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『ストV』で活躍するレッドブルアスリート“ボンちゃん”インタビュー! ストイックに取り組むその志を紐解く【EVO2016】

ファミ通.com 7月13日(水)12時2分配信

文・取材:編集部 豊泉三兄弟(次男)

●レッドブルアスリートのボンちゃんに密着
 2016年7月15日~17日(現地時間)にアメリカのラスベガスにて開催される世界最大規模の格闘ゲーム大会“EVO2016”。ファミ通.comでは、格ゲー好き編集者の豊泉三兄弟(次男)が、EVO2016に参戦するレッドブルアスリートのボンちゃん選手の密着取材を行う予定だ。本稿では、渡米前のボンちゃんにインタビューを敢行。アマチュア時代からプロ契約、そしてEVO2016への意気込みまでをじっくりと語っていただいた。

豊泉 ボンちゃんが格闘ゲームを本格的にプレイし始めたのはいつころからですか?

ボンちゃん いまのように、技の性能をフレーム(※)単位で調べるようになったのは『ストリートファイターIV』(以下、『ストIV』)からですね。でも、それ以前にもゲームセンターにはよく行っていたので、格闘ゲームをやり込み始めたのは、それこそ小学生くらいからです。始めてコンボをしっかり練習するようになったのが、『ザ・キング・オブ・ファイターズ97’』(以下、『KOF97』)や『マーブルVS.ストリートファイター』の時期なので、小学校4年生くらいです。


※フレーム=約60分の1秒。ゲーム内の時間を表す単位。
例「攻撃の発生が3フレーム」と言った場合は、技の“攻撃判定”が発生するまでに、3フレームかかるという意味。技の性能を数値で表す際によく用いられる。


豊泉 ボンちゃんくらいの世代だと、格闘ゲームを始めたきっかけが『KOF』という人がけっこういますよね。なぜでしょう?

ボンちゃん 限られたお小遣いの中で遊んでいる当時の人間からすると、『KOF』って3キャラクターも使えてお得だったんですよ。キャラクターもカッコよかったし、コンボも複雑ではなかったので、遊びやすかったんです。その中でも『KOF』は『KOF2000』をとくにやり込んで、初めてゲームの大会に出たのが翌年の『KOF2001』でした。強い人たちが集まっている地元の仲間の中ではけっこう勝てていたので、いけるんじゃないかなと思ったんですけど、その大会を優勝した人に準決勝くらいで負けてしまって。完全に井の中の蛙だったんですけど、それでもゲームは楽しく遊んでいました。

豊泉 そこから『ストIV』まではまだ時間に開きがありますよね。その間は何を?

ボンちゃん 『KOF』のあとは、『ギルティギア』をプレイしていました。当時は池袋のレベルが高いという話を耳にして、「実際にその場所に行って本当に強い全国レベルの実力を知る」なんてことをやっていたのは、そのころになってからでした。仕事帰りによく行くようになったんですが、当時の池袋GIGOはメチャメチャ人が多くて、プレイヤーのレベルも、そのキャラクターで全国1位と呼ばれているような人たちがいっぱいいたので、「こんなに強い相手がいるなんて最高のゲーセンだな」と思いながら通っていました。それから、池袋サファリ(※)でまったく勝てないファウストがいて、メチャクチャ強いと思っていた相手が、いま思い返すとネモ(※)だったんじゃないかっていう(笑)。池袋以外には新宿にも行ったんですけど、初めて行った新宿モア(※)では、素朴な女の子にボコボコにされて、「なんだこのゲーセンは!?」という体験もしました(笑)。


※ネモ:先日Alienwareとプロ契約を結んだ社会人プレイヤー。かつて『ギルティギア』で最強と目され、現在は『ストV』を中心にプレイする。

※新宿モア:新宿東口のモア通りにあったゲームセンター。1プレイ50円で、2D格闘ゲームのメッカとして全国から猛者が集まっていた。

※池袋サファリ:池袋東口のパチンコ店の上にあるゲームセンター。1プレイ50円で、当時の池袋でもっとも2D格闘ゲームが盛り上がっていたお店のひとつ。


豊泉 新宿モアは僕も通っていましたよ。おもに『カプエス2』をプレイしに行ってたんですけど、どのゲームも全国レベルのプレイヤーが集まるヤバいゲーセンでしたね(笑)。

