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発電事業者の顔をのぞかせる山梨県の「蓄電エコノミー」

ニュースイッチ 7月13日(水)11時50分配信

先進的な実験場を提供、進出企業に電気代の割引も

 山梨県が再生可能エネルギーの蓄電技術の開発を進めている。コンデンサー、リチウムイオン電池、水素貯蔵の3通りの蓄電方法を組み合わせた先進的な実験の場を企業に提供。参加企業は新技術を実践さながらの環境で試し、開発にフィードバックできる。パナソニックは、2020年以降の発売を目指す純水素型燃料電池を持ち込み、実証運転を始めた。

<「メガソーラー」が珍しかった12年に運転開始>

 山梨県内の山で最も低い米倉山(標高380メートル)に、太陽電池パネル8万枚が敷き詰められている。県と東京電力が共同設置した出力1万キロワットの太陽光発電所だ。「メガソーラー(大規模太陽光発電所)」という言葉自体が珍しかった12年1月に運転を開始した。
 
 発電所の入り口にある施設「ゆめソーラー館やまなし」は、屋根に搭載された同20キロワットの太陽電池パネルと、雨水を利用した同1・5キロワットの小水力発電で電力を自給自足している。この施設が蓄電技術の実験の場だ。

 自給自足の課題は、天候による太陽光発電の変動。県企業局電気課の坂本正樹主査は「変動の種類でデバイスを使い分ける」と説明する。まず、出力(キロワット)が増減する瞬間的な変動(短周期変動)が起きると、館内に設置した電気二重層コンデンサーが稼働する。瞬時に充放電ができるコンデンサーの特性を生かし、出力の急変を緩やかにする。

 発電量(キロワット時)が増減する中・長周期変動は、大量の電力貯蔵に向くリチウムイオン電池が担う。発電量が増えると充電し、雨や曇りの日に放電して館内に送電する。

 リチウムイオン電池が満充電になると、水を電気分解して水素を生成する。再生エネを水素に変換して貯蔵し、電力が必要となると燃料電池に送って発電する。蓄電池と水素を組み合わせた変動吸収は珍しい。

 燃料電池は水素を直接、利用して発電する純水素型。パナソニックアプライアンス社技術本部の尾関正高部長は「使いながら最適な運転方法を見つけ出す」と実用化に向け、実証の成果に期待する。

<世界最大級の円盤蓄電システムで地方創生>

 施設の近くでは、世界最大級のフライホイール(円盤)蓄電システムの実験も進む。増強した1000キロワットのメガソーラーの電力でホイールを回転させ、再生エネを運動エネルギーとして蓄電。電力が不足すると運動エネルギーを発電に使う。フライホイール蓄電で鉄道運行を省エネルギー化したい鉄道総合技術研究所などが、実証に参加している。

 県は安価な電力を県民に供給しようと、蓄電技術の開発を始めた。蓄電技術の普及に県内企業が携わることにより、地域経済の活性化も目指す。すでに県は進出企業の電気代の割引も始めており、蓄電を起爆剤とした地方創生が始まっている。

《解説》
 この4月から山梨県は、東電と共同で電力ブランド「やまなしパワー」を始めた。これは新電力ではない。契約した企業に「やまなしパワー」というブランド名の電力を通常より安く販売する。山梨県企業局は12万kwの水力発電を保有する「発電事業者」の顔もある。日照にも恵まれ、県内で太陽光の導入が増えている。地域性を生かし、エネルギーを核とした地方活性化に取り組んでいるのが特徴だ。

最終更新:7月13日(水)11時50分

ニュースイッチ