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円高トレンド継続か? 年後半は「イタリア国民投票」「米大統領選」など政治イベントに注意

ZUU online 7/14(木) 17:10配信

2016年前半のドル円相場はほぼ一貫して円高トレンドとなり、英国のEU離脱が伝わると一時1ドル=98円台まで急伸した。年後半も円高トレンドを継続するのか注目されるが、政治・経済の両面からその可能性は高いといえそうだ。

■実質金利差の縮小が円高を示唆

まず、ファンダメンタルズで注目されるのが、日米の実質金利差である。ドル円の方向性と、日米実質金利差はおおむね一致して動く傾向にあり、その傾向は円高を示唆している。

たとえば、10年物国債利回りからインフレ率(消費者物価指数の前年同月比)を引くと、5月の米国実質金利は0.8%、日本の実質金利は0.3%となり、実質金利差(米国-日本)は0.5%になる。昨年12月の実質金利差は1.5%だったことから、今年に入り1.0%ポイントも実質金利差が縮小している。

実質金利差が縮小すると、相対的にドルの魅力が減少、円の魅力が増加することになり、円高を招きやすい。年初からの動きをみると、米国の実質金利が低下する一方で、日本の実質金利が上昇しているが、それぞれを「米国の名目金利の低下」と「日本のインフレ率の低下」が主導している。

既に米利上げは年内見送りが織り込まれており、米金利がさらに低下する余地は小さいと考えられるが、米インフレ率が上昇傾向にあることから、年後半も米実質金利は緩やかに低下する見通しだ。

一方、日本では円高が輸入物価の低下を通じてインフレ率を押し下げており、デフレの深化に歩調を合わせて実質金利が上昇している。日銀による追加緩和が期待されてはいるものの、マイナス金利の導入後にむしろ円高やデフレが加速しており、金融緩和も裏目にでている。年後半も日米の実質金利差は縮小傾向を維持する見込みだ。

■購買力平価は適正レベルを示唆、円高余地は残されている

中長期的な水準の目安としては購買力平価(PPP)や実質実効レートが参考となる。IMF(国際通貨基金)によると、ドル円の購買力平価は2016年が103.3円、2017年は102.9円と推計されており、実勢レートはほぼ購買力に見合う水準に到達しているもようだ。

また、日銀が公表している実質実効レートをみると、5月は78.82と過去10年の平均値である88.07から10%ほど円が割安となっている。ただし、昨年6月からは既に16%上昇しており、6月に円が一段高となったことを考え合わせると、足もとでは長期的な平均値にかなり近づいているといえそうだ。

PPPや実質実効レートはあくまで目安であり、実際のところ、実勢レートがPPP近辺にあることはまれである。とはいえ、実勢レートのPPPからのかい離幅は20%程度にとどまることから、当面のドル円は80円から120円のどこかに納まるという程度のことはいえる。したがって、やや急速に円高が進んでいるものの、水準としては過度な円安が是正されたところであり、まだ行き過ぎた円高とは言い難い。円高の余地はまだ残されているようだ。

■欧米での政治イベントが波乱材料

年後半は欧米で重要な政治イベントを控えており、波乱材料となりそうだ。

まず、英国ではEU離脱の手続きが開始される。EU残留を支持していたキャメロン首相が国民投票での敗北の責任を取る形で辞任したが、後任の首相の選出は9月初旬までずれ込む見通しだ。

国民投票ではEU離脱派が勝利したが、この投票に法的な拘束力はない。EU離脱の手続きを開始するためには、後任の首相を選出後、EU側に離脱の意向を正式に伝える必要がある。英国は、9月までの約2カ月の間を冷却期間にあてて、方向性を探ることになる。

もともと英国はEUに加盟にしながらもユーロに参加しておらず、EUとはつかず離れずの関係を維持しており、今後も形を変えながらこの関係が続くことが予想される。

■EU離脱のドミノ現象が懸念される

ただし、そうは言っても、英国でEU離脱派が勝利したことで、EU全体が政治的に不安定になっていることも事実である。

まず、英国内ではスコットランドと北アイルランドが独立の動きをみせている。海峡を越えてフランスとオランダでは英国同様、EUからの離脱を国民投票にかけるべきとの声が強まっている。

英国が抱えている移民問題は、EU全体が抱えている問題でもあり、決して英国独自の特殊要因ではない。英国のEU離脱をきっかけとして、EU離脱のドミノ現象が起きるのではないか、との危惧は絵空事とは言い切れないのが実情である。

■10月の伊国民投票は「英国民投票を上回る」リスクイベントか

こうしたなかで、10月に実施が予定されているイタリアでの国民投票は今年最大のリスクイベントとなりそうだ。

イタリアの国民投票は憲法改正の是非を問うものであり、ユーロ離脱とは一見何の関係もないようにみえる。しかし、否決された場合にはレンティ首相が辞任する意向を表明したことで事態が急変しており、国民投票は現政権への信任投票へと変質した。争点は移民問題と財政政策がメインとなる可能性があり、事実上はユーロ離脱の是非を問う投票といっても過言ではなくなりつつある。

イタリアは地中海を挟んでリビアの対岸に位置しており、無政府状態にあるリビア経由でシリアをはじめとする中東諸国からの難民が押し寄せている。このことが大きな社会問題となっているが、不満の矛先は有効な対策を示さないEUへと向けられている。

また、イタリアはギリシャに次ぐ財政赤字を抱えており、EUからは社会保障費の削減など緊縮財政を求められていることも、反EU派に国民の支持を集めやすくしている。

6月の地方選挙ではユーロ離脱を訴える新興政党の5つ星運動が首都ローマと北部の大都市トリノでの市長選を制した。ローマでの市長選は事前予想を大きく上回る圧勝であり、さらにトリノでは与党・民主党の現職市長の再選が見込まれていたなかでの逆転勝利となった。難民問題と緊縮財政に対する不満を背景に大衆迎合主義が勢いを増していることは明らかだ。

5つ星運動の躍進は、政権への批判票の受け皿となった面もあり、必ずしも同党の政策が支持されたわけではないが、国民投票が否決される可能性は無視できないレベルにまで高まっているもようである。

仮にレンティ首相が辞任した場合には、財政再建の遅れからイタリア発の金融危機が発生するのではないかと懸念されている。さらに、イタリアのユーロ離脱も現実味を帯びてくることから、イタリアでの国民投票が持つインパクトは英国の国民投票とは比べ物にならないほど大きいとの見方もある。

否決された場合の為替への影響は、英離脱と同様に円高が見込まれている。

■米大統領選、接戦ならリスクオフの円高へ

ポピュリズムの台頭はヨーロッパに限った話しではなく、海を渡って米国でも旋風を巻き起こしている。移民排斥を訴えているトランプ候補はその暴言癖から当初は泡沫候補扱いされていたが、共和党からの指名が確実な情勢である。

大統領選は最後の最後まで支持率が拮抗することが多く、結果が出るまでは市場も動きにくい。ただし、トランプ候補が勝利した場合には、景気の停滞を招く恐れがあると考えられていることから、支持率が拮抗しただけでもネガティブな影響を及ぼす可能性がある。

株価が下げる局面では、リスクオフの円高になりやすい。米大統領選が混戦になった場合には円高への備えが必要だろう。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)

最終更新:7/14(木) 17:10

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