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アニメ業界の変革を目指して――サイゲームスのアニメスタジオ“CygamesPictures”設立の経緯を、取締役 竹中信広氏に訊く

ファミ通.com 7月12日(火)0時2分配信

 『グランブルーファンタジー』や『シャドウバース』など、ゲームの開発・運営を主要事業とするCygames(サイゲームス)。近年はアニメ事業にも注力しており、2015年3月にはアニメ事業部を設立した。

 そして2016年4月、Cygamesは新たな試みとして、アニメーション制作事業を手掛ける子会社CygamesPicturesを立ち上げた。いま、アニメスタジオを設立した意図とは? 今後目指すものは何か? Cygamesのアニメ事業部事業部長であり、CygamesPictures取締役を務める竹中信広氏にお話をうかがった。

※本インタビューは、週刊ファミ通2016年6月23日号(2016年6月9日発売)に掲載された内容に、加筆・修正を行った完全版です。


●セルアニメ存亡の危機を打破するためのチャレンジ
――まず、この4月にCygamesPicturesを立ち上げた理由を教えてください。
竹中 じつは、3年くらい前から、「アニメ制作会社を作りたい」という話はCygamesの中で上がっていました。Cygamesのスタッフはみんな、ゲームだけではなくエンタテインメント全般が好きなので、当然アニメも好きなんです。ですので、「自分たちでアニメを作りたい」という気持ちもあったのですが、制作スタジオを作るとなれば、やはり中心となる人物がいなければいけないので、すぐに設立するというわけにはいきませんでした。

――では、スタジオの中心となる人物が見つかったので、ついにスタジオ設立にいたった、ということでしょうか。
竹中 はい。今回のCygamesPictures設立に先駆けて、昨年、Cygamesの中に“アニメ事業部”を立ち上げたのですが、その事業部に、「この人であれば、Cygamesの物作りの姿勢に寄り添いながら、スタジオを運営できる」と思えるスタッフが来てくれまして。そこで、スタジオ設立に踏み切ることができました。

――とはいえ、新たな事業に参入するのには、並々ならぬ覚悟が要りますよね。
竹中 そうですね。いまから参入するのであれば、既存の制作会社と同じような形でやってもおもしろくないと思いますので、新参者だからこそできる形で、アニメ業界に貢献したいと考えています。

――CygamesPicturesでは、今後どのような仕事を手掛けて行く予定ですか?
竹中 目指すところは、シリーズものですとか、劇場版アニメを安定的に作れるスタジオです。とはいえ、いまは立ち上げたばかりですので、まずはCygamesのゲームのプロモーションビデオですとか、CMの映像などを中心に手掛けていければと考えています。そこから少しずつ理想に近づいていきたいなと。

――ちなみに、現在、スタッフは何名ほどいらっしゃるのですか?
竹中 作画スタッフについては、フリーで活動している人にご協力いただいているので、CygamesPictures所属の人は、まだ少ないんです。これから、我々と同じ方向を向いて活動してくれる人にスタッフになっていただきたいと考えています。

――では、具体的に、どんな考えを持つ方にCygamesPicturesに来てもらいたいと考えていますか?
竹中 アニメを制作するうえでは、描くスタッフはもちろんですが、管理するスタッフも重要なんです。とくに、スタジオを設立したばかりであれば。ですので、いまは制作職に力を入れて採用活動を行っています。どういう人材を求めているかといいますと……“既存のアニメ業界のありかたを変えていきたい”という、我々の考えに同調してくださる方です。たとえば、アニメ業界って、フレックスタイム……と言えば聞こえがいいのですが、夜まで働く方も多いですよね。

――夜遅くまで作業しているという方は、数多くいらっしゃいますね。
竹中 でも、CygamesPicturesでは、“朝出社して、夜帰る”という習慣を、できるだけ根付かせたいと思っています。組織を大きくするためには、システムをしっかり作ることが必要だと考えるからです。もちろん、ときには遅くまで働かなければならない日もあると思いますが……。現状では、「そんなきっちりとした体制では、いいものが作れない」とおっしゃる方も多くいると思います。「いいアニメーターは、枠にはまったスタイルでは活動できない」と。ですが、そのスタイルについていけないという人も少なくありません。CygamesPicturesでは、“しっかりしたものを定時で仕上げる”ことができるスタッフを、中長期的に育てていくつもりです。

