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伊の不良資産問題、処理誤ればEU離脱につながる危険

ニュースソクラ 7/11(月) 14:00配信

日本のバブル崩壊時に匹敵する規模

 イタリアの銀行株価の下落が止まらない。英国のEU離脱決定後の6月24日以降、イタリア銀行株は約3割の下落,年初来では約5割の下落となっている。

 イタリアの不良資産の規模は総額で3,600億ユーロと全欧州の半分、イタリアのGDPの約25%、貸出総額の約2割に及ぶ大規模なものである。米国や日本の10倍以上の比率である。

 日本の不良資産問題のピークである2000年台初頭における不良資産総額は約100兆円でGDPの約20%であったからイタリアの不良資産は、日本とほぼ同規模のマグニチュードを持つ。量的な問題だけでなく、銀行経営者が、いずれ景気が回復すれば担保力は充分にあるので少し我慢すれば乗り越えられる、と楽観的であったことも似ている。

 また、イタリアでは財政赤字のGDP比が140%と大規模で公的資金注入となれば財政悪化懸念が広がるうえ、緊縮を迫られた一般国民の猛反発を買うという点も往時の日本の姿とよく似ている。

 イタリアの不良資産問題の背景には長年続いた低成長問題がある。企業が借金したものの、売り上げが伸びずに低収益を強いられて償還原資が足りないのである。銀行自体も低収益で自己資本を増強できなかった。過剰人員・店舗を整理できず経営効率の悪化を招いたこと、伝統的な預貸業務に執着してアセットマネージメントなどの資産運用業務やM&Aなどの投資銀行部門への進出に遅れたこと、なども響いている。

 また中小企業向け融資の担保に取っているのが中小企業オーナーの自宅などで債務不履行となっても政治的影響力を駆使されて実質的に処分できない、といったイタリア的事情もある。

 当面、最大の問題は資産残高第三位の大手行モンテ・パスキ・デ・シエ‐ナ銀行の救済である。一般的には公的資金を注入して金融システム不安を未然に防ぐのが王道であろう。しかし、今年1月に定められたEUの新条例では、民間債権者が損失を負担するという「ベイルイン」が要求されている。損失負担額が救済行の総負債の8%に達するまでは公的資金注入はできない。

 多くの場合、預金者や一般社債の保有者よりも債務弁済のうえで下位に置かれる劣後債投資家の損失負担が不可欠となる。そうなると、同国では機関投資家だけでなく個人投資家も劣後債には大量に投資しているため、政治問題化は避けられない。

 現に昨年12月、中小銀行4行に対する公的資金注入に際して劣後債保有者に7億ユーロ強の損失を強制負担させて反発を買ったことは記憶に新しい。もし、ここでイタリア政府がモンテ・パスキ銀行の劣後債に損失負担をさせれば、イタリアの他の大手行の劣後債保有者が一斉に投げ売りに出てイタリアの金融システムが崩壊する危険性も指摘されている。

 さらには、ドイツ銀行やクレディ・スイスといった経営危機の伝わる欧州の大手銀行に問題が波及しかねない。イタリア政府はアトランテ(Atlante)と称する民間銀行拠出による救済ファンドを設立した。これを利用して自己資本増強を図らせることも考えられるが、すでに資金の半分を中小銀行の救済に使い果たしてしまった。ここはレンツィ政権がEUに対して「ベイルインを強要すれば、英国のEU離脱によって極めて不安定化しているイタリアならびに欧州の金融市場に不測の事態が起きかねない。

 例外的にベイルインを伴わない公的資金注入が、イタリアのみならず欧州全体の金融市場の安定に不可欠だ」と押し切る蛮勇も必要となろう。

 政治的には10月に予定されているレンツィ首相が打ち出している憲法改正案の是非を問う国民投票への影響が懸念される。この投票では「上院議員の定数を315から100に縮減する、行政府への影響力を削減する」というレンツィ首相の提案への是非を問う。

 もし選挙民たる個人投資家に損失が生じるようなことがあればこの投票で勝利を収めるのは絶望的となり、国民投票で否決されれば退陣するという公約通り、レンツィ首相は辞任に踏み切らざるを得ない。

 そうなると十分でないとはいえ「レンツィ改革」と称された労働市場の弾力化などの構造改革が行き詰まり、イタリア経済の信認が一段と低下しよう。すでにイタリアの地方選挙ではローマ、トリノ市長選でEU脱退を掲げる「五つ星運動」が勝利を収めた。

 不良資産問題の処理を誤り国民の不満が高まればブレクシットに次ぐイタリアのEU離脱(Italexit)が俎上にのぼろう。

俵 一郎 (国際金融専門家)

最終更新:7/11(月) 14:00

ニュースソクラ

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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核融合こそ未来のエネルギー問題への答えであり、子どもにだって世界は変えられる、テイラー・ウィルソンはそう信じています。そして彼はそのどちらにも取り組んでいます。14歳の時に家のガレージで核融合炉を作り、17歳となった今、直前の依頼に応えてTEDのステージで自分の物語を(手短に)語っています。