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フラグシップモデルも必要だが、まずはローエンドで勝負――ZTEの反撃なるか

ITmedia Mobile 7月12日(火)6時25分配信

 ZTEは、早くから日本でSIMロックフリースマートフォンを投入してきたメーカーの1社だ。2014年には、LTEに対応したミッドレンジモデルの「Blade Vec 4G」を発売。その後、NTTレゾナントが運営するgooとタッグを組み、「gooのスマホ」として、「g01」や「g02」「g03」などを市場に投入してきた。

【1万円台のSIMフリースマホも投入】

 最近では、2015年末にフラグシップモデルであるAXONシリーズのコンパクトモデル「AXON mini」を発売、夏モデルとして、ミッドレンジモデルの「Blade V7 lite」や、エントリーモデルの「Blade E01」を展開している。

 一方で、SIMロックフリースマートフォンのシェアを見ると、上位3社はFREETEL、ASUS、Huaweiの3社が“常連”として定着しつつあり、ZTEは先駆者であるアドバンテージを生かせていないようにも見える。一時期はgooのブランドで端末を発売していたこともあって、「ZTE」という名前や端末のブランドが、ユーザーに認知されていない印象も受ける。

 SIMロックフリースマートフォンの市場が本格的に立ち上がりつつある中、同社はどのように反転攻勢をかけていくのか。ZTEでプロダクトマーケティングのディレクターを務める、吉本晃氏にその戦略を聞いた。

●タスクフォースによってチャンスが広がった

――(聞き手、石野純也) 最近になって、ZTEのブランドで端末を出すようになりました。これは、何か戦略的な変化があったのでしょうか。

吉本氏 いろいろなものがバラバラと出ていて、名前に統一感がないという指摘もありました。これからはきちんとしましょうということです。Bladeには「V」や「A」のほかに、「L」がありますが、Lは3G端末しかないので、日本では今さら見向きもされません。そこで、AXONとBladeのVとAを中心にしています(※Blade E01は名称を日本向けに変更している)。

 ただ、Vといってもその中で幅が広く、メインのものがあって、その下に「lite」があり、「Max」のような機種もあります。それらを全部持ってくると、さすがに日本のSIMフリー市場では多すぎるので、ラインアップを整理しながら、3機種、4機種ぐらいにしたいと思っています。

―― 今のSIMフリースマートフォン市場には、そこまでの規模はないですからね。

吉本氏 はい。日本(の端末)全体がSIMフリーになれば話は別ですが、まだ年間で100万から150万台程度ですからね。

―― 一方で、その市場規模は拡大もしています。特に、4月以降の“実質0円禁止”は、ZTEにとって何か変化はありましたか。

吉本氏 安倍首相の一言で、大きく変わりました(笑)。タスクフォースでは「10万円もするようなものがタダになるのはダメ」といった発言もあり、ある意味、iPhoneが狙い撃ちされている状況ですが、その駆け込みでキャリアの端末は1月に売れ、2月に下がりました。その一方で、SIMフリーは堅調な状態でここまで来ています。ZTEのようなメーカーには、チャンスが広がりました。

―― 販売台数などの状況は、いかがでしょうか。

吉本氏 数量的にはまだそこまでたくさん売れているというわけではありませんが、とにかく存在感を示したい。「Blade V580」の発表会でもお話ししましたが、2016年はとにかくトップ3に食い込んでいきたいと考えています。

―― 市場規模が大きくなったとはいえ、まだ1モデルあたりの販売量はそこまで多くはなく、ようやく2桁万台になったところだと思います。その意味では、大ヒットを出せば“一発逆転”も可能な気はしています。

吉本氏 そうですね。それはあると思います。

●フラグシップモデルは必要だが……

―― 今回、夏モデルとして発売したのが「Blade V7 lite」と「Blade E01」の2機種で、いずれもミッドレンジからエントリーモデルという位置付けです。ここで認知度を上げ、フラグシップモデルを出していくという戦略でしょうか。