――アニメの作りかたの常識を変えていくことが、CygamesPicturesの目標のひとつということでしょうか。
竹中 そこから始めたい、と思っていますね。CGアニメのスタジオは、比較的、時間をきっちり管理して作業できているところが多いのですが、手描きアニメはそうではない。その結果、“誰かの作業に付き合う”人が出てくるんです。そうすると、新しいスタッフが入ってきても、“拘束時間が長くて辛い”と言って辞めてしまう。現在、手描きアニメの第一線で働いている方は、40代後半だったり50代だったりするのですが、その下の世代は、すごく少ないんです。

――力をつける前に、辞めてしまうということですね。
竹中 いま、“絵を描いて食べて行きたい”と考えたとき、アニメ業界以外にも選択肢はいろいろあります。そこで、アニメ業界がこのまま変わらなければ、“アニメ業界に行こう”と思う人はますます減ってしまうと思います。そうしたら、日本が誇ってきたセルアニメがなくなってしまう。この状況を打破するために、誰かが取り組んでいかなければと思うんです。

――しっかり朝出社して、夜に帰るべき……というお話は、雑誌編集者としては耳が痛いです。
竹中 夜遅くまで働かなければならない日は、どうしてもあると思います。でも、アニメーション制作の全行程をしっかり管理して、制作フローをしっかり確立すれば、トータルで見ると、みんなの負担が軽くなるはずなんです。そしてシステムを整えるなら、会社を立ち上げたいまこのときから、全員が同じ方向性を向いていなければいけません。“人数が揃ってからシステムを整えよう”と思っても、難しいでしょうから。

●コンテンツに合ったアニメを継続して制作できる環境を目指して
――アニメ業界については、賃金の低さが取り上げられることも多いですが、どのようにお考えでしょうか。
竹中 その点についても、できるだけ改善したいと思っています。たとえば、CygamesからCygamesPicturesに発注する仕事については、単価を上げるようにしたい。そこから徐々に業界全体を変えていければと思っています。これまでのアニメは、間違った金額感で制作されてきたと思うので。アニメはビジネスとしてはすでに破たんしていた、とも言えます。最近は、海外の配信会社がいままでのベースより制作費を高く出してくれているケースもあり、状況も少し変わってきましたが。これから、Cygamesのアニメ事業部とCygamesPicturesが、業界の考えかたを変えていくという活動の一翼を担えればと。

――ちなみに、今後、Cygamesのゲームがアニメ化した場合、それらのアニメはすべてCygamesPicturesが手掛けるのですか?
竹中 いえ、そのつもりはありません。いまお付き合いさせていただいている制作会社さん――たとえば、アニメ『神撃のバハムートVIRGIN SOUL』を作っていただいているMAPPAさんや、『ウマ娘 プリティーダービー』のPVを作っていただいているP.A.WORKSさんとは、今後もお仕事をしていきたいと思っています。


――では、アニメ業界改革の嚆矢を目指すCygamesPicturesでは、具体的に、どのようなテイストのアニメを作っていきたいとお考えですか?
竹中 スタジオを作ると言ったとき、“『神撃のバハムート GENESIS』のようなアニメを作るのですか?”と聞かれることが多かったのですが……あのクオリティーのアニメを作り続けていたら、みんな死んじゃうと思います(笑)。

――『神撃のバハムート GENESIS』のクオリティーは、本当に高かったですからね。
竹中 2期に当たる『VIRGIN SOUL』のクオリティーもかなり高いのですが、それはMAPPAさんの心意気のおかげで成立していると言えますね。将来は、CygamesPicturesでもあのクオリティーのアニメを安定して作れるような環境は整えたいとは思いますが……テイストやジャンルについてはこだわらずに、なんでもしっかり作れるタジオにしたいです。かわいい女の子が出てくるアニメも作りたいですし、子ども向けのアニメも作りたいですし。コンテンツに合うアニメを提供していければと考えています。

