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農業復興には与党の力・・・ 複雑な思いで託した一票 熊本地震の被災農家

日本農業新聞 7月11日(月)12時1分配信

 環太平洋連携協定(TPP)や、農協改革など農村、農政の議論が盛り上がりに欠けたまま、農家らは複雑な気持ちで投開票日の10日を迎えた。農産物の価格低迷や、先行き不透明な農政。厳しい農業経営を強いられる農家は、自らの意見を主張するため大事な一票を託した。

 農政に不満もあるが、農業復興には与党の力が必要――。熊本地震で震度7の揺れに見舞われ、多くの農家が被災した熊本県西原村。乳用牛5頭を失った西阿蘇酪農協の組合長、山田政晴さん(66)が投票先に選んだのは与党候補。選挙戦では各党候補が熊本地震の復旧・復興を声高に叫んだが、「結局、与党に託さないと状況が前に進まない」とぽつり。

 熊本地震で被災した農家は、TPPなどの不安は大きいが、早期復興には、より発言力のある与党候補者に一票を託したいとの思いだ。一方、農政は選挙戦で影が薄く、「与党に投票したとしても農政を全面支持するというわけではない」との声も漏れる。

 乳用牛に加え、育成牛舎なども失った山田さん。生き残った牛の世話を終え、避難所となっている投票所に向かったが、「口ばかりでは復興は進まない」と、野党が具体案を打ち出せないことに、いらだちもにじませた。

 自民党政権が続く中で、菊池市で黒毛和種と交雑種(F1)など810頭を飼養する安武孝之さん(69)も、「与党に託さざるを得ないジレンマがある」と打ち明ける。

 安倍政権への不満は根強く、「TPPや農協改革などをトップダウンで推進する手法は好きではない」ときっぱり。農政課題で、選挙後に具体的な議論が再開することを踏まえ、「農家が与党候補に投票したとしても、それらを支持したわけではない」と念押しする。

 自宅や牛舎が傾くなどし、元の生活には戻っていない。被害額は数千万円に上る安武さん。熊本地震では基幹産業の農業が甚大な影響を受けたが、農業政策は経済政策の陰に隠れ、選挙戦の主要争点にはならなかったとの思いもある。農業復興は長期戦になるとして「農政課題でも震災復興でも、当選者は現場の声を政権中枢に届けてほしい」と訴える。

日本農業新聞

最終更新:7月11日(月)12時12分

日本農業新聞