ボンちゃん 『カプエス2』はみんなが口をそろえておもしろかったって言うくらい、当時の盛り上がりを聞くので、俺もやっておきたかったって思いますね。

豊泉 当時の『カプエス2』の盛り上がりは『ストIV』に通じるところがありましたよ。『ストZERO』、『ストIII』、『KOF』など、いろんなゲームのプレイヤーが参戦していましたから。

ボンちゃん 『ストIV』も各ゲームのトッププレイヤーがやってましたよね。当時はあまりほかのゲームのプレイヤーのことを知らなかったんですけど、『ギルティギア』のプレイヤーだけは知っていたので「やべえ、あの人も、あの人もやってる!」という感じで、『ストIV』はすごいゲームだなあと(笑)。

豊泉 ボンちゃんにもそんな時代があったんですね(笑)。いったん話を戻して、『ギルティギア』のあとに『ストIV』を始めたんですか?

ボンちゃん じつは『ストIII』を少しプレイしていたんですよ。それで、そのころいっしょに働いていたウメ(※)さんが、『ストIV』をきっかけに格闘ゲームに戻ってくると聞いたので、これは俺もやらない手はないなと思いました。


※日本人初のプロ格闘ゲーマー。現在はボンちゃんと同じくレッドブルアスリートとして活躍する。

豊泉 そこからは『ストIV』一本に?

ボンちゃん 『ストIV』の大きい専用筐体に慣れると、目線が合わなくて通常筐体のゲームがやりにくくなってしまったんですよ。それもあって『ストIV』に集中することに。当時は池袋サファリというゲームセンターが1プレイ50円だったので、そこでやっていたんですが、当然強い人もみんな安いところに集まってくるので、最初はぜんぜん勝てませんでした。当時は後に有名になるプレイヤーたちと、お互いに始めたてで弱いながらもバチバチ対戦していましたね。

豊泉 当時の池袋サファリは“魔境”かってくらいすごい人たちが集まっていましたよね。

ボンちゃん ヤバかったですね。本当にガチでやり込んでいる人じゃないと、まともにできませんでしたから。俺も最初はまるで勝てないから、うまくなるまでは強い人が少ない1プレイ100円のゲーセンでコソ練している時期もありました。

豊泉 そうでもしないと無理でしたよね。

ボンちゃん 池袋サファリは狭いんですけど、満員電車のように人が集まっていたから、冬場でも半袖にならないと汗だくになることもありました(笑)。その後、高田馬場ビッグボックスが1プレイ50円になったので、そっちのほうが広いからとみんなで移動したんですよ。それからいまの新宿南口タイトーステーションに。

豊泉 なるほど。そんな歴史があったんですね。『ストIV』のころからウメハラさんに教わっていたんでしょうか?

ボンちゃん いや、そんなに教わることはなかったですよ。『ストIV』を始めて1年くらいはフレームのこともぜんぜん勉強していなくて、「この技をガードさせたら多分こっちが有利」とか、「この技は発生が早いからこれを出しておけばオッケー」みたいなすごくアバウトな考えかたで、なんかもう我流でしたね。

豊泉 本当に何も教えてもらわなかったんですね。

ボンちゃん ウメさんには、疑問に思ったことを訊いて答えてもらうということは時々ありましたけど、「ここはこうやった方がいいよ」というアドバイスはなかったですね。闘劇(※)でチームを組んだときに初めてあったくらい。


※闘劇:エンターブレイン(当時)が主催する全国規模の大会。


豊泉 そのくらいだったんですねえ。

ボンちゃん ウメさんとチームを組んだときに、「なんでここはこうやらないの?」とか言われて、「あぁん? なんだお前は?」みたいなこともありましたけど(笑)。

豊泉 (笑)。

ボンちゃん ウメさんとチームを組んだのは『ストIV』が出て2年くらい経ってからですよ。だから、1年目の俺は池袋サファリでやっているただの猛者くらいのものでしたし、何をきっかけに勝てるようになったかはあまり覚えていません(笑)。使っていたキャラクター(サガット)があり得ないくらい強かったので、ある程度ゲームを理解すれば自然と勝てましたね。

豊泉 自己流でゲームを続けて実力をつけていった感じですか?