――ゲーム会社であるCygamesの子会社であることで、アニメ制作のうえでどのようなメリットがあるとお考えですか?
竹中 いま、ゲームがある程度ヒットしてからアニメ化しようとすると、企画開始からアニメが放送されるまでに、早くても1年半はかかります。そうすると、旬を逃してしまう可能性があるんですよね。ですが、ゲームの立ち上げ段階からアニメ化の話ができていれば、ゲームとアニメを同時に展開することも可能です。

――アニメ化を前提にしたコンテンツ作りがしやすいということですね。
竹中 ゲームのスタッフとアニメのスタッフが、直接やり取りできるのもメリットですね。アニメは、当たり前ですが(キャラクターが)動くことを前提に作られていますが、ゲームは必ずしもそうではありません。ゲームをアニメ化する場合は、両者の意見をすり合わせていかなければなりませんが、ゲームのスタッフとアニメのスタッフの距離が遠いと、打ち合わせを設定するのもまずたいへんなんですよね。CygamesとCygames Picturesなら、すぐに話ができるのでスムーズです。そのやり取りを、Cygamesグループ全体の糧として、今後のコンテンツ作りにも活かしていきたいです。

――CygamesPicturesが手掛けたアニメ第1弾が見られるのは、いつごろになりそうでしょうか。
竹中 スタジオ設立が4月、実際に動き始めたのが5月の初めですから、作品をお見せできるのは、まだまだ先になりそうです。

――このインタビューを読んだ方は、きっとみんな「早くCygamesPicturesの作品が見たい!」と思うのですが……!
竹中 早く作ろうと思えば、作ることはできると思いますが、やはりアニメのクオリティーは、かけた時間に直結するので。『神撃のバハムート GENESIS』も、作るのに丸2年かけていますから。短いアニメーションについては、何かしらを年内にお見せできればいいなと考えています。

――どんなアニメが生まれるのか、いまから楽しみです。
竹中 最初は仕込みのためのお時間をいただきますが、1~2年後には、いいものを継続してお見せできる環境を整えたいと考えていますので、ご期待ください。

――制作環境からアニメ業界を変えていくことが目標だとおっしゃっていましたが、そのほかに、時間をかけて達成していきたいと考えていることはありますか?
竹中 どこか地方に制作スタジオを持ちたいと考えています。僕の中では大きな目標なのですが。CygamesPicturesを立ち上げる前に、P.A.WORKSさんにスタジオを見せていただいたり、お話をうかがったりして、地方スタジオの強みというものを感じたんです。その地方で生活の基盤をしっかり築けば、東京にいるよりも、描くことに集中できる環境を作れます。東京よりも家賃が低いですし、通勤時間も短くなりますし。こちらとしても、寮を用意するといった生活のサポートもしやすいですし。描くことに集中できるというのは、アニメ制作においては、圧倒的に有利な点です。海外も含め、各地に制作スタジオを作れるようになって、安定したペースとクオリティーでアニメを作っていけるようにしたいです。

――3Dアニメの制作を行う予定はないのですか?
竹中 いまの時代、アニメを作る以上、3Dアニメに絡まないわけにはいかないので考えてはいきますが、スタッフの教育のしかたや、業界の基礎を変えていきたいのは、手描きアニメについてです。手描きアニメを未来に残せる環境作りを目指して取り組んでいきます。

●アニメ『神撃のバハムート VIRGIN SOUL』絶賛制作中!
 2014年秋に放送されたテレビアニメ『神撃のバハムート GENESIS』。その続編に当たるのが、現在制作中のアニメ『神撃のバハムート VIRGIN SOUL』だ。監督のさとうけいいち氏、キャラクターデザインの恩田尚之氏、美術監督の中村豪希氏、音楽の池頼広氏、アニメーション制作のMAPPAは前作から続投。

 ここに掲載しているのは、その『神撃のバハムート VIRGIN SOUL』の場面カット。わずかな枚数ではあるが、前作に劣らぬクオリティーの高さが伝わってくる。

最終更新:7月12日(火)0時2分

ファミ通.com

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。