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世界トップ企業DJI抱える中国ドローン事情、アリババのドローン配送の行方

ZUU online 7/13(水) 16:10配信

中国在住の筆者は先日、公園で60歳以上の男性グループがドローンやラジコン機を飛ばして楽しんでいる場面に遭遇した。このような光景は初めて見た。中国の趣味の世界はロマンを欠き、ディ―プな鉄道ファンや航空ファンというのはあまり見かけない。

中高年男性の趣味と言えば、コウロギや鳥の飼育が有名だ。これらは価値を上げて転売可能で、いかにも中国的である。そうした男性たちの趣味・趣向も欧米化してきたようだ。ところでこうした内需動向には関わりなく、中国はすでにドローン生産世界一になっている。生産背景と用途の両面を探ってみよう。

■世界一のドローンメーカー以外は知名度低め

中国には多数のドローンメーカーが存在している。たとえばDJI、Autel Robotics、FLYPRO、Hubsan、MJX、Nine Eagle 、Pro Drone、Symatoys、Walkera 、Yuneecなどだ。その中心は世界ナンバーワンのシェアを誇るDJIだ。他メーカーは圧倒的に輸出が多く、あまり知名度は高くない。最近では大手スマホメーカー小米科技(シャオミ)が参入を発表して話題を呼んだ。

この部門でも中国に新興の世界一企業があった。そのDJIとは「深セン市大疆創科技有限公司」の略称ならびにブランド名である。沿革を見ようと中国のネット辞書に当たってみたが、詳しい記載はなく、謎めいている。

香港科技大学の卒業生たちが2006年、広東省・深センで創業、香港、東京、神戸、ロサンゼルス、ロッテルダムに支店または営業所を持ち、客先は100を超える国と地域、“THE FURTURE OF POSSIBLE”を会社の趣旨としているとある。直近の売上高や従業員数は中国ネットではよく分からない。

日本のネット上では、DJIの世界シェアは7割、輸出7割、売上1200億円(2015年)、従業員3000人、うち半分は技術者だ。企業価値は1兆2000億円と推測されている。

同社の成功は、無人自動空撮システムを確立し世界標準としたことにある。それにより新しい需要の創出に成功した。つまりシャオミのようなモノマネ中国メーカーではない。

そのベストセラー空撮機、「PHANTOM3」は、日本のAmazonは、搭載カメラの違いでスタンダードの7万2000円から最上級4Kの12万9492円まで3機種販売されている。中国の淘宝(タオバオ)網ではスタンダードの販売価格は2999元、売上は1538機となっている。天猫(T-MALL)では同じく2999元、月間売上1887機である。なおここでいう売上とは最も大きな出品者の分のみである。

今春から新型の「PHANTOM4」が発売された。搭載カメラは4Kに絞られ、販売価格は日本18万9000円、中国8999元となっている。

■ドローンユーザー、アリババの実験は失敗?

影響力の強い大企業の動きを見ていこう。

ネット通販を中国に定着させたアリババ集団は、売上高では世界一の流通企業となった。当然Amazonのドローン配送Prime Airを強く意識している。そのアリババは、2015年2月4日、北京でドローン配送実験を行っている。運んだ商品は価格49元の「紅糖姜茶」だった。大手宅配会社「上海圓通」の通州配送センターから飛び立ったドローンYTO-X650は、GPSの誘導に正確に従い、無事目的地の梨園雲景南大街に到着した。所要時間37分だった。

公式発表は以上である。

ところが実際の実験は2月6日まで3日間かけて行われており、うまくいったのはこの1例だけではないかと勘繰られている。さらに同時期、上海と広州でも実施されたはずだが、こちらの報道は何もない。日頃の中国人の面子重視と宣伝上手からして、この控えめな表現は、やはりほぼ全滅を意味していよう。これにこりたのか、以後公開の実験は伝えられていない。

DJIの方では2015年12月、新コンセプト機を投入し、農業用薬品散布ドローンの分野に参入している。いつものになるかわからない宅配業務より、はるかに確実だ。

■ドローン市場の見通しとDJI

5月11日に発表された中国ドローン市場の近未来予測レポートによると、2025年の国内市場規模は750億元。内訳は、空撮および娯楽300億元、農林植保200億元、安全防犯市場150億元、電力巡検50億元、その他50億元となっている。宅配はその他扱いだろうか。

とにかく市場拡大を見据えた周辺環境の整備は急務だ。DJIはトップ企業として、これに積極的に関わっていく姿勢を打ち出している。

■操縦訓練学校の設置と運営・ドローン保険の構築

DJIは北京にある民航管理局認証の無人機操縦員の訓練機構を運営している。また今年6月6日には、新たに「慧飛無人機応用技術培訓中心」の設立を発表した。場所は本拠地の深センで、敷地面積は1万平米を超える。まず農業植保飛行課程と修理課程からスタートし、安全防犯、捜索救助の課程などへ講座を拡大する考えだ。受講料は15日間で6500元である。

DJIでは2015年12月から、国内大手ネット保険各社と協調し、DJIケアという保険サービスを開始した。事故や故障に備え、修理期間に代替機を提供するサービスを付加し、修理に関わる運送費もDJI持ち。業界初の第三者責任保険で、掛け金から保障内容までドローン保険のスタンダード作りを目指している。

DJIは、市場を創出しながら世界一のシェアを獲得した、中国では“まれ”な企業である。中国市場の大きさに依存する他部門の世界一企業とは一味違う。学生起業はアメリカ的、技術者重視は日本的で、あか抜けた現代的な印象だ。業界発展余地の大きさとともに、今後中国で最も注目に値する企業だろう。(高野悠介、現地在住の貿易コンサルタント)

最終更新:7/13(水) 16:10

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