ボンちゃん サガットが強かったのと、強い人がまわりにいたので環境もよかったんだと思います。たとえば、最初はヴァイパーが苦手だったんですけど、同じキャラを使っていたマゴ(※)のプレイを見て参考にしていました。そういうことをしていたので、自分が困ったときに、お手本がいたらそれを見ていいところを取り入れるという考えかたはいまでも持っています。人のプレイを見る大切さはそこで学んだ気がします。

※マゴ:元Mad Catz所属のプロゲーマー。

●プロになっても“志”は変わらず
豊泉 『ストIV』シリーズで活躍して、2015年9月ころからレッドブルアスリートの一員となりました。オファーが来たときの心境はいかがでしたか? プロゲーマーになってから意識の面など、変わったところはありますか?

ボンちゃん “プロゲーマーのボンちゃん”という肩書きができてしまったので、こういったインタビューのときにふざけたことは言えないですよね。そういったミスはしないように気をつけています(笑)。でも、アマチュアのころから、「プロになったらこう動こう」というイメージしながらずっと実践していたので、そういう志を持ってからと現在とでは、そんなに考えかたは変わっていないですよ。

豊泉 具体的には、どんな志や考えかたを持っているんですか?

ボンちゃん 自分の見た目に気を遣うというのはありますし、ゲームプレイとしては「自分を応援してくれてる人たちが納得してくれることをしよう」と意識しています。コアなファンの方々に支持してもらえているのは、プレイ内容によるところが大きいと思うので、“自分流”というか、自分なりのキャラの確立というものはつねに心がけるようにしています。コアなファンの方々に支持してもらえるように活動していれば、結果的にはそれが自分にとっていちばん得になるんだろうなと思っています。

豊泉 そういった考えはスポンサーのレッドブルさんとも共有しているものなのですか?

ボンちゃん レッドブルの人たちは、「ボンちゃんがそうやるんだったらそれが正解だと思うし、全力でサポートします」といった感じで、自由にさせてくれるというか、もうこちらに託してくれていますね。言い換えると、100%信頼してもらっています。

豊泉 スポンサーからそういった理解が得られるのは素晴らしいですね。

ボンちゃん レッドブルは格闘ゲームシーンのことも考えてくれているし、自分の考えかたもかなり理解してくれているので、俺もレッドブルを信頼しています。そもそもレッドブルの方は、プロになる前から俺のことに詳しかったんですよ(笑)。これだけ俺の人となりを見てくれていて、そのうえでこうやって話を持ちかけてきてくれているので、いっしょにやりたいと思えました。そういうレッドブルの姿勢に報いたいという気持ちから、プロになった当初は早く結果が欲しいと思っていました。ふだんは「大会で勝とうが負けようが、自分が試合内容に納得できていればいい」くらいの感覚だったんですけど。でも、運よくプロになってすぐに結果を出すことができたので、ラッキーっと(笑)。

豊泉 レッドブルアスリートというと、さまざまな分野のスポーツ選手がいらっしゃいますが、交流などは行っているのでしょうか?

ボンちゃん レッドブルアスリートといって、いろいろなスポーツ選手と同じ扱いで言われるのはプレッシャーでもあるんですけどね。日本のレッドブルアスリートの人たちとは面識があって、お互いの競技の話をするんですけど、それがすごくおもしろいですよ。

豊泉 どんなところがおもしろいんですか?

