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【インタビュー】橘高文彦「フライングVは、RPGの勇者の剣なのよ」

BARKS 7月14日(木)18時6分配信

橘高文彦のデビュー30周年を記念して開催された4名義の4公演<AROUGE><Fumihiko Kitsutaka's Euphoria><X.Y.Z.→A><筋肉少女帯>が、それぞれBlu-rayライブ作品として7月13日に4タイトル同時リリースされた。

◆橘高文彦 コメント動画/Blu-ray 4タイトル ダイジェスト動画

18歳でAROUGEのギタリストとしてデビューを飾った橘高は、2016年11月にデビューから32年目を数えるという。今回BARKSでは橘高の歴史に踏み込むべく、インタビュアーとして我らが編集長 烏丸哲也をアサイン。同じ時代を生きてきたギタリスト同士としてのトークはもちろん、アーティストとメディアという立ち位置に分かれたふたりが交わす音楽談義は一読の価値ありだ。

  ◆  ◆  ◆

■この世で聞いたことのないものを演りたかった

──今回、ついに30周年ということで、4名義の映像作品がリリースとなりましたね。

橘高:厳密に言うと、実は今年の秋でデビューして32年目なんですけどね。今回リリースしたBlu-rayものは、去年の11月いっぱいまでの30thイヤーに行なったライブだから。

──確かに、4つのライブ自体が30thを記念して開催されたものですものね。

橘高:そう。1本3時間ずつくらいあるから、全部で12時間をチェックするだけで大変だったし、それのミックスやって編集するのにやっぱり時間かかって今になっちゃった。

──25周年の時にもアニバーサリーライブを行ないましたよね。

橘高:25周年の時は、橘高フェスみたいな形で、自分が関わってきたすべてのバンドを一晩に詰め込んだから、結局4時間コースぐらいのライブになった(笑)。これは観る方も大変だろうし、我々のゲネプロもすごく大変だったのね。既に解散したバンドや活動してないバンドもあったから、スケジュール調整も含めてね。その割には1つのバンドが30分位ずつになっちゃった。だから次のアニバーサリーでは、それぞれワンマンライブでやりたいと思ったの。

──5年越しのプロジェクトでもあったわけだ。30余年の活動を経て、デビューした時のバンドシーンと今ってずいぶん変わりましたよね。

橘高:あの当時、「俺、大人になったらプロのミュージシャンになってレコード出して食っていくんだ」なんて、なかば笑いものだったでしょ?

──現実的ではなかったですね。

橘高:そう、現実的じゃなかった。でも俺、その非現実なことを中二の頃から言っていたタイプなの(笑)。あの頃は、音楽みたいな趣味を仕事にするなんて親に言えないし、友達にも当然言えないような時代だったから、逆に今の方が幸せだと思うよ。

──なるほど。

橘高:30周年を迎えたハードロック・ギタリストなんていなかったわけだから。

──金髪&ロン毛でがんがんギターを弾くのは、橘高文彦が最初でしたね。

橘高:目立ちたいから金髪にしたんだけど、今は黒髪の方が目立つね(笑)。そのくらい世の中は変わった。当時はデビューすること自体大変だったし、ロックの歴史も成熟してなくて過渡期だった。だからいろんなものが出てきたんだと思うけどね。パンクの誕生も経験しているし、ラップもそう、デスメタルみたいなものもそうだね。やっと成熟して、また新しいものが出てくるはずだし、それに対しても楽しんでいけたらいいなと思っているけど。

──筋肉少女帯という存在は、当時から特異だったと思います。振り返ればとんでもないミクスチャーバンドで。

橘高:そうね。いなかったですね。自分が加入して、よりいなかった形になったよね。

──当時の常識で言えば、メタル系のギタリストが活躍できる場ではなかったでしょう?

橘高:そうだね。ミクスチャーってジャンルも世の中に無かったし。

──筋肉少女帯の特異性は、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンやレッチリのそれと同じだったと思います。

橘高:パンク・アングラ系でいてニューウェーブみたいなものも根底にはあったんだけど、俺、実はあんまりビックリしてなくて。もともと自分のギターというのは、様式美で語られることが多いんだけれども、様式美っていうのはひとつのフォームに則った中で個性を出していくタイプということなのね。でもバンドに対しては、自分のキャパシティの中で打ち出したいとは思っていなくて、複数の人間で組んでやるところから生まれるオリジナリティに、いつも期待してたの。

