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社説[南シナ海判決]「法の支配」を尊重せよ

沖縄タイムス 7月14日(木)5時0分配信

 「南シナ海問題」が重大な局面を迎えた。
 オランダ・ハーグの仲裁裁判所は、中国が独自に設定した「九段線」と呼ばれる南シナ海の境界線について、国際法上の根拠はない、と中国の主張を退けた。
 南沙諸島には、排他的経済水域(EEZ)が生じるような「島」はなく、中国はEEZを設定できない、とも指摘している。
 中国は「九段線」について、中国の主権や権益が及ぶ範囲だと主張。これを根拠に南沙(英語名スプラトリー)諸島での人工島造成や軍事拠点化を進めてきた。
 判決によって中国は、人工島造成などの法的根拠を失うことになる。中国の全面敗訴と言っていい。
 習近平国家主席は「中国はいかなる主張も動きも受け入れない」と、判決の受け入れを拒否したが、判決が気にくわないからと言って、これを「紙くず」だと一刀両断するのは「法の支配」を自ら否定するようなものだ。
 ましてや中国は国連安全保障理事会の常任理事国であり、国連海洋法条約の批准国である。
 中国に望むのは、「大国のエゴ」ではなく「大国の度量」である。「国際法の無視」ではなく「国際法の順守」である。
 しかし、残念ながら中国が判決を受け入れる可能性は今のところ、ほとんどない。
 中国が敗訴したことが、問題の解決にはつながらず、逆に地域の緊張を高めるおそれもある。南シナ海の緊張は東シナ海に直結する。
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 習近平政権は、仲裁判断に対する国民の反発が政権に向かい、政権批判が高まることを恐れている、といわれる。
 当面予想されるのは、実効支配の強化を加速させることだ。中国政府は12、13の両日、南沙諸島での民間機の試験飛行を実施し、正当性をアピールした。南シナ海での防空識別圏設定に踏み切る可能性もある。
 中国が判決を無視して現状変更の動きを続ければ、国際的摩擦は避けられない。「法の支配」に基づく秩序維持のため米国も黙っていられないからだ。
 中国は、当事国ではない米国や日本が南シナ海問題に関与するようになってから問題がこじれた、との思いを抱いている。
 安倍政権がここぞとばかりに中国包囲網を強め、国際社会で中国を孤立させる道を選べば、日中の相互不信と対立がさらに深まるのは確実である。
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 国連海洋法条約は「海の憲法」と言われる。海の秩序を維持するための取り決めだ。 フィリピンが同条約に基づいて仲裁裁判所に提訴したのは3年前。大国の主張を全面的に退けた判決がその大国によって否定されれば、海の秩序を維持することが難しくなる。
 国連海洋法条約は、強制力がなく、判決に従わない国を従わせる手段を持たない。しかし、判決に従わない身勝手が許されれば、条約に基づく海の秩序は保てない。
 同条約に基づく体制そのものが岐路に立たされている。

最終更新:7月14日(木)5時0分

沖縄タイムス