ボンちゃん サーフィンだったり、フリースタイルフットボールというサッカーのリフティングみたいな競技だったり、自分のぜんぜん知らない世界じゃないですか。そういう競技の話を聞いていくと、いま挙げたものはみんな審査員がいる競技なんですよ。自分の方がいいパフォーマンスができているのに、審査で負けてしまう可能性があるんです。もっとすごいのはサーフィンで、制限時間内に波が来る回数が少ない可能性もある、という話を聞き、自分の手で白黒つけられる格闘ゲームというのは、じつはすごく恵まれている世界なんじゃないかと。

豊泉 自分ではどうにもならない部分がある競技は、また違った難しさがあるんですね。

ボンちゃん あとは、そういったスポーツ選手と同じようにアスリートなんて呼ばれるじゃないですか。だから、それまでは筋トレをサボることがあったんですけど、アスリートと言われるようになってからは、「欠かさずやらないといけないな」という意識が芽生えました。

豊泉 筋トレ自体はプロになる前からやっていたんですか?

ボンちゃん 元々は、海外の大会に参加していると眠くなってしまうことがきっかけで始めました。時差ボケももちろん原因のひとつではあるんですけど、でもほかのプロ選手はその中で元気よくゲームしていたんですよ。眠くなるのは体力のなさからきているので、海外の大会で勝つために体力をつけなきゃと。

豊泉 以前のイメージからすると、体重もずいぶん落とされましたよね(笑)

ボンちゃん そうですね。痩せてからもう2年くらい経つんですけど、25キロくらい減量しました。ただ、最初はダメな痩せかたをしていたんですよ。食べなければドンドン体重が落ちるから、「もういくらでも痩せられるわー」と思っていたら、20キロを超えたくらいでメチャメチャ体調を崩して動けなくなっちゃって……それをきっかけに無理なダイエットは止めて、体を動かして筋肉をつけることを重視しました。筋肉をつけると代謝が上がるので、それが本当に大事だなと、今回のダイエットで実感しました。筋肉がなかったころは食べたら食べたぶんだけ太っていたんですけど、いまは飲み食いしても体重が増えないこともあるので、筋肉の大切さを実感しています。

豊泉 痩せたことも含めて、見た目に気を遣うように?

ボンチャン 昔は服装なんてまったく気にしていなかったんですけど、Web番組に出るようになってからは、「人様の前に出るわけですから、ある程度の清潔感を持った格好をしなきゃダメだな」と。それに、ゲームをやっている人ってインドアなイメージが強いじゃないですか。それこそ俺なんて、「ふだんどんな練習をしているんですか?」と聞かれたら、「部屋にこもって何時間もゲームやっています」みたいなわけですよ(笑)。外に出て運動しないから不健康だというイメージを持たれがちなので、そのイメージを払するためにも、アウトドア派、みたいな見た目にしようとは思っています。ほかのプロゲーマーで、配信に出ている人はみんな気を遣っているんじゃないかな。

豊泉 レッドブルアスリートにウメハラさんが加わりましたが、それによってお互いの関係に変化はありましたか?

ボンチャン まったく変わらないですね(笑)。でも今後レッドブルのイベントにふたりで行くようになるんだったら、それはおもしろそうだって思いますね。それこそ来年もおそらく開催されるレッドブルのチャリティーマラソンで、ヤツも参加させて「走れこの野郎! 歩いてんじゃねえ!」と、走らせようと思います。ぜひカメラの前でやりたいですね(笑)。

●『ストV』のメインキャラクターはナッシュ!?
豊泉 ここからは『ストV』についての話を聞かせてください。長くプレイを続けてきた『ストIV』から、『ストV』へとゲームが変わったことで、違和感のようなものはありましたか?

ボンちゃん 『ストV』は『ストIV』からゲーム内容を引き継いでる部分が多いけど、根本的にはまったく違うゲームなんですよ。ただ、『ストIV』で得た経験が活きる部分も多いから、その経験値を引き継いだままプレイしてもある程度勝ててしまうんです。それで勘違いしてしまって、根本的に違うゲームだということに気づくまでに時間がかかってしまいました。

豊泉 根本的に違う部分とはどんなところですか?

ボンちゃん 俺の中で『ストIV』は守りのゲームなんですよ。サガットが守れるキャラだったこともあって、10回戦ったら9回は勝てるような、安定した勝利を目指せるゲーム。でも、それは『ストV』だと通用しないんです。『ストV』は攻めが強くて安定しないので、『ストIV』だったら9:1をつけられるような相手でも、6:4くらいになってしまうこともある。でも6:4で勝ってることをよしとしなきゃいけないゲームなんです。「安定させよう」と思うほど絶対に勝てないのが、『ストV』。いままで攻めのゲームをあまりやってこなかったので、そこを難しく感じています。

豊泉 最初の使用キャラにリュウを選んだのも、サガットに似た性能だったからですか?

