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カンヌ受賞『淵に立つ』の深田晃司監督が語る、日本映画の未来へ向けての提言

ぴあ映画生活 7月14日(木)11時51分配信

今や飛ぶ鳥を落とす勢いで海外において快進撃を続けるのが、『歓待』『ほとりの朔子』で知られる深田晃司監督だ。5月のカンヌ映画祭で、浅野忠信主演の最新作、『淵に立つ』(10月上旬、日本公開予定)がある視点部門の審査員賞を受賞したのは、日本でも大きく報道され記憶に新しい。フランスの日刊紙は「怒れる監督」と題し、現代の日本社会を批評的な視点を持って見つめる気鋭の若手と紹介した。その後も、マドリッド映画祭に出品された『さようなら』がディアス・デ・シネ最優秀作品賞を受賞したり、上海映画祭で審査員を務めるなど、その活躍は広がるばかり。そんな彼が映画制作と共に力を入れているのが、同志と立ち上げた“独立映画鍋(インディペンデント・シネマ・ギルド)”というNPOである。では、この風変わりな名前の団体、その活動意図とは何なのか。広い視野で日本映画の未来を見つめる深田監督に、その胸中を聞いた。

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「自分も映画を作り始めた頃は思いも寄らなかったんですが、海外の映画祭に参加するようになって他の国の話を聞くうちに、それまで当然と思っていた日本映画を取り巻く状況がそうではないと気づいたんです。これまで日本の映画人は自分も含めて、いい映画を作ればお客さんはついてくるという楽観論があったと思う。でも今の大量消費社会においては、アート系やインディペンデントな映画が大量にTVスポットを打てる映画と同じ土俵に立つことには、やはり限界がある、ということを、フランスでは映画のTVスポットが禁止されているという事実を知ることで思い至りました。と同時に、そこには我々映画人自体にも責任があると思っていて。つまり多様な映画に対する一般の理解や興味を広げる努力が足りなかったのではないかと。たとえばフランスでは映画教育が浸透していて、小学生で小津安二郎の『お早う』を学校で観る機会があると聞き、一方で僕の『ざくろ屋敷』がパリのキノタヨ映画祭で上映されたときには、こんなマニアックな映画に郊外の高校生が招待され300人集まったりする。多様な映画が存在するためには、観客が早くからそれに親しむ機会を準備しておくことが大切だと思うんです」

制作システムについても、独自のやり方を考えている。最近はネットで出資者を募るクラウドファウンディングなどが一般的になってきたが、それだけでは不十分と感じる。

「映画を作るための資金集めの方法には、ざっくり言って3つの方法があります。出資と、公的な助成金と、民間からの寄付です。その3つのパッチワークによって多様な映画が成り立っていますが、日本ではそれが出資に偏り過ぎています。独立映画鍋は、2011年のNPO法の改正を機に、寄付文化を促進させていこうということで始まりました。NPOには2種類あって、“認定NPO”になると、それに対する寄付は税額控除になり、寄付した額の最大半額近くがダイレクトに寄付者の税金から引かれる、より大きな控除になります。ただし認定NPOの資格には活動期間も含め条件があるので、今それを目指してこつこつとやっています。年10回ぐらいの集まりをもうけ、様々な問題を検討しあう勉強会も開いています」

日本では映画監督といえばまだまだ、与えられた土壌のなかで制作に徹する作り手というイメージがある。が、深田監督はより戦略的に日本映画の未来を考える。

「例えば映画やアートというのは日本を海外にアピールする、いわば外交に匹敵するものになり得る。たとえばヴァン・ゴッホの絵画がオランダのイメージや、ひいては経済にどれだけ役立っているかといえば、計り知れないものがあるでしょう。そういう意味でも、映画に対する公共的な価値に対して多くの人が関心を持って欲しいと思っているのです」

もちろん独立映画鍋は一般に開かれた団体なので、誰でも年会費4千円で活動に参加できるという。監督の姿勢に賛同する方はぜひ、検討してみてはいかがだろうか。

『淵に立つ』
10月上旬 有楽町スバル座ほか全国ロードショー

取材・文:佐藤久理子

最終更新:7月14日(木)12時56分

ぴあ映画生活

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。