──バンドマジックね。

橘高:ケミストリーをね。だから自分が頭の中で思ってるコテコテのメタルも、例えばAROUGEだったらすごくポップに歌える山田晃士が歌うことによって崩された。筋肉少女帯では、自分の持つストイックなヘヴィメタル/ハードロックという様式美が、他の異質なものと混ざり合うことで、この世で聞いたことのないものを演りたかった。

──少なくともジャンル分けは難しかったですよね。

橘高:こと日本の場合は、ジャンルにハマったほうが楽な場合がいっぱいあったけど、筋肉少女帯には確信犯的なところがあって…ね。大槻ケンヂという音楽のフォームに則れない人。

──則らない、じゃなくて則れない(笑)。

橘高:俺はね、身の毛がよだつほど不協和音が嫌いなタイプだから、自分のアレンジでは作れないんだけど、そこに大槻ケンヂという崩しが入ることによって、結果、とっても不協な和音ができあがるの。でもそれは、自分にとってはとても新しいものだったし、不愉快な音階じゃなかった。そういう部分で筋少に魅力を感じていたし、俺が加入する前にいた三柴江戸蔵(三柴理)もそのタイプだよね。クラッシック出身の人だし、制約を楽しみながら限界を目指すタイプなんだけど。彼が大槻と出会ったのも似てるところがあると思う。

──なるほど。音楽性は全然違うけど。

橘高:そう。今は三柴くんとも一緒にやっているけど、二人とも音楽においては厳しいの。そこに乗ってくる大槻ケンヂというパフォーマンスを見てるというか、「ああ、こう来たよね」「こう来て欲しかったよね」っていう感じなんだよね。

■このメンバーで次のアルバムは創れないかもしれないっていう気持ちでやってきた
■俺にとってフライングVは、RPGの勇者の剣なのよ

──いまだに面白がっている感じなのかな。

橘高:むしろ型にはまって来られたら「あれ?普通じゃん」て言っちゃう。それは作詞においてもそうだった。大槻はそれを“異化効果”って呼んでいたんだけれど、異化効果こそが大槻ケンヂにとってはロックだと思っていたみたいで、実は俺もそう思っている。俺のストイックなヘヴィメタル楽曲ができた時、そこに「パブロフの犬」みたいなタイトルを付けてくる。これは端から見るとすごく心配されていて「橘高、いつ辞めるんだ」って言われたよね。

──全くその通り。水と油で合うはずがないっていう違和感だった。

橘高:実は裏話があって「パブロフの犬」という歌詞になる前に、普通にロックっぽい歌詞があってね、「普通じゃん」って言ったのは俺。そしたら「パブロフの犬」になったの。

──へえ。

橘高:振り返るとね、筋少においては「お互いに混ざらないでいよう」と意識していたようにも思う。やっぱ、長年やってると似てくるからさ。だから、本番前はあんまり話をしないようにするとか、ね。それって端から見ると仲悪そうに見えるよね。俺たちはステージの上で会話をしたかったし、これはMCでも音楽でもそう。スタジオでぶつけるために、普段は距離を置くようにしていたと思うよ。

──なるほど。

橘高:俺ら、基本的には同級生なの。我々を繋ぐものがあるとすれば、それはその世代なんだよ。ポップカルチャーもサブカルチャーもUFO、超常現象も、ドリフターズも、すべて同じところで育っているから、それを大槻はどう捉えたか?その現象をみて俺はどう捉えたっていうのをぶつけ合って会話するわけ。洋楽ロックの代替え品じゃなくて、オリジナルであることの価値を求めていたんだと思う。

──刺激的ですね。

橘高:いつも危うかったし、細く長くやっていこうだなんて当然思っていなかったよ。このメンバーで次のアルバムは創れないかもしれないっていう気持ちでやってきたから、聴いたことのない独特のテンションに自分たちでも驚いていた日々だった。続いたっていうのはいい誤算だったかな。

──代替え品にはなりたくないという思いが強まっていった時代でもあるかもしれませんね。

橘高:危機感も感じ始めてたんだろうしね。ルックスにしてもそうですよ。「俺のヒーローたちはフライングVでサマになっているのに、なんで俺はギターに持たされるんだ?」って思ったら、自然とヒールが7cmになってみたり9cmになってみたり。衣装も派手になって、それにまけないようにクジャクが羽を広げるように髪も威圧的になっていく。変形ギターに持たされないようにすることが、オリジナルになっていく。俺の世代は最初はコンプレックスもあったわけだけど、試行錯誤から独自のものになったんじゃないかな。

──フライングVとの戦いみたいなのもあったわけですね。

橘高:あったねえ。なんでストラトとか選ばなかったかなあって。フライングVって異端の象徴みたいな部分もあったから。

──持つのに、勇気が必要でしたよね。

橘高:そう、勇気いるの。道を踏み外す覚悟というか、ヘタしたらギャグだもん。ギャグになってもいいなとは思ってたけど、サマになんないのよ。要は中二の自分が今でもいてね、その自分が憧れるギターヒーローをひとつひとつ足し算していくと、今の自分みたいになっちゃったんだよね。マーシャルの壁に負けてるなあ、フライングVに負けてるなあ、メイクに負けてるなあ…とかね。そういう全部が一体化して完成したのが24歳の時なんだと思う。

──それはどういうことですか?