ボンちゃん 発売から間もなく開催されるRed Bull Kumiteで、優勝を狙えるレベルに仕上げたかったというのが大きいですね。そうなると飛び道具(波動拳)と無敵技(昇竜拳)を持っていて、『ストIV』の経験をいちばん活かせるし、今回のリュウが絶対に強いのは最初からわかっていましたから。

豊泉 世界レベルにまで仕上げていたリュウから、ナッシュに使用キャラクターを変えた理由はどういったところにあるのでしょうか?

ボンちゃん リュウは使っているプレイヤーが多いというのが理由です。現状、ときど(※)が日本でいちばん成績を残していて、ウメさんはいままでずっとリュウを使ってるからしっくりきている。彼らといっしょにプレイすることが多いので、攻略を共有するんですけど、そうするとどうしても動きが似ちゃうんですよ。そんな中で、全員が違うスタイルで全員がトップになれるかっていうと、それは無理なんじゃないかなと。そもそもリュウは結果が欲しくて使っていた部分が大きいので、自分が納得して使えるキャラがいるなら、そっちを使うほうが自然だと思ったんです。


※ときど:元Mad Catz所属のプロゲーマー。


豊泉 ではなぜナッシュを選んだのでしょう?

ボンちゃん ナッシュは元々、ぜんぜん魅力的に思っていなくて、「こんなの誰が使っても変わらないだろ」くらいに見ていたんですけど、実際に触ってみたら、これはなかなか手応えのある難しいキャラクターだと気づいたんです。さきほど『ストV』は攻めが強いとか、安定しないと言いましたが、ナッシュはその中では守ってもいい局面が多いキャラクターなんです。安定志向を持っても許されるというか。相手の攻めをさばいて勝てるんだったら、それは俺にとっての理想形になるんじゃないかなと。実際にいまそれがしっくりきていて、このスタイルでも勝てるかも、と感じ始めているところです。

豊泉 サガットに近い戦いかたができるということですか?

ボンちゃん 似ている部分はありますね。ナッシュを使っていると、サガットみたいって言われることがありますから。やってることが『ストIV』と変わっていないという意味にも受け取れちゃうので、「んなことねーよ」て言っちゃいますけど(笑)

豊泉 ナッシュは無敵技を持っていないなど、リュウとはまったく違う性能ですが、違和感はありませんでしたか?

ボンちゃん 昇竜拳もなければ、“3フレームの技”(※)もないので、これまでならとりあえず立ち弱パンチを押していればOKだった局面で、ガードやバックステップをしなければならなくなるので、最初はそこに対応するのがたいへんでした。あとは、いままで通常技対空(※)や空対空(※)を使い分けるキャラクターを使ってこなかったので、そこですね。極論ですけど、『ストV』は相手のジャンプ攻撃をガードしたら、負けみたいなものなんですけど、それを頭ではわかっているのに、手が動かずにガードすることがすごく多くて、やきもきしていました。


※3フレームの技:攻撃の発生が3フレームの技。『ストV』の通常技でいちばん発生までの時間が早い。
※通常技対空:通常技で相手のジャンプ攻撃を迎撃すること。ジャンプ攻撃を迎撃することを“対空”という。また、対空に使う技を“対空技”という。
※空対空:空中攻撃で相手のジャンプ攻撃を迎撃すること。


豊泉 無敵の対空技を持っていないキャラクターは、相手の技によって対空技を変える必要があったり、空対空にいたっては昇竜拳で迎撃する以上に早い判断が必要になりますもんね。

ボンちゃん だから最初のうちは、「まずはここだ!」という感じで、空対空の練習をひたすらやっていました。ガードするくらいなら食らったほうがマシという気持ちで、とにかくボタンを押して。

