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富士通とOracleが提携、クラウド導入の壁を崩せるか

ITmedia エンタープライズ 7月11日(月)16時21分配信

 「両社のクラウドサービスを重ね合わせることで、多くの企業に対して大きな価値を提供したい」(富士通 山本正已会長)

【画像】富士通とOracle、提携の狙いは

 「これからのクラウドサービスに求められる新しい形態を、両社のパートナーシップのもとで推進していきたい」(米Oracle ラリー・エリソン会長)

 富士通とOracleがクラウド事業における戦略的提携を発表した。発表会見には両社の会長が登壇し、今回の提携について上記のように語った。山本氏が言う「両社のクラウドサービスを重ね合わせること」と、エリソン氏が言う「これからのクラウドサービスに求められる新しい形態」は同じ内容を指す。それは次のようなものだ。

 両社は今回の提携に基づいて、富士通の国内データセンターに「Oracle Database Cloud Service」や「Oracle Human Capital Management(HCM)Cloud」をはじめとするOracleの「Oracle Cloud Platform」や「Oracle Cloud Applications」の環境を設置。このクラウドを、富士通から日本企業およびその海外拠点に販売し、顧客企業のエンタープライズシステムのクラウド移行を支援していくという。

 ポイントは、「Oracle Cloud」を富士通のクラウドサービス「FUJITSU Cloud Service K5」(以下、K5)と連携させる点だ。富士通の国内データセンターにOracle Cloud環境を設置することでK5とデータセンター内接続を実現し、エンタープライズシステムで求められるクラウド環境を提供するとしている。

 これにより、Oracle Cloudを利用する側から見た場合、「K5とのハイブリッドクラウドによる柔軟なクラウド環境の利用」「富士通のワンストップサポートによる安心運用」「ポータル間連携で高い利便性を実現」といった点をメリットとして挙げている。このほか、両社の提携内容の詳細については関連記事を参照いただくとして、ここでは話を前に戻そう。

 山本氏が語った「クラウドサービスの重ね合わせ」と、エリソン氏が語った「クラウドサービスの新形態」の核心は、まさしくポイントとなる点で挙げた「K5とOracle Cloudの同一データセンター内接続」にある。そして、そのメリットはOracle Cloudを利用する観点で挙げた「ハイブリッドクラウド」「ワンストップサポート」「ポータル間連携」の3つがキーワードといえそうだ。

 ただ、筆者の印象ではハイブリッドクラウドというより「インテグレーテッドクラウド」もしくは「クラウドインテグレーション」と表現したほうが「新形態」にふさわしいように思えるがいかがだろうか。

●Oracleとの提携スキームで富士通の深謀遠慮も

 山本氏は今回の提携の狙いについて、「エンタープライズ領域におけるクラウド事業の強化」と「Oracle製品を利用中のお客さまのクラウド移行ニーズへの対応」を挙げ、「両社の強みを生かしてお客さまのクラウドファーストニーズに対応していきたい」と強調した(図参照)。そのための両社の提携スキームは先に述べた通りだが、富士通にとっては深謀遠慮のスキームではないかと推察する。

 というのは、富士通はかつて米Microsoftとの間でクラウドサービスの提供形態をめぐって揺れ動いた経緯があるからだ。富士通はMicrosoftの「Microsoft Azure」をベースとしたIaaS型サービス「FUJITSU Cloud Service A5」(以下、A5)を現在提供している。これは、日本マイクロソフトの国内データセンターから供給を受けて付加価値サービスを提供しているものだが、実は2011年8月のサービス開始からしばらくは富士通の国内データセンターで運営していた。

 Microsoftがクラウドサービスの運営を外部委託した初めてのケースだったが、結局は日本マイクロソフトが国内データセンターを開設した段階で現在のスキームになった。これには、Azureの事業規模拡大に伴う経済性の追求やスピーディな技術革新などを重視して自ら運営を行う方針を打ち出したMicrosoftに、富士通が同意せざるを得なかった背景があったようだ。だが、それを契機に富士通は、クラウドサービス事業の戦略転換を迫られる格好となった。

 こうした経緯が、今回のOracleとの提携に何らかの影響を及ぼしていることはないか。会見の質疑応答でA5との違いをあえて聞いたところ、富士通の香川進吾執行役員専務デジタルサービス部門長兼CTOが、A5には直接触れず、次のように答えた。

 「今回の新サービスはK5とOracle Cloudを連携させた形と、Oracle Cloudの名称をそのままに富士通がインテグレーションを施す形の2通りがあり、いずれもオンプレミスでOracleデータベースを利用されている多くのお客さまからのご要望に応えたものだ。クラウドサービスに対するお客さまのニーズはかなり多様化してきており、富士通が前面に立って対応する形がお客さまにとって最も安心していただけるのではないかと考えた」

 一方のOracleには、クラウドサービスの国内でのデータセンター拠点をほかに設ける考えはあるか、聞いてみた。これについては、日本オラクルの杉原博茂社長兼CEOが次のように答えた。

 「当社の事業に対する姿勢は全てオープンなので、クラウドサービスに対するお客さまのニーズがどんどん高まってくれば、さまざまな提供形態を考える必要も出てくるかもしれない。ただ、今回の提携はOracleデータベースを利用されている多くのお客さまからのご要望に応えたもので、まずは両社でそうしたニーズにしっかりと対応していきたい」

 香川氏も杉原氏も「多くのお客さまからのご要望に応えて」と口をそろえて語ったのが印象的だった。

 少々、提携スキームの話に執着したが、今回、両社が打ち出したクラウドサービスの新形態によって、オンプレミスのエンタープライズシステムがクラウドへ移行する動きが活発化するか、注目したいところだ。この点について、エリソン氏がこんな見解を述べていた。

 「今回の両社の提携によって、オンプレミスでカスタマイズしたシステムを利用しているケースが多い日本の企業もクラウドへ移行する動きが本格化するだろう。それは、日本にとって大きな変革につながるはずだ」

 今回の両社の提携は、その使命を担っている。

最終更新:7月11日(月)16時21分

ITmedia エンタープライズ