橘高:筋少のライブで24歳で初めて武道館に立った時、気がついたら大好きなリッチー・ブラックモアやポール・スタンレーが立っていたあの武道館の上手の立ち位置に自分がいてね、その時客席に中二の自分を見た思いがしたの。その時の中二の俺は、俺に対して喜んでくれていたんだよね。その時に、やっと橘高文彦としてスタートが切れた気がした。記念すべき想い出は24歳の時の武道館で、だから今でも俺、永遠の24歳とかギャグで言っているんだけど、もう戻れない自分になった覚悟を心にとめて凄く興奮していたし、もうひとりの俺が喜んでくれていたし。

──変なお薬、飲みました?

橘高:飲んでません(笑)。俺ね、中二の時から引きこもりで不登校だったんですよ。それが原因で環境を変えるために東京に出てきたの。不登校の子がプロのギタリストになるんだって言ってフライングVを持って東京に出てきたわけで、俺にとってフライングVは、RPGの勇者の剣なのよ。

──なるほど。

橘高:いまもなおRPGしているんだけど(笑)、24歳の時に武道館で子どもの時とシンクロしたんだよ。不登校だった俺が救われた日にもなった。今は、気がついたら32年も経ってて、気持ちはそのままなんだけどね。もうびっくりするぐらいあっという間だよ。

──いい話です。それだけ音楽に没頭できた時代でもあるということかな。

橘高:今は楽しいことが多いってよく言われてるよね。音楽離れとか…例えば車とかもそうだよね。でもそれはさ、時代もあるけど我々にも責任がある。24時間音楽に熱中したくなる状況を作れていないのは彼らのせいじゃないから。ミュージシャンだけじゃなくて、音楽という世界に関わるレコード会社にも、これはとっても大事な宿題のような気がしてるけど。

──そうかもしれません。

橘高:ただね、ライブを演っている側の身からすると、ライブの価値は昔より感じてくれていると思う。なぜなら、これ逆説的に言うと、CD作品/映像作品の作り物が増えちゃったからかな。ライブはコピー/ダビングできないよね、自分の心の想い出だから。だから、これからの時代ライブはもっともっと大事になっていく。ライブハウスにいった時のあの匂いとかさ、ちょっと背徳感のある、あの空気って、ネットやBluーrayでは伝えられないから。

──初期衝動とかは、時代は関係ないですからね。

橘高:俺は中二の時に不登校という、社会に対して相容れなくて閉塞してしまってた時期があって、先の人生が見えなくなった時があったけど、その時にロックとギターに本当に救ってもらったの。レコードを聞いてると力をもらえたし、ギターを弾いてると昨日の自分よりうまくなっている。生きているってことは進歩することだってギターで学んだよ。この年で初期衝動が未だあるのはおかしいんだけど、今でもその中二の俺に「あそこはイマイチだったな」「ステージ上でターンするの、もう少し足あげたらかっこよかったな」とか言われるの。俺、その時の自分をノックアウトしてやりたいんだよね。

──24歳の時に武道館の客席にいた少年が、未だいるんですね。

橘高:そう。やっと認めてやろうかってところだったから、日々、あそこのチョーキング甘かったとかいろんなこと言われちゃうの(笑)。もうひとりの中二の自分と闘っている。俺、負けず嫌いなんだけど、これがなかなか手強いわけで。

──似たようなプレーヤーっていたりしますか?

橘高:似たようなっていうんじゃなくて、尊敬する先輩のギタリストは、高崎(晃)さん。いつも背中を見てきたよ。これ、茨の道でさ、俺みたいなやり方って、ツボを作っては割っているおじいさんと変わんねーなと思って。何で割るの?みたいな(笑)。端から見たらギャグみたいだよね。

──これから先はどうなりますか?

