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ため池の太陽光発電は30度の傾斜が効果的、年間の発電量1.3倍に

スマートジャパン 7月13日(水)13時25分配信

 香川県は全国で面積が最も小さい県だが、瀬戸内式の気候で雨が少なく、年間の日射量は多い。農業用の水を確保するために県内には1万5000カ所のため池があり、池の水上で太陽光発電を実施できれば再生可能エネルギーの導入量を増やすのに有効だ。県の農政水産部が「吉原大池」で、2014年11月から1年以上にわたって水上式による太陽光発電の実証実験に取り組んだ。

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 このほどまとまった実験結果によると、年間の発電量は当初の想定を5%上回り、水上式の効果が明らかになった。中でも太陽光パネルの設置角度を30度に傾けた場合に発電量が最大になった。実証実験では水面に浮かべるフロートを市販の3種類で比較できるようにしたほか、1種類のフロートでは太陽光パネルの設置角度を5度、12度、30度に分けて発電量の比較を試みた。

 3種類のフロートのうち1つ目は樹脂製の中空構造で、日本国内で稼働している水上式の太陽光発電設備で最も多く使われているフランスのシエル・テール社の製品である。そのほかの2つは発砲スチロール製だが、1種類は正方形のユニットを浮かべて太陽光パネルを設置する方式、もう1種類は塩化ビニール製のパイプの中に発泡スチロールを充填して軽量化を図っている。

 樹脂製と発泡スチロール製では、フロートの施工方法やフロートの位置を安定させる係留方法に違いがある。採用した樹脂製のフロートは太陽光パネルの設置角度が12度に固定されるため、3種類のフロートすべてでパネルの設置角度を12度に統一して発電量を比較できるようにした。3つ目の発泡スチロールを充填したフロートだけは、5度と30度を加えて3通りの設置角度でも比較する。

 全体では72枚の太陽光パネルを設置して、発電能力は合計で18.36kW(キロワット)である。実験期間中の2014年12月~2015年11月の年間発電量は2万2926kWh(キロワット時)だった。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は14.3%になり、国内の太陽光発電の標準値(13~14%程度)を上回っている。実証実験の前に過去30年間の日射量をもとに試算した発電量と比較しても約5%多かった。

 しかも実験期間中の日射量は過去30年間の平均値の98.3%で少なかった。それでも当初の想定を上回る発電量を得られた理由として、水上に設置した太陽光パネルの冷却効果が大きかったと農政水産部では推測している。太陽光パネルは光を受けて温度が上昇すると発電量が低下する傾向がある。水上では陸上よりもパネルの温度上昇を抑えることができる。

フロートの種類では発電量に差が出なかった

 この実証実験で興味深い結果が得られたのは、フロートの形式と太陽光パネルの設置角度による差である。素材や構造の違う3種類のフロートでは、パネルの設置角度を12度で統一した場合には年間の発電量にほとんど差がつかなかった。発電量が最も多かったのは3つ目の発砲スチロール充填式だが、ほかの2種類と比べて3%の差に過ぎない。

 一方で3つ目のフロートで試した3通りのパネル設置角度による差は大きく出た。傾斜が大きい30度の場合には、傾斜が小さい5度と比べて1.3倍の発電量になっている。陸上では年間の日射量を最大に受けられる南向き20~30度にパネルを設置するのが一般的で、ため池の水上でも同様の結果が得られた。

 月別の発電量を見ると、パネルの設置角度による違いが大きかったのは7月から10月にかけての気温が高い時期だ。特に8月の差が大きく、30度のパネルでは発電量が300kWhだったのに対して5度のパネルでは167kWhにとどまった。実に1.8倍の開きである。

 日照時間が長い6月には発電量の差がほとんどなかったことから、パネルの設置角度による日射量の差ではなくて昼間の温度上昇による影響とみられる。このほかにもパネルの表面の汚れ具合が5度の場合には顕著で、その点も発電量の低下をもたらしたと農政水産部では分析している。

 フロートの形式による発電量の差は7月と8月に少しだけ表れている。3つ目の発泡スチロール充填式の発電量が他の2方式よりも5~15%多くなった。発泡スチロール充填式はパイプを組み立てる構造のため、水面と接する部分が広く空いている。水温でパネルの温度上昇を抑えやすかったと考えられる。

 フロートの形式やパネルの設置角度によって事業費(導入コスト)も違ってくる。農政水産部が算出した事業費を見ると、2つ目の発砲スチロール製が最も安く、3つ目の発砲スチロール充填式が最も高かった。さらにパネルの設置角度を30度に傾ける場合には、隣のパネルに日影ができないように設置間隔を広げる必要があり、フロートの面積も大きくなってコストが増える。

 年間の発電量と事業費の組み合わせで最も効率が良いのは、2つ目の発泡スチロール製のフロートを使って、太陽光パネルを30度に設置した場合だ。この組み合わせは実証実験で検証していないため、あくまでも試算上の比較結果である。ただしコストが安く済む半面、発泡スチロール製のフロートは固定用のボルトが欠落するなどの問題が発生した(図9)。農政水産部では耐久性に不安がある点を指摘している。

最終更新:7月13日(水)13時25分

スマートジャパン