吉本氏 AXON miniの後継を持ってくるのは、まず間違いないでしょう。あとは本社と相談しながらですね。ただ、フラグシップモデルがあった方がいいのも確かです。安いものばかりだと、メーカーのイメージがどうしても悪くなってしまう。ZTEというメーカーにどういう力があり、ユーザーにどういう価値を示せるのかという意味でいうと、やはりフラグシップモデルはあった方がいい。その辺は、本社との交渉になります。「AXON 7」も、あれで5万円台が出せるなら、いける(ヒットする)のではと思っているのですが……。

 今回、Blade V7 liteを出したのは、2015年12月のBlade V6があり、その刷新がそろそろ必要だったからです。あとは、お客さまとお話をする中で、MVNOの期待はローエンドのところにありました。まずローエンドで地固めをしなければならないということで、Blade E01を導入しています。お客さまのお話を伺うと、やはり(ZTEは)まだブランド力がない。それでも、「これなら手を出してみてもいいかな」と思えるものとなると、やはりローエンドです。そういったこともあり、今回のBlade E01が決まりました。そこを取っ掛かりにして広げていければ、ZTEという会社の名前も広がります。


―― なぜ、Blade V7はliteだったのでしょうか。

吉本氏 Blade V7 liteは、V6の後継ということで、2月のMobile World Congressで発表した機種です。確かに「Blade V7」もラインアップにはありましたが、価格的にちょっと難しい。特徴があって、売りやすいもの。しかもグローバルでもV7 liteには力を入れていることもあり、そこと歩調を合わせていきました。この2万円台前半は、ボリュームゾーンになりそうだと考えています。

―― SIMフリーのもともとのボリュームゾーンは、3万円を切るぐらいの価格でしたが、最近、それが徐々に下がってきているような印象を受けます。

吉本氏 そうなんですよね。もしブランド力があれば、もう少し高い値段でも勝負できるのですが、そういうものができるまでの間は、気軽に手に取っていただけた方がいい。あとは、それこそAXONシリーズもありますからね。

●Blade E01は緊急地震速報に対応している

―― 今回、日本向けにカスタマイズしたようなところはあるのでしょうか。

吉本氏 特にこれというようなものはありませんが、周波数の対応は当然しています。この1つ前ぐらいからソフトバンクの周波数にも対応して、両方で使えるようにしています。あとは、日本語変換なども当然やっています。

―― 緊急地震速報はいかがですか。

吉本氏 Blade E01には入れています。さすがCBS(Cell Broadcast Service:3G用の緊急地震速報)は難しいのですが、ETWS(Earthquake and Tsunami Warning System:LTE用の緊急地震速報)は、チップセットにも入っていて、Androidも標準でサポートしています。あとはちょこっと手を加えればいいので、これは本社に対応してもらいました。

 災害時用の機能という点では、ラジオもそうです。ここは日本向けにチューンしたというより、削除しなかったという方が正しいですね。ワイドFMが始まり、グローバル向けのものがそのまま使えるようになったので、災害対応にいいと思い、Blade V7 liteにはそのまま残してもらいました。これも、以前は使えない機能だったので、日本で発売する際には外すのが常識でした。

―― なるほど。そうやって日本の状況をインプットしているということですね。

吉本氏 防水も、もう少したくさん売れてくれればいけるのですが(笑)。キャリア向けには防水端末も作っているので、ある程度の台数がコミットできれば、対応はできます。ただ、今はこの状況で、ブランドもなく、何万台というコミットが取れないの難しいですね。

―― そういう意味では、MVNOが何社か共同で調達すれば、日本のユーザーの好みに合った機種が出せるのではと思います。防水以外に、例えばおサイフケータイなどはいかがでしょうか。

吉本氏 おサイフケータイは、さすがにちょっと面倒なことが多いですね。調べはしていますが、今まで作ってきたわけではないので、進化した状態になっているところにキャッチアップするのが大変です。開発期間もコストもかかるので、MNOさんぐらいまとめてドンと調達してもらえないと、厳しいものがあります。

 ただ、グローバル的にもNFCが来るといわれているところがあり、NFCオンリーのチップにするのか、FeliCaも入ったチップするのかという選択肢は出てくるでしょう。無線部分は一緒なので、あとはセキュアエレメントをどうするか。2020年に向けて「リーダ/ライターが増える」と言う方もいますからね。

