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アップルが「フツーの会社化」 バフェット氏の投資は吉と出るか

ZUU online 7月13日(水)6時10分配信

アップルの4~6月期(2016年度第3四半期)の業績と、7~9月期の予想発表が、7月26日に迫ってきた。だが、最近のアップルは業績が冴えず、競合の追随を許さないイノベーターとしてのイメージも色褪せてきた。

象徴的なのは、アップルの将来性について論評する『ビジネス・インサイダー』や、『Benzinga』などの米金融メディアの最近の記事が、液晶ディスプレイに無数のヒビが入った哀れな姿のiPhoneの写真を使っていることだ。「もう創業者スティーブ・ジョブズの時代のような神通力は失われた」「アップルの未来は暗い」と、写真に語らせている。

■バフェット氏によるアップル「買い」は正しかったか

その一方で、1~3月期には、米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイが、981万ものアップル株を10億7000万ドルで取得していた。カール・アイカーン、デイビッド・アインホーン、レイ・ダリオ、デビッド・テッパーなど著名な投資家率いるファンドが、軒並みアップル株の全株売却を発表するなかでの、逆張りの決断だった。

アップル株上昇に賭けるロングのポジションをバークシャー・ハザウェイでとったのは、10億ドル級の投資権限を与えられているポートフォリオ・マネジャーのトッド・コームズ氏で、バフェット氏はその提議を承認したと見られる。

その後、アップル株は95ドル前後で低迷を続けているが、4~6月期に予想以上のパフォーマンスを見せて、バフェット氏をにんまりさせるのか。それとも、冴えない業績でより多くの投資家から見放されてしまうのか。

■叩かれるアップル 踏んだり蹴ったりの状況が続く

アップルは今、叩かれている。「米シティグループが、英国のEU離脱でアップルの業績のさらなる悪化を予想し、それを受けて株価は1%以上の下げ(7月5日)」「米ゴールドマン・サックス証券は、株価のターゲットを136ドルから124ドルに引き下げ(6月2日)」「米パシフィック・クレスト証券は、アップルの4~6月期における一株当たり収益が前年同期比で25%下落すると予想し、株価ターゲットを123ドルから121ドルに引き下げ(7月11日)」などは、序の口だ。

さらに、「所有する特許を製品化してもいないのに、特許侵害で巨額の賠償金やライセンス料を得ようとする『パテント・トロール』のネットワーク1・テクノロジーズが、ファイルシステム表示の特許侵害でアップルを訴え、アップルは2500万ドルの支払いで合意(7月9日)」「ティム・クック最高経営責任者(CEO)が中国訪問で10億ドルの投資を発表した直後、北京の特許裁判所がアップル製品を模倣した中国産と見分けつかないとして、iPhone 6と6 Plusに販売停止命令(6月17日)」など、踏んだり蹴ったりだ。

最も懸念されるのが、イノベーション力や製品の魅力を失いつつある企業文化の衰退や、市場の成熟化だ。アップルの売上の65%を占めるiPhoneのような高価格帯スマホはすでに世界中で浸透し切っており、市場の縮小は近い。新機能もワクワク感に欠け、iPhoneの買い替えサイクルは3年前の24か月から今年は28か月に伸び、いずれは36か月になると予想される。これらが、今年に入って、過去13年間で初めてアップルの四半期売上が下落した原因だ。

今年夏から9月の発売が見込まれるiPhone 7も改良点はほとんどなく、薄型化のため、おなじみのイヤホンジャックが廃止されるとされる。ただがイヤホンジャック、されどイヤホンジャック。ユーザーから、怨嗟の声が上がる可能性もある。消費者とアップルの開発陣の求めるもののベクトルは乖離を始めている。

映像ストリーミングのアップルTVや、スマートウォッチのアップルウォッチも、失敗に終わったと評される。経営陣、特にクックCEOの手腕に疑いの目が向き始めた。バフェット氏は、それでもアップルのロングを保持するのだろうか。

■腐ってもアップル 「ポケモンGO」も追い風のひとつに

だが、それでも、「腐ってもアップル」である。iPhone 7では、ライバルである韓国サムスン電子製のスマホのように、解像度や消費電力に優れる有機ELが採用されるという。また、高価格帯だけでなく、中価格帯にもアップルは進出を始めた。インドや中国などで期待できるセグメントだ。

数か月後にリリースされる次世代のiPhoneのOSであるiOS 10では、iMessageにLINEばりのド派手な有料スタンプが導入される。LINEのマネだろうが何だろうが、成功確実なモデルで儲けるという方向に、アップルは舵を切った。

リリース後数日で米国において驚異的な流行を見せているアプリの「ポケモンGO」も、アップルの収益には追い風だ。アナリストの分析によると、アプリ内課金で得られた売り上げの30%がアップルに入るからだ。

アップルはクックCEOの下、業界を牽引するイノベーターから、競合のマネをしてでも儲けを取りに行く、「フツーの会社」へと変身を遂げつつある。だが、考えてみれば「投資の神様」であるバフェット氏が好むのは、適度にイノベーティブで、着実に長期的な収益を上げる投資先だ。

尖った高度成長の経営から、安定収益の確保へと歩むアップル。株価低迷の今こそ、バフェット氏は仕込んでおきたいのかも知れない。(在米ジャーナリスト 岩田太郎)

最終更新:7月13日(水)6時10分

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