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Windows 10の無償更新終了後、ユーザーはどうなるのか?

ITmedia エンタープライズ 7月11日(月)13時2分配信

 Windows 10への無償アップグレードでは、ユーザーが意図しない形でアップグレードが行われたことで、さまざまな問題が起きた。米国では、勝手に行われたWindows 10へのアップグレードによってアプリケーションが起動せず、新しいPCを購入するまで仕事が遅滞したと訴えたユーザーに対して、Microsoftが1万ドルの賠償金を支払うことにした。国内でも消費者庁がWindows 10への無償アップグレードに対して注意喚起を行っている。

【Windows7/8.1をプリインストールしたPCの販売は10月31日で終了する(Microsoftより)】

 こうした流れから、Microsoftは、アップグレードを設定するウィンドウの機能を修正し、「無償アップグレードを辞退する」という項目を追加したり、「Get Windows 10」プログラムのウィンドウに表示されている「×」ボタンを押しても、アップグレードを承認したことにせずに、数日後に再度通知画面を起動したりする措置をとった。

 しかし、Microsoftは、7月29日までWindows 7/8.1のユーザーの無償アップグレードを積極的に促す方針を変えていない。無償アップグレードの終了日が近づくと、「Get Windows 10」ではウィンドウとして表示されていたアップグレードの通知が画面全体を覆うようなデザインになり、アップグレードを強力に勧めてくる。

●なぜアップグレードを推し進めるのか?

 MicrosoftがここまでWindows 10へのアップグレードを強力に推し進めるのは、「2018年までにWindows 10が動作するデバイスは10億台に達する」と、2015年の同社の開発者向けカンファレンス「Build 2015」で明言したことを実現するためだ。

 2016年の5月5日、MicrosoftはWindows 10のインストール台数が3億台に達したと発表している。調査会社IDCなどの予測では、2016年に全世界で2億6090万台ほどのPCが出荷される見込みだ。この予測には、AppleやGoogle Chrome Bookなども含まれているため、Windows PCに限定すると、2億2000万台~2億4000万台ほどではないかと予測されている。また、企業向けに新規出荷されるPCでは、ダウングレード権を利用してWindows 7がプリインストールされているケースもある。

 こういったことを考えれば、Microsoftの思惑の通りにWindows 10のシェアが順調に増えているわけではない。

 Microsoftは、Windows 7 Professional/Windows 8.1をプリインストールしたPCの提供を2016年10月31日で終了すると発表している。これ以降、PCベンダーは全てのPCにWindows 10をプリインストールして販売する必要がある(このあたりは各社が別の形でWindows 7のプリインストールの継続を模索しているようだ)。

 また、現時点で最新の第6世代Intel Coreプロセッサ(コードネーム「Skylake」)を搭載するPCではWindows 7/8.1のサポート期限が2018年7月17日になった。2016年1月に発表された時点では、2017年7月17日にサポートが終了し、緊急のセキュリティ更新プログラムのみリリースするとされていたが、個人/法人ユーザーやPCベンダーからの反発を受け、サポート期限を1年延長した格好だ。

 さらに、セキュリティ更新プログラムもWindows 7/8.1の延長サポートフェーズ(Windows 7は2020年1月14日、Windows 8.1は2023年1月10日まで)まで提供されることになった。

 ただし、Intelが2016年の秋から年末にかけてリリースを予定している「Kaby Lake」(第7世代 Coreプロセッサ)やAMD Bristol Ridge、Qualcomm Snapdragon 8996以降のプロセッサを採用するPCやモバイル端末では、Windows 10しかサポートされないことになる。

 MicrosoftがここまでWindows 10への移行を強制する理由は、3つほど考えられる。

 1つ目は、できるだけ多くのPCをWindows 10に移行させてUniversal Windows Platform (UWP)ベースのアプリを増やし、Win32などのデスクトップアプリケーションをレガシーとしてできるだけ早く無くしたいと思っている。

 2つ目としては、2020年1月14日に延長サポートが切れるWindows 7をできるだけ早くWindows 10に移行させることで、Windows XPのサポートが終了した時のような騒動を再び起こしたくないのだろう。

 3つ目は、特にWindows 7はセキュリティ面などで脆弱なことから、よりタフなWindows 10に移行したもらうことで、MicrosoftのリソースをWindows 10や今後の開発に集中させたいという思惑があると考えられる。

●7月29日以降はどうなる?