豊泉 あとは、軌道が変化するジャンプ攻撃にも弱いですよね。

ボンちゃん そうなんですよ。相手のジャンプ攻撃を落とすという当たり前のことをしているのに、軌道変化にやられて大ダメージを受けてしまうのとかアホらしくなりますよ(笑)。以前は、軌道が変化する攻撃に対して、なんでその通常技で落とそうとするのかなって思っていましたけど、いまはついボタンを押してしまう気持ちがわかりました(笑)。

豊泉 無敵の対空技を持っていないキャラクターは、対空技を使い分けたり、ジャンプの下をくぐったりと、そういったところで技量が試されますよね。

ボンちゃん 相手の攻めをさばくキャラクターは、プレイヤーに求められるものが多いので、そういった意味ではものすごくやりがいを感じています。

●2016年は修行の年
豊泉 アメリカのラスベガスで開催される世界最大の格闘ゲーム大会“EVOLUTION”(以下、EVO)の開催が近づいていますが、心境はいかがですか?

ボンちゃん うーん、EVOは世界でいちばん大きい大会なので、みんな結果に一喜一憂していますけど、あの2試合先取ルールでの大会は運の要素が大きいと思っているので、俺はそこまで重要視はしていないんですよ。それこそトップ8に残れるような実力の人間は3~40人はいると思っていますし。淡白な言い方になっちゃいますけど、その中で勝つのは運の要素が大きいのかなと。

豊泉 本当に強い奴を決めるには試合数が少なすぎると?

ボンちゃん そうですね。個人的には、ふだんの練習もトーナメントでの勝ちかたというのはそんなに意識していなくて、「長期のリーグ戦で勝てるように」という姿勢で取り組んでいます。その練習の結果、トーナメントでも優勝しているというだけなんです。2015年はレッドブルアスリートになってから立て続けに結果を出せたんですが、そのときにまわりの人から「ボンちゃん仕上がってるな」と言われましたが、「それはただ単に運がよかった」くらいにしか思っていなくて、勝ってよかったかなーくらいの感覚でした。

豊泉 トーナメントよりは長期のリーグ戦で勝つことを重視しているんですね。

ボンちゃん トーナメントに参加するにあたって、「この人には絶対に負けない」と、特定の選手の対策を練って挑むことはあります。実際に2015年は年初めからずーっとももち(※)対策をしていたんですけど、大会であたったのは秋ですよ。トーナメントではどれだけ練習していてもその成果を出せないことのほうが多いので、対戦相手が決まっているリーグ戦のほうが好きですね。絶対に無理な話なんですけど、「願わくば全部の大会がリーグ戦になればいいのに」と思うことはあります(笑)。


※ももち:EG所属のプロゲーマー。カプコンカップ2014、EVO2015で優勝するなど、2014年から2015年にかけて目覚ましい活躍を見せた。


豊泉 EVOはそんなトーナメント戦になりますが、あえて自信のほどを聞くなら、どのくらいありますか?

ボンちゃん 現状では優勝を望めるほどの力はないと思っています。もちろん、運がよくていいところまで勝ち進む可能性はあります。でも、いま自分が理想としている動きですら、決して最高レベルではないので、万全に動けたとしてもまだ勝てるとは限らないんです。だから、いまはまだ結果は求められないですね。結果よりも自分が納得できる戦いができるかのほうが重要だと思っています。終わってみて、「変な負け方をしちゃったな」という試合が減らせれば、自分にとって実りのある大会になるんじゃないかなと。今年一年は勉強という姿勢でプロツアーに挑んでいるので、EVOでもひとつ勉強できればという感覚ですね。いろいろなプレイヤーが集まるので、そこでふだん会えないような海外のプレイヤーと交流したり対戦できるのもEVOのすごくいいところだと思っています。

豊泉 ほかのプレイヤーとの交流も大きな目的のひとつなんですね。

ボンちゃん 『ストIV』のときはあまり重要視していなかったんですけど、いまはどんな対戦もありがたいですね。同じキャラクターでも動きが根本的に違うってことが多くて、日本では体験できないような対戦を楽しみにしています。

豊泉 ナッシュ使いといえば、韓国のINFILTRATION選手(以下、インフィル※)が有名ですけど、彼を参考にすることも多いのでしょうか?


