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日活ロマンポルノが初の国際映画祭コンペに、塩田明彦の新作「風に濡れた女」

映画ナタリー 7月13日(水)18時30分配信

塩田明彦が初めて挑んだロマンポルノ作品「風に濡れた女」が、スイスで現地時間8月3日より開催の第69回ロカルノ国際映画祭コンペティション部門に正式招待されることが決定した。

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「風に濡れた女」は、日活ロマンポルノの製作開始45周年を記念した「ロマンポルノリブートプロジェクト」の一環として、「どろろ」「黄泉(よみ)がえり」の塩田が監督したもの。ドラマ「重版出来!」の永岡佑と「甘い鞭」の間宮夕貴が主演し、過去から逃げるように山で静かに暮らす男と、生命力と性欲を持て余し野性的な魅力を放つ女の関係を描いている。これまで塩田は「月光の囁き」「どこまでもいこう」が同映画祭に招待された経験を持つが、日活ロマンポルノ作品が国際映画祭のコンペティション部門へ選出されるのは今回が初めてのこととなる。また本作が出品されたのは、グランプリにあたる金豹賞の対象となるメインコンペ部門。受賞発表は現地時間8月13日に行われる。

さらに、同映画祭のHistoire(s) du cinema部門にて、神代辰巳が1973年に監督したロマンポルノの代表作「恋人たちは濡れた」が上映されることも明らかに。これは6月14日に逝去した中川梨絵の主演代表作であり、塩田が「風に濡れた女」でオマージュを捧げている映画でもある。

この発表を受け、塩田は「私の新作がいまこうして由緒あるロカルノ国際映画祭の場で上映されることには、強く心揺さぶられるものがあります。拙作『風に濡れた女』に対するロカルノ国際映画祭からの評価はまた、これまで積み重ねられてきた日活ロマンポルノの歴史そのものへの評価でもあると思われるからです」とコメントを寄せた。

なお「ロマンポルノリブートプロジェクト」には、塩田のほか白石和彌、園子温、中田秀夫、行定勲が参加している。現在すべての作品がクランクアップしており、全5作品は9月に完成予定だ。

※cinemaのeはアクサンテギュ付きが正式表記

塩田明彦 コメント
限られた予算と撮影期間、武器として手にしているのは俳優たちの肉体と存在感のみという状況の中で、いかに私たち人間が生きることのすべてを映画の中で描き出すか、それこそが、かつて日活ロマンポルノに関わるすべての作り手と俳優たちが全力を挙げて取り組んだことの全てであり、そこから多くの傑作・名作が産み落とされたことは、いまや日本映画の常識といってもいいかと思います。しかしその歴史は必ずしも順風満帆だったわけではありません。初期においては映画表現のわいせつ性をめぐって警察権力から度重なる告発を受け、長期に渡る裁判闘争も行われました。いわゆる成人映画というものに対する世間の視線も決して温かいものばかりだったわけではないはずです。だからこそ、私の新作がいまこうして由緒あるロカルノ国際映画祭の場で上映されることには、強く心揺さぶられるものがあります。拙作「風に濡れた女」に対するロカルノ国際映画祭からの評価はまた、これまで積み重ねられてきた日活ロマンポルノの歴史そのものへの評価でもあると思われるからです。その評価のきっかけとして拙作「風に濡れた女」があることをなにより光栄に感じております。今回、「風に濡れた女」と共に、神代辰巳監督の「恋人たちは濡れた」も上映されると聞いたときには心震えました。これは僕が日活ロマンポルノとしても、神代辰巳監督作品としても最も好きな作品のひとつだからです。俳優たちの肉体と、その動きこそが映画に奇跡の一瞬をもたらす、ということをあの映画は僕に教えてくれました。一度観たら決して忘れることの出来ない映画であり、日活ロマンポルノの驚くべきクオリティの高さを世界映画界に対して証明するためにも、最もふさわしい映画の一本なのではないかと考えております。また先日、惜しくも亡くなられた女優・中川梨絵さんを追悼するという意味でも、この上映には強い意義を感じております。今回の上映によって世界が再び、神代辰巳と中川梨絵という偉大な日本の才能を見いだすということ、そして、それが今後の日活ロマンポルノの歴史そのものの再評価へと繋がることを、その末席を汚す映画人として強く期待しております。

マーク・ペランソン(ロカルノ国際映画祭プログラムディレクター) コメント
日本の映画業界が、再びロマンポルノリブートというプロジェクトの名の元に、日本映画の大事な歴史を繰り返してくれることを大変うれしく思っています。ロマンポルノというジャンルは、その名前から誤解されることも、嘲笑されることも多かったのではないかと思います。しかし、実際には多くの偉大な監督たちが、初期のキャリアを積んだ場所であり、今度はその場所で、今の時代の監督たちがどのような偉業を成し遂げてくれるのかを見ることがとっても楽しみです。「風に濡れた女」は、憧れの作品にオマージュを捧げつつも、ロマンポルノというジャンルの新しい第一歩を踏み出しており、大変感銘を覚えました。

カルロ・シャトリアン(ロカルノ国際映画祭プログラムディレクター) コメント
「風に濡れた女」は、平凡な撮影技法を使わずチャレンジングな方法で、女と男の関係を大胆に描写したなんとも破天荒な作品です。私にとって本作は、ロマンポルノへのトリビュートであるという以上に、新たな1つの作品として際立った存在だと捉えています。塩田監督のオフビートな笑いは、人々の心の扉を開く素晴らしいものだと思います。

最終更新:7月13日(水)18時30分

映画ナタリー