橘高:これまであっという間だったし、ひとつの芸事みたいな形のないものを形にしていく、音楽というものをやろうとすると、30年ではやっぱ足りないんだなっていうことを実感していますよ。もし、人生200年あったら、200年間やってやろうくらいの覚悟で。まだ見えないんで、このペースでいったら50thの時も同じこと言ってそうで怖い(笑)。だって俺、確か20thの時も同じこと言っていたから。

──(笑)

橘高:でもね、今回4バンド演ったけど、全員メンバーが健在だったのは幸せなことだと思うよ。今の歳ではとっても大切なことでね、俺は恵まれてるなって思います。ステージに立った時の歓声を聞くと、やめられないんだよね。みんなの期待が爆発するあのパワーがね…、我々はあれのジャンキーなんだよ。お客さんがビックリした瞬間を見ると「生きてて良かった」って思うの。

──なるほどね。

橘高:そう。辞められなくなる。で、お客さんがアーティストを不老不死にしちゃう。

──アーティストにとってそれが一番のご褒美か。

橘高:そう。子どもの時にキャーとかワーとか言われたかったのが原動力でもあったよね。いつまでも味わいたいんだと思う。そのために用意しなきゃいけないことはどんどん増えていっちゃうけど。

──これからもより一層楽しみですね。

橘高:そのためにはいっぱい努力が必要だと思うけど(笑)。だから俺、酒辞めたもの。大好きだったけど、そのためには要らないものは捨てていく。それの方が欲しいからね。昔のロックコンサートは90分くらいだったけど、今では2時間40分やっているよ。

──ブルース・スプリングスティーンも、あの歳で4時間くらい平気で演るでしょ?

橘高:ポール・マッカートニーもそうだよね。昔、ザ・ビートルズは武道館で30分くらいしか演んなかったわけでしょ? プライドとアドレナリンのなせるワザだと思うけど、みんなバケモノになっていくよ。俺もバケモノみたいなところに片足突っ込み始めたんで(笑)。

──バケモノね(笑)。

橘高:それを観にお客さんが足を運ぶってことで。やっぱそれは肉眼で見ないとね。未確認飛行物体みたいなもんだけどね。

取材・文◎BARKS編集長 烏丸哲也

Live Blu-ray『橘高文彦デビュー30周年記念LIVE“筋肉少女帯”』
2016年7月13日(水)発売
出演:Gt.橘高文彦 Vo.大槻ケンヂ Gt.本城聡章 Ba.内田雄一郎 Key.三柴理 Ds.長谷川浩二
発売元:徳間ジャパンコミュニケーションズ
価格:¥6,300+税 品番:TKXA-1097
01. Opening ~ サーカスの来た日
02. ゾロ目
03. くるくる少女
04. ノゾミのなくならない世界
05. 踊る赤ちゃん人間
06. レジテロの夢
07. 球体関節人形の夜
08. おわかりいただけただろうか (Vo.橘高 Ver.)
09. 小さな恋のメロディ (Vo.橘高 Ver.)
10. 交渉人とロザリア
11. レティクル座の花園
12. 橘高文彦 Guitar Solo ~ 再殺部隊
13. 詩人オウムの世界
14. パブロフの犬
15. ア・デイ・イン・ザ・ライフ
16. Thank You (Vo.橘高)
17. 影法師
18. 少女の王国
19. イワンのばか
20. トリフィドの日が来ても二人だけは生き抜く
21. Ending ~ 航海の日

[特典映像]
・“筋肉少女帯”メンバーお祝いコメント
・橘高文彦インタビュー“筋肉少女帯”編

[販売店特典]
●タワーレコード限定特典:オリジナルポストカード“筋肉少女帯”Ver.



Live Blu-ray『橘高文彦デビュー30周年記念LIVE“AROUGE”』
2016年7月13日(水)発売
出演:Gt.橘高文彦 Vo.山田晃士 Ba.福田純 Ds.青柳浩一郎
発売元:Blasty Records
価格:¥6,300(税抜) 品番:BTYS-2010

Live Blu-ray『橘高文彦デビュー30周年記念LIVE“Fumihiko Kitsutaka's Euphoria”』
2016年7月13日(水)発売
出演:Gt.橘高文彦 Vo.tezya Key.秦野猛行 Ba.満園庄太郎 Ds.河塚篤史
発売元:キングレコード(NEXUS)
価格:¥6,300(税抜) 品番:KIXM-239

Live Blu-ray『橘高文彦デビュー30周年記念LIVE“X.Y.Z.→A”』
2016年7月13日(水)発売
出演:Gt.橘高文彦 Vo.二井原実 Ba.和佐田達彦 Ds.ファンキー末吉
発売元:Z to A Records
価格:¥6,300(税抜) 品番:BTYS-2011

最終更新:7月14日(木)18時13分

BARKS

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。