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BMW、Mobileyeと組んだIntelの思惑とは

EE Times Japan 7月11日(月)11時51分配信

意外? Intelの参画

 BMW GroupとIntel、Mobileyeの3社が2016年7月1日(米国時間)、完全自動運転車の路上での隊列走行を2021年までに実現すべく、提携することを発表した。今後、業界標準の策定と、自動運転車向けオープンプラットフォームの定義の実現を目指し、取り組んでいくという。

【Intelの「Knights Landing」に関する発表資料】

 業界観測筋の間では、BMWとMobileyeの協業については広く周知されているが、今回の提携メンバーにIntelが入ったのは、意外だったのではないだろうか。

 今回の提携によってIntel製品が自動運転車に搭載されることになるのかは、まだ不明だ。仮にそうだとしても、アナリストたちは、「Mobileyeは、自社のアルゴリズムを用心深く守っていることで知られている。このため、同社がそれを喜んで他社と共有するとはとても思えない。ましてや、その相手がIntelであればなおさらのことだ」と、懐疑的な見方をしている。

 それでも、自動運転車関連の見積もり依頼が飛び交い、どの自動車メーカーのCEO(最高経営責任者)も四半期決算発表において自動運転車の話題を避けて通ることはできないという状況の中、技術メーカーが注目を集めようと先を急ぐのも無理はないだろう。

自動運転車開発が加速

 EE Timesは今回、3社の提携発表を受け、自動車業界のアナリストたちに以下の3点について質問した。


1. 今回の発表により、Mobileyeの競合メーカーであるNXP SemiconductorsやNVIDIA、Qualcommなどは、焦りを感じることになるのだろうか
2. Mobileyeの既存のパートナー企業であるVolkswagen groupやGE(General Motors)、日産自動車、Tesla Motorsなどは、今回の3社の提携に反発するのだろうか
3. それとも、新しい開発体制を冷静に受け止め、うまく対処していくべきなのだろうか

 IHS Automotiveのインフォテインメント&ADAS(先進運転支援システム)部門でリサーチディレクターを務めるEgil Juliussen氏は、3つ目の質問について見解を述べている。「このような対応は、非常に道理にかなっているといえる。自動運転車の実現は、極めて難しい課題である。自動車を運転する人間のドライバーを置き換えるには、ディープラーニング(深層学習)技術やセンサーフュージョンなど、数多くの技術が不可欠であるためだ」

 同氏は、「技術レベルが高まっていくと、今回の3社のような提携によって物事が前進し、加速していくことになる」と述べる。

 BMWとIntel、Mobileyeは、まだ初期の段階にある自動運転車市場を、大きくリードしていきたい考えだ。他の多くの自動車メーカーも、市場参入を目指して競争を繰り広げているが、実際のところ小規模なメーカーにとっては、うまく対処していくための資金を十分に確保することは難しいだろう。

Googleの存在

 Juliussen氏は、「Googleの存在もある。Googleの自動運転車は、一部の分野では独走状態にあるため、自動車業界にとって同社は、もはや無視できない存在になっている」と指摘する。

 同氏は、「Mobileyeの競合メーカー各社は、今回の提携について懸念を抱いているかもしれないが、自動運転車市場はいまだ、競争になる前の段階にすぎない」と述べる。

 Juliussen氏は、「自動運転車の試験や検証のための標準規格がいかに複雑なものになるか、考えてみてほしい」と指摘している。

Intelはインフラでの処理を担うのか

 IHS AutomotiveのJeremy Carlson氏は、今回の3社提携にIntelが参加したことに驚いているという。

 Carlson氏は、「MobileyeのプロセッサにIntelのCPUを組み合わせて自動運転車の“コンピュータ”とするような、シンプルなプラットフォームが登場するのではないかと期待される。だが、情報が十分でないため、現時点ではそれが実現するかどうかは判断できない」と述べている。

 3社が共同発表したプレスリリースでは、Intelの役割は明記されておらず、「数十億個にも上るコネクテッドデバイスを駆動し、接続する包括的な技術ポートフォリオに期待している」という、ばく然とした表現にとどまっていた。

 Intelの役割は、自動運転車の内部というよりも、インフラ側にあると考えた方が、より納得がいくかもしれない。

 IHS Technologyで車載半導体分野の主席アナリストを務めるLuca De Ambroggi氏は、「Intelは、コネクティビティおよびテレマティクス技術やIoT(モノのインターネット)技術を提供する」と推測している。同氏は、「こうした技術を活用して、自動運転車をクラウドに接続し、地図データやデータポイントの収集や検索、分析、AI(人工知能)アプリケーションによるパターン認識を行うと考えられる」としている。De Ambroggi氏は、「Intelはインフラ構築のノウハウを強化するために参加した可能性が高い」と指摘している。

 具体的には、De Ambroggi氏は、Intelのコプロセッサ「Xeon Phi」の次世代版(開発コード名:Knights Landing)に言及している。Intelは、2016年6月19~23日にドイツのフランクフルトで開催された「International Supercomputing Conference 2016」でKnights Landingを発表した。

 Knights Landingは、72コアで構成され、動作周波数は1.5GHz、16Gバイトの統合スタックメモリを備える。Knights Landingは既に、数台のスーパーコンピュータ向けに設計を完了しているという。

NVIDIAの牙城を崩す?

 Intelはこれまで、ディープラーニングに関しては、どちらかといえば沈黙を貫いていた。だが、Knights Landingの投入によって、急成長するディープラーニング市場に参入したい考えであることは明らかだ。

 ディープラーニング市場はこれまでは、NVIDIAの独壇場だった。Intelは、イメージングニュートラルネットワーク「Caffe Alexnet」のトレーニングを完了したKnights Landing4基で構成したシステムを使って、同社のディープラーニング技術の優位性を披露した。Intelによると、Knights Landingは10時間半で13億3000万画像を処理できるのに対し、NVIDIAの最新GPU「Maxwell」4基で構成したシステムは同等の処理に25時間かかるという。

 米国の市場調査会社であるThe Linley Groupでシニアアナリストを務めるMike Demler氏も、De Ambroggi氏の見解に同意している。同氏は、「Intelは今回の3社の提携の下、NVIDIAの『DIGITS』のようなディープラーニングシステムの開発とデータセンターの構築を目指していると考えられる」と述べている。Demler氏はプレスリリースの中で、Mobileyeが慎重に言葉を選んでいる点にも注目している。Mobileyeは、「自動運転車のアルゴリズムには、当社の障害物検知用の高性能画像処理プロセッサ『EyeQ』が採用されると考えているが、Intelのプラットフォームの開発にも協力する」と述べている。

 Demler氏は、「Mobileyeの自動運転支援システム『Road Experience Management(REM)』はリアルタイムにクラウド接続する必要があるため、Inelは同システムでも自社の技術を発揮したい考えだ」とも述べている。

【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】

最終更新:7月11日(月)18時24分

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