―― 可能性はゼロではないということですね。

●au端末に対応させるのが難しい理由

―― 対応バンドを増やし、使えるキャリアをドコモ、ソフトバンクを増やしてきましたが、auはいかがですか。

吉本氏 今、代理店さんと一緒になって、どのぐらいの規模がありそうなのかを調査しているところです。auに対応しようとすると、VoLTEをやらざるをえません。キャリアの試験をするまで突っ込んでいき、投資する価値があるかないのかを調べています。本国からは、「ある程度台数が固まるならやってもいい」と言われている状況です。

―― やはり、VoLTE対応は開発やコスト的に、なかなか大変ということでしょうか。

吉本氏 難しいんですよ。というもの、VoLTEには事実上、世界標準がありません。共通規格はあるのですが、オプションが多すぎて、みんなが勝手にインプリ(実装)している状態で、グローバルでもこのオペレーターで動いても、こっちではダメとなるため、結局はカスタマイズが必要になってきます。実はQualcommさんのチップも、ドコモモード、auモード、ソフトバンクモードと3つのモードを持っていて、オペレーターごとに別々の仕様で動かしています。

―― なるほど。コスト面でいうと、キャリアの試験なしで投入するという方向性はいかがですか。

吉本氏 基本的にはTELECやJATEを通っていればしょうがないというスタンスですが、やはりオペレーター側は嫌がります。基本的には、試験をしてほしいというスタンスですね。ただ、やはりお金がかかる。

―― 音声通話は携帯電話の基本中の基本だけに、万が一でもトラブルがあると困りますからね。

吉本氏 そうなんです。ですから、チップベンダーも試験をしていないというようなものは、さすがに怖くて使うことができません。

●ZTEの認知度向上に努める

―― MVNOの導入に関しては、今回は楽天モバイル1社だけでした。ここは増やしていくお考えでしょうか。

吉本氏 そこには、一生懸命アプローチしています。アプローチはしていて、いくつかいいお話も来ている状況です。MVNOもいくつかスタンスがあり、きちんと端末で差を出していくところもあれば、売れたものを取り扱うというところもあります。(販売台数を伸ばすには)後者の「売れたら持ってきて」というところにまで広がらないといけません。それまでは、楽天さんのように、端末で差を出していくところにアプローチを続けていきます。

―― 認知度を上げるという意味では、PR活動も重要になってくると思います。

吉本氏 広報とマーケティングが、そこをやっています。最初に改善したのが、まずWebを何とかしましょうというところで、少し見やすくしました。今やっているのが、交通広告で6月ぐらいから、名前を知ってもらう活動をしています。第2弾も7月から、JRの駅でやる予定です。その他、デジタル系の広告を出し、検索したらすぐに出てくるようにしたり、ターゲットマーケティングも始めています。

 あとは、雑誌に記事広告を入れています。テクニカル系だけでなく、一般層、女性層にアピールするために、女性誌にも対象を広げています。これも、7月、8月に出てくると思います。

 認知度の調査をしても、まだ知っている人は少ない。今は、そもそも「ZTEってなんだっけ」というところです。その中で、製品を知ってもらおうと、ヨドバシカメラでタッチ&トライイベントをやらせていただいたりもしました。とにかく、見て、覚えていただかないとと考えています。発表会でもスポーツやエンターテインメントの話をしましたし、hitomiさんにも登場していただきました。あれはワンショットですが、“大使”のようなものも今、検討しているところです。

●取材を終えて:完成度の高い端末をきっちり投入すべき

 コストパフォーマンスの高い端末を作り、一部のユーザーからは評価も高いZTEだが、今はまだ知る人ぞ知る存在。同社が課題だと認識しているように、知名度は早急に向上させていく必要がある。そのためにも、AXON 7のような完成度の高い端末は、きっちり市場に投入にしていく必要がありそうだ。

 シェアを取るという意味では、MVNOとの協力も不可欠になってくる。急成長している楽天モバイルからBlade E01が発売されたのは、ZTEにとってプラスだが、1社だけでは規模が出せない。同様の取り組みをいかに広げていけるかが、今後の行方を決めるカギになりそうだ。

最終更新:7月12日(火)6時25分

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