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「iPS細胞ストック」事業の体制整備進む 8月からは東京の拠点でも採血対応

日刊工業新聞電子版 7月11日(月)11時55分配信

 細胞移植治療用のiPS細胞を事前に作製、備蓄する「iPS細胞ストック」事業の体制整備が進んでいる。同事業に取り組む京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は、これまで同細胞の作製に使う血液を京大の付属病院でのみ採取していたが、8月から東京の拠点でも採血に対応する。2拠点体制で事業を加速し、2022年までに日本人の8割に適合するiPS細胞の備蓄を目指す。

 拠点設置にあたり、東京海上グループの提携医療機関である海上ビル診療所(東京都千代田区)と協力する。同診療所は東京駅の近くに立地し「関東以北の血液提供者も来訪しやすい」とCiRAの高須直子副所長は説明する。京大病院での採血は平日のみだが、海上ビル診療所では土曜日も受け付ける。

 iPS細胞ストックは、他人由来のiPS細胞から神経や臓器の細胞を作り、患者に移植する「他家移植」を前提としている。患者自身のiPS細胞を使う「自家移植」は拒絶反応を回避できる半面、個々の患者からiPS細胞を作るのに多くの時間と費用を要する。事前に他人由来のiPS細胞を備蓄しておくことで時間と費用を削減できる。

 CiRAは、他人由来の細胞を使う他家移植で課題となる拒絶反応を軽減するため、「HLA(ヒト白血球型抗原)」という細胞の「型」に着目。数あるHLA型の中でも拒絶反応が起きにくい特殊な型を持つ人を特定し、iPS細胞作製用の血液提供を依頼する事業を13年に始めた。

 血液提供者の探索にあたり、日本赤十字社やさい帯血バンク、日本骨髄バンクと連携。16年4月からは、日本骨髄バンクの全国の新規ドナー登録者を対象に協力依頼をスタートした。対象範囲の拡大に伴い「『協力の意思はあるが、平日に京都へ行けない』という人も出てくる」(高須CiRA副所長)と想定。新たに東京に採血拠点を設けることにした。

 日本人の8割をカバーするiPS細胞を備蓄するには、特殊なHLA型を持つ人を拒絶反応の少ない順に約75種類分集める必要がある。CiRAの山中伸弥所長は「海上ビル診療所との提携は、血液提供者を探す上で画期的なステップになる」と期待を寄せる。

最終更新:7月11日(月)11時55分

日刊工業新聞電子版