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女性の指導者のもとで、英国は飛躍してきた

ニュースソクラ 7月12日(火)11時30分配信

次期首相は女性、そしてこの国は孤立にも強い

 BREXITに揺れる英国で、マーガレット・サッチャー首相以来2人目の女性首相が、秋口に誕生する。政権党の保守党党首選の候補が絞られ、残留派だったテリーザ・メイ内相(59)を、離脱派アンドレア・レッドソム・エネルギー担当閣外相(53)が追う展開だ。

 1980年の秋に傍聴した英議会下院の党首討論を、鮮明におぼえている。就任2年目のサッチャー首相は、マイケル・フット労働党党首の政権攻撃をものともせず、時に返り討ちで相手をたじろがせた。

 日も浅い「サッチャー改革」の成果は見えず、ロンドンの目抜き通りにも、空き店舗、空きオフィスの張り紙が目につき、ジョッブセンター(英版ハローワーク)に求職者があふれていた。それでも、「鉄の女」の勇姿を目にし、英国経済は再生するのでは、と直感的に思った。実際、彼女は「英国病」を死語にし、「金融ビッグバン」でシティー繁栄の基礎も築いた。

 歴史を紐解けば、英国は女性リーダーを頂いた時に飛躍している。16世紀の終盤、時の覇権国スペインの無敵艦隊(アルマダ)を負かして、海洋帝国へと踏み出したのは、エリザベス1世の時だ。

 19世紀の3分の2近くを統治したヴィクトリア女王の下で、インド亜大陸を植民地化(女王は初代インド女帝を兼ねた)し、大英帝国は最盛期を迎えている。19世紀後半の英国は、列強のどことも同盟関係を待たず「名誉ある孤立」と評された。

 やはり歴史を紐解けば、英国は「孤立」に強かった。ナポレオンは「大陸封鎖令」で欧州の同盟国に、産業革命で先行する英国との通商を禁じた。英経済は大打撃を受けたが、英国商品が入らなくなった大陸諸国で不満が高まり、離反国が相次いで結局、ナポレオンは英国のウエリントン将軍の軍門に下る。

 第2次大戦でも、初期にドイツ軍の電撃戦で追い詰められた欧州大陸の英軍は、ダンケルクから英本土に撤退。フランスは降伏、孤立した英国は連日のドイツ空軍の爆撃を受け、空中戦(バトル・オブ・ブリテン)でしのいだ。やがて米国や英連邦諸国の支援を受け、ノルマンジーに逆上陸し、欧州をナチス・ドイツの支配から“解放”した。

 EUとの離脱交渉を担う次期首相も「孤立の危機」の克服を託される。彼女にとり国民投票で生じた亀裂、とりわけ残留支持のエリート層と、離脱を望んだ勤労大衆との亀裂の修復は難題だろう。4半世紀余り前、サッチャー首相が敷いた路線の帰結とも言える。

 「お金持ちを貧乏にしても、貧乏な人がお金持ちになれるわけではありません」と言ったサッチャーは、所得税の平準化、国有企業の民営化、規制緩和など「強者への賭け」(別名、新自由主義)と言える手法をとった。また、英国経済を開放し「貸し座敷」型の繁栄に道を開く一方で、ユーロの原型ともいえるEMS(欧州通貨制度)への参加を拒み、ポンドを守った。 

 2代目女性首相は、初代のレガシーと向き合い、何を守り何を変えるか、格闘する宿命を負いそうだ。

■土谷 英夫(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1948年和歌山市生まれ。上智大学経済学部卒業。日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。

最終更新:7月12日(火)11時30分

ニュースソクラ

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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