担を軽減することにつながった。

●保育士を主体としてサービスを構築

 親側の視点が開発のきっかけだが、サービス自体は保育士の負担軽減に多くの配慮がなされている。例えば、kidsly上で保護者同士のコミュニケーションを支援する機能はない。写真のコメントは見られるが、「保育士さんたちに大きな負担とならないように、情報発信の主体は保育園側に置いている」(森脇氏)という。

 保護者側から新規で送れるメール機能もない。「送れるようにすると、引っ切りなしに保護者からメールが届いて、保育園の負担になるのが想像できる」ためだ。保護者はあくまで保育園からの情報に対して反応することしかできない。

 同じ理由から、個別連絡も24時でクローズされる。保育園からの連絡に対して保護者は返信できるが、24時になると返信ボタンが消えてしまう。次に個別連絡が来るまで返信機能は使えなくなる。ただもちろん、電話で連絡し、口頭でのやりとりは可能だ。

 また、セキュリティにも十分配慮。データはリクルートの安全なクラウドに保存され、保育士側のアプリは8時間でログインが切れる。

 保護者側アプリはiOSとAndroidに対応しているが、現在、保育士側のアプリはiOSのみ対応。2016年中にはAndroidにも対応する予定だが、基本的に使うデバイスはスマホとタブレットでPC用アプリは用意されていない。保育士の業務スタイルを考慮し、機動性の高いデバイスを選んだ。

 kidslyは無料で提供されているが、デバイスは保育園側で用意しなくてはならない。ただ、ソフトバンクと協業してリーズナブルなレンタルプランを提供しているので、それを利用することも可能だ。森脇氏によると、保育園はフィーチャーフォンを契約しているところが多く、それをiPhoneなどに乗り換えれば負担はそれほど増えないという。なお、現在はiPhoneを使う保育園が圧倒的に多いという。

 kidslyを使った保護者からの満足度は非常に高く、不満や要望もほぼない状態だという。一方、保育園側からは、「動画をアップしたい」「Androidを使いたい」「炎上が怖い」「セキュリティに不安を感じる」という声は一部あるものの、こちらもおおむね好評。特に園長先生の評価が高いという。リクルートとしても、これまでまったく付き合いのなかった子育て領域に初めて提供するソリューション。「使える場所を広げて、たくさんの人に使ってもらって喜んでもらいたい」と森脇氏は意気込んだ。

 なお、保護者側は、保育園がkidslyを導入しないと利用できないが、現在、kidslyのWebサイトで紹介キャンペーンを行っている。保育園にkidslyを紹介し、導入に至ると1万円のAmazonギフト券がもらえるので、利用したいと思った方は、ぜひサイトをチェックしていただきたい。

最終更新:7月11日(月)6時25分

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