 特に法人ユーザーが気になるのは、無償アップグレードが終了した7月29日以降にどうなるのかということだろう。

 まず、新規購入するPCは全てWindows 10になるだろう。特に11月1日以降、Microsoftが現状の方針のままなら、法人向けPCでもWindows 10しか選択できなくなる。

 一方、企業がMicrosoftとSoftware Assurance(SA)などを契約し、別途ダウングレード権を使ってWindows 7にすることは可能だ。Skylakeプロセッサを搭載したPCは中途半端な位置付けだが、2020年1月まではWindows 7がサポートされる。ただし、Kaby LakeやAMD Bristol Ridgeなどを搭載したPCはWindows 10しかサポートされないため、2016年秋以降に発売されるPCでは、Windows 10しか使えないと考えた方がいい。

 最新プロセッサでもWindows 7/8.1が動作する可能性は高いが、MicrosoftやPCベンダーはサポートしないだろう。企業で利用する場合、もし何か問題が起きてもサポートの無い不安な状態で、クライアントPCを運用することになる。さらに、アプリケーションのサポート対象OSに関しても、徐々にWindows 10にシフトし、Windows 7/8.1が外れていくことになるだろう。

 こうした2020年までのスケジュールを考えれば、企業ユーザーはそろそろWindows 10への移行を検討した方がいい。SAなどを契約しているなら、7月29日という日付を意識する必要はないが、結果的に2019年末までにはWindows 10へ全面移行する必要がある。アプリケーションのテストや改修なども考慮すれば、今からWindows 10のテストや移行スケジュール、予算取りを考えておくべきだ。

 中小企業などでは、市販PCを購入して社内利用していることが多く、こういう場合なら、いったんWindows 10に無償アップグレードして新たなプロダクトキーを取得し、それからWindows 7に戻すという作業をしてもいいだろう。

 もしくは、2020年1月14日まで現在のWindows 7のPCをそのまま使い続け、その後に新たなWindows 10のPCを購入するというのも1つの手だ。ただし、Windows 10に比べるとWindows 7はセキュリティ面で弱い部分があるため、今後数年間はセキュリティに対する脅威を十分認識しながら運用しないといけない。

 最もコストがかさむのは、7月29日の無償アップグレード終了後に、新規のWindows 10を購入し、それを古いPCにインストールすることだろう。古いPCでWindows 10を動かす必然がないなら、性能の高い新しいPCを購入した方がいい。

●Windows 10は避けられない

 今後のWindows OSは、Windows 10が継続的に改良されていくため、「Windows 11」や「Windows 12」といった新OSがリリースされることはない。また、新しいアップグレード版がリリースされたとしても、Windows 10を使用していれば無償でアップグレードができる。実際、8月2日にリリースされる「Windows 10 Anniversary Update」はWindows 10ユーザーに無償提供される。

 このような状況を考慮すれば、Windows 10への移行は避けられないだろう。特に日本企業は、「Windows OSなんてPCの付属品だ」と考える傾向にあり、利用しているPCのOSをアップグレードするという発想がほとんどない。しかし、今後のWindows 10ではEnterprise版の「Long Term Servicing Branch」(LTSB)を使用しない限り、コンシューマーに新しいアップグレードが提供されてから数カ月後には、企業ユーザーも自動的にアップグレードされることになる。企業のIT部門はこのような変化に追従していく必要があるのだ。

 それに、多くの企業はコスト面から新しく購入したPCをできるだけ長く使用したいと考え(大抵はリース契約の5年間が過ぎるまで)、しかも最上位機種を選びがちだ。しかし、Officeしか使わないようなPCにCore i7、64Gバイトのメモリ、3テラバイト容量のHDDといったスペックは必要ない。

 IT部門は、個々の事業部門が必要とするPCのスペックを考え、できるだけ低コストで新しいPCを導入していくべきだろう。また、低コストのPCを選んだとしても、リースの償却期間(5年)が過ぎる前に(3年ぐらいで)、新規のPCに交換する方法もあり得る。

 「デジタルの世界」では、いいモノを長く使い続けるより、ほどほどのモノを頻繁に入れ替えていく方がいい。具体的には、使用しているPCのHDDをSSDに変えたり、メモリ容量を増やしたりするといった形で、購入時点のスペックのまま5年間運用するようなことはしない。つまり、周辺機器のコストが低下したならパーツの一部を変更することも効果的だ。さすがに数百台ものPCがある会社では難しいが、十数台規模ならパーツ変更の手間はそれほどかからない。中小企業や個人事務所などのユーザーは、こういった手段も検討したい。

 あえてPCを頻繁に入れ替えていくというなら、PCのHDDにデータを蓄積しないようにしたり、クラウドメールを利用してPCにメールを保存させたりしないようなITシステムへ移行することも考えるべきだろう。

最終更新:7月11日(月)14時28分

ITmedia エンタープライズ