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毛包器官再生で脱毛症を治療、人への臨床応用へ

EE Times Japan 7月13日(水)15時50分配信

脱毛症で悩む人に朗報、2020年実用化目指す

 京セラと理化学研究所、オーガンテクノロジーズは2016年7月12日、再生医療分野である「毛包器官再生による脱毛症の治療」に関して、共同研究を始めると発表した。研究チームは、細胞培養技術や移植技術の確立、細胞加工機器の開発などを行い、早ければ2020年にも実用化を目指す。

【成体マウスへの再生毛包原基移植による毛髪の再生例などの画像】

 脱毛症には、男性型脱毛症や先天性脱毛、女性の休止期脱毛などがある。治療法としては、育毛剤や自家単毛包移植術などが用いられている。しかし、これらの治療法は全ての症例に有効ではないという。こうした中で、注目を集めているのが再生毛包原基による毛包再生治療である。毛包は毛髪を生み出す器官でもあり、今回の研究成果は器官再生医療の先駆けになるとみられている。このため共同研究チームは、毛包再生という実現可能な分野から実績を重ねつつ、将来は他の臓器再生に広げていく考えである。

 理化学研究所の多細胞システム形成研究センター器官誘導研究チーム(辻孝チームリーダー)はこれまで、歯や毛包、分泌腺などにおいて器官再生が機能的に可能であることを実証してきた。ところが、ほとんどの器官形成は胎児期に起こるため、器官再生を行うには胎児組織から幹細胞を採取する必要がある。これに対して毛包は、出生後に再生を繰り返す唯一の器官だという。

 理化学研究所では辻チームリーダーらが開発した「器官原基法」を用い、成体マウスのひげや体毛の毛包器官を使って、毛包原基を再生するという技術を2012年に開発した。この再生毛包原基を、毛がないヌードマウスに移植したところ、再生毛包へと成長し、毛幹(毛)を再生できることを実証した。しかも、周囲組織である立毛筋や神経と接続されるとともに、正常な組織と同様の毛周期を繰り返すなど、機能的な器官を再生できることが分かった。辻氏は、「成体マウスへの新規移植による発毛頻度は74%となった。現在では80%の確率で発毛が確認されている」と語った。

 理化学研究所では、これらの毛包再生技術をマウスに続き、人の脱毛症治療に展開していくため、量産技術などを京セラやオーガンテクノロジーズと共同研究し、実用化に向けた開発を加速することにした。「患者自身の後頭部の皮膚から毛包を100本採取し、3週間ほど培養して100倍に増やす。これを患部に移植すれば1万本が増毛されることになる」(辻氏)。

京セラ、微細加工技術、生産技術で貢献へ

 共同研究において京セラは、これまで培ってきた微細加工技術や生産技術を応用して、細胞加工機器の開発を行う。この結果、従来は手作業で行ってきた再生毛包原基の作製工程を自動化することができ、大量生産が可能になるという。

 京セラの執行役員で研究開発本部長を務める稲垣正祥氏は、「京セラグループの総合技術力を生かして、再生医療の研究開発に着手する。今回の共同研究はその第一弾となる。注目を集める再生医療分野に貢献していきたい」と話す。

2018年まで共同研究し、2020年以降実用化へ

 理化学研究所とオーガンテクノロジーズは、毛包由来幹細胞の培養・増幅技術、人への臨床応用に向けた細胞操作技術の開発、製造工程の確立、モデル動物を用いた前臨床試験などを行っていく。また、事業化に向けて京セラとオーガンテクノロジーズは、医療機関から受け取った少量の毛包から幹細胞を分離し、培養、増幅して再生毛包原基を製造する受託製造会社を立ち上げていく予定だ。

 オーガンテクノロジーズの社長を務める杉村泰宏氏は、「当社は、辻氏の研究成果の知的財産管理と、それを活用した研究開発及び事業化を推進している。京セラを含めた共同研究の体制を整えたことで、器官原基製造の機械化、大量生産が可能となる。再生医療分野が産業として大きく前進することになろう」と述べた。

 共同研究チームは、2018年までに細胞加工装置の開発や受託製造体制を確立し、早ければ2020年にも、毛包器官再生による脱毛症の治療を実用化していく考えである。

最終更新:7月13日(水)15時50分

EE Times Japan

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