※インフィル:韓国のプロゲーマー。カプコンプロツアーのプレミア大会で連続優勝するなど、『ストV』世界最強クラスのプレイヤー。


ボンちゃん 動画はメチャメチャ見ていますよ。ずっと見ています。ただ、インフィルのナッシュはすごく強いんですけど、あれはナッシュを使いこなしているというより、インフィルというプレイヤー自体が強いだけな気がしています。まだ自分が勝てているわけではないので大きなことは言えませんが、彼は引き出しの多さと思考の切り替えの早さが強みで、それをナッシュを使って実践しているというだけで、あれがナッシュの完成形だとは思っていません。ナッシュとしての動きを見るのであれば、日本の“ゆかどん”(※)くんに注目してます。


※ゆかどん:国内最強クラスのナッシュ使い。6月に国内で行われたカプコンプロツアーのランキング戦では、多くのプロゲーマーを抑えて2位に食い込んだ。


豊泉 使用キャラクターを変更したばかりですし、一日の練習量も増やしているのでしょうか?

ボンちゃん ゲームをプレイするのは8時間くらいですね。『ストIV』のころは10時間くらいやっていることもあったんですが、『ストV』は集中力の切れたプレイの意味がなさすぎるんですよ。『ストIV』だったら確認作業のくり返しという意味で、疲れながらプレイしても得るものはあったんですけど、『ストV』は疲れて何の考えもなしやった“投げ抜け”は、マジで無意味。その場は勝てるかもしれないけど、それを大会でやってしまったら絶対に負けますよ。だから、集中を切らさずに、いかに疲れないで長時間練習するかというのが、いま大事にしている部分です。それに加えて、動画を2時間くらい見て研究しています。理想を言うなら、4時間ゲームして2時間身体を動かすトレーニング、それからまた4時間ゲームをして、最後の2時間で動画を見るというサイクルですね。

豊泉 練習相手のときどさんらが海外の大会に行ってしまっているときは、どうされているのしょう?

ボンちゃん そのときは、レベルの高いプレイヤーが集まっている“平和島”に行っています。ひとりでプレイしていると客観視できないので、自分の練習が間違った道を進んでいるかがわかりにくいんです。だから、できるだけいろんな人と練習するようにしています。

豊泉 現在、ボンちゃんは大会参加よりも練習を重視されているようですが、その間にときどさんが結果を出しています。それに対して焦りのようなものはないのでしょうか?

ボンちゃん 正直焦っている時期はありましたけど、いまは開き直っているというか、焦りはなくて楽な気持ちですね。やっぱり、大会でふだんの練習以上のものを出すのは難しいというか、そもそも出す必要がないと思っていて、実力が足りないなら大会なんて勝たなくていいんですよ。それこそ、「実力差があって、自分より格上の相手に大会で勝ってしまっても本当に喜べるの?」と思っちゃうんですよね。だから、今回のEVOは負けてもしょうがない部分があると思っています。それは、やっぱり俺が長期戦寄りの考えかたなんですよね。実力差がしっかり出るルールになってほしいと思いすぎている節はあります。

豊泉 では、トーナメントで勝つためには、どんな練習が必要だと考えていますか?

ボンちゃん そこが難しくて、「トーナメントで勝つようにするってどんな努力すんの?」 という話なんですよね。「まんべんなくキャラ対策? そんなんで本当にいい動きできるの?」と。もちろん、基礎知識が足りていないいまは、まんべんなくキャラ対策はやっています。でも、自分の相性の悪いキャラクターの対策をするなんて当たり前の話じゃないですか。そんなのもう基本の部分だから、それをある程度高いラインで全部兼ね備えたときに、それ以外のものがあるかと聞かれたら、「ないでしょ」と答えるしかないと思うんです。だから俺は、やれることをやるだけです。

豊泉 実際にトーナメントにはどんな心境で挑んでいるのでしょうか?

