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「ロレックスとアップル」タイプの異なる創業者による2つのエクセレントカンパニー

ZUU online 7月14日(木)6時10分配信

ハンス・ウィルスドルフ――。この名前を聞いてすぐ分かる人は腕時計が好きの方だろう。たとえ当人は知らなくてもこの人が創った会社なら誰でも知っているはずだ。それは時計産業の雄「ロレックス」である。製品は世界に知名度があるのに意外に創業者は知られていないのだ。

実はこれは故ウィルスドルフ氏(1881-1960)自身にも原因がある。徹底して“表に出ない”スタイルを貫いた人なのである。

■「製品」のPRには戦略的だった創業者

1905年創業のスイスの高級腕時計メーカー・ロレックス。押しも押されもせぬグローバルブランドだが閉鎖性でも有名である。これは創業から続く社風によるのだ。

まず会社業績からして明らかにされてこなかった。財務内容は優秀とされるが、財団法人形式をとり長年内部資料を公開しなかったのだ。最近は変わってきているが、正確な生産量や売上高なども分かりにくかった。

ウィルスドルフ本人となるとさらに謎めく。一生で一度もインタビューに応じなかったとされ、伝記作家が書く材料に困るぐらい情報に乏しく、写真も数枚残されているだけだという。本人の考えを知るには、社史のような内部資料か時計専門誌などに書いたわずかな記述しかない。

その反面、製品の宣伝には人一倍熱心だったという。提携する広告会社は一流どころで、宣伝を出す媒体は一流紙、高級雑誌など裕福な読者の多い所に出した。

防水時計ロレックス・オイスターの宣伝にドーバー海峡を泳いで制覇した女性をモデルにしたのは有名だが、VIP、映画スター、トップレーサー、パイロット、エベレストの登山家などモデルも特別で、彼らにいかにロレックスの質が優れ、愛用しているかを語らせた。

「富める人」「世界の要人」「一流の人」はロレックスを身に付けるというイメージを作り出したのである。

米国大統領や007までロレックスを愛用するイメージを作り上げたのは宣伝の賜物(たまもの)である。

■高級ブランドの共通点

ここまで極端ではないにせよ、高級ブランドではこうした姿勢は時折みられる。

例えばルイ・ヴィトンにも「自らを語らず」という企業文化があり、あくまで良心的なクラフツマンシップに基づき「製品」に自からアピールさせる姿勢を基本とした。
 
経営者が頻繁にマスコミに登場することより、出ないことで神秘性、排他性、近づきがたさを醸し出そうとするブランドは多い。

逆にアップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏(1955-2011)は頻繁にマスコミに登場し、そのプレゼンは伝説レベルにまでなったほどだ。彼の力でアップルは世界ブランドとして確立されたともいえる。
 
こう考えると、欧州の高級ブランドの姿勢ははたして近代経営に通用するかという疑問も出てくる。

■ビジョナリー・カンパニーに見る経営者のスタイルの違いの事例

米国や世界の超優良企業の共通点を研究してベストセラーになった『ビジョナリー・カンパニー』(ジム・コリンズほか著)では、経営者のスタイルに関して面白い事例が述べられている。

ビジョンのある優良企業にはカリスマ的でアグレッシブなタイプの経営者は少なく、むしろ表に出るのを好まなかったり、普通より控えめだったりするというのだ。どちらかというと企業が永続するための組織文化を作るのに熱心であり、カリスマ的な指導者は長期スパンで害になるケースも多いとしたのだ。
 考えさせられる研究である。

ただコリンズらも別にジョブズ型を否定しているわけではない。一面的なリーダー像は現実に即していないと教えているだけだ。

実際、高級ブランドの世界でもココ・シャネルなどはマス(大衆)志向であり、必要とあらばマスコミに露出した。自ら新しいモードを着込んで写真撮影させ、インタビューでの発言は新たな伝説を創ったのだ。

たしかに、企業経営者にもいろいろタイプがいて当たり前であり、CEOもそうした土壌から出てくる。経営者の個性が多様になっておかしくない。トップには時に特別視され幻想がもたれる。ジョブズ型やカリスマ的な指導者は分かりやすくマスコミも取り上げやすい。ここにもリーダー像を型にはめてしまう原因があるのだろう。

■アップルは今好調だが……

徹底して秘密主義だったウィルスドルフ氏。かたやメディアの寵児だったジョブズ氏。今後の企業経営において、正反対の2つのタイプ、どちらが望ましいのだろうか。

現在アップルは好調だが、まだ生まれて40年。その間、IBMやキヤノンに買われる寸前までいったことを思えば、まだまだこの先は分からない。対してロレックスは2005年に百周年を迎え記念モデルも出した。ウィルスドルフ路線は長期の市場の風雪に耐えている。並のブランド品はユーズド市場に持ち込まれると二束三文になることもあるが、ロレックスはオークションに出そうが質に入れようが別格のブランド価値を保つ。

経営スタイル、経営者のあり方の評価も多様であるべきということだろう。(ZUU online編集部)

最終更新:7月14日(木)6時10分

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