ボンちゃん 別にトーナメントを勝とうと思っていなくても、ちゃんと実力さえ伴っていれば結果はついてくるんですよ。だから、カプコンカップの優勝賞金が1500万で、まわりのみんなが超勝ちたいと思ってる中、俺は気楽に構えていましたよ。なぜかというと、去年は最後の大会を除いたところで目標の賞金額を設定していて、「これを達成できればいいや」くらいの感覚でやっていたので。

豊泉 すでに目標の賞金額を達成していたから気楽に挑めたんですね。

ボンちゃん 実際に試合が始まるまでは超気楽だったんですけど……まあ、あれだけ賞金が高いと体は嘘をつかないというか、対戦席に座った瞬間に緊張して体が火照っちゃって、ブルってました。なんですかね、あれがお金の魔力なんですかね(笑)。

豊泉 精神的には余裕があったのはずなのに身体が緊張していたと……きっとそれが1500万円の魔力ですね(笑)。

ボンちゃん 直前まで気楽に構えられていたんですけどね。いやー驚きました(笑)。

豊泉 今年もそのカプコンカップファイナルの舞台に立つ自信は?

ボンちゃん 結果を求めるほどまだ自分のプレイが完成していないから、「早く仕上げなくちゃ」とは思っています。だた、ときどなんかと比べると、自分は器用ではないので、今年一年に関しては修行だなと。

豊泉 ときどさんの新作ゲームにおけるスタートダッシュは定評がありますよね。

ボンちゃん ときどの器用さは今回同じキャラを使って初めて実感しました。俺はいままで自分で開拓していくということをあまりやっていなかったので、攻略の視野の広さにはかなり驚かされました。俺は起用じゃないから、超スピードで攻略していまだけは勝つというスタイルにはなれないし変えられないので、じっくりやり込んでいこうかなと。それにいまだけ勝とうというスタイルは、自分にとっていいプレイにはならないと思いますし。

豊泉 自分のプラスにならない?

ボンちゃん これはさきほどの「コアなファンの人たちが応援してくれるようなプレイにしたい」とか、「自分なりのキャラを確立したい」というところに直接かかわる部分なんですけど、たとえば、攻め込まれた際にふつうの人だったらバックステップやVトリガーで逃げちゃうような場面で、歯を食いしばってガードでしのぎながら、画面端で耐えている姿というのが、すごいと思われる部分だったり、自分の魅力だと思っているので、そういった自分だけのいいパフォーマンスが出せるところをじっくり探していこうと思っています。だから、目先の勝利にこだわっても仕方ないんですよ。まずは自分なりの答えみたいなものを見つける段階です。

豊泉 なるほど。ボンちゃんのイチファンとして伺いたのですが、2015年末に開催した“ボンちゃんオフ会”をぜひ開催していただきたいなと。そういった、プロと触れ合う機会を楽しみにしているファンも多いと思いますし。

ボンちゃん 去年開催したオフ会が好評だったので、講習会のようなものはぜひやりたいと思っています。でも、まだ自分自身が仕上がっていないから、教える立場なのに負けないように必死にプレイしちゃうじゃないですか、それはさすがに(笑)。だから、やるとしたらカプコンプロツアーがひと段落する10月以降かなと考えています。でも、2016年中には必ず開催するつもりなので、ぜひ楽しみにしていてください。

豊泉 では最後に、これを読んでいる読者とファンの方々へメッセージをお願いします。

ボンちゃん いち早く、頼れるボンちゃんの姿を皆様の前にお見せできるようがんばっていますので、応援よろしくお願いします。

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 ボンちゃんは、先日中国で開催されたカプコンプロツアーのプレミア大会では13位タイと、6月に国内で行われたランキング大会よりも大幅に順位を上げていました。使用キャラクターを変更して以来、猛烈にやり込んでいる成果が出ているようです。ただ、優勝となると、最上位のプレイヤーにもう一歩及ばないようにも見えました。「いまはどんな対戦でもありがたい」、「今年一年は勉強」と話していたボンちゃんは、EVO2016で何を学んで来るのでしょうか? 個人成績だけではなく、そのあたりにも注目したいと思います。(豊泉三兄弟(次男))

最終更新:7月13日(水)12時2分

ファミ通.com

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。