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ダイセル式生産革新がさらなる進化、日立の画像解析でミスや不具合の予兆を検出

MONOist 7月14日(木)8時25分配信

 日立製作所とダイセルは2016年7月13日、東京都内で会見を開き、両社で共同開発した、製造現場における作業員の逸脱動作やライン設備の動作不具合などの予兆を検出し、品質改善や生産性向上を支援する画像解析システムについて説明した。ダイセルは2015年2月から16カ月の間、エアバッグ用インフレータを生産している播磨工場(兵庫県たつの市)で画像解析システムの実証試験を進めており、今後は2016年度中をめどに同工場で本格運用を始める計画。さらに、ダイセルの海外の6工場にも導入を広げていく予定だ。

【人物動作解析による逸脱動作の検知例などその他の画像】

 共同開発した画像解析システムは日立製作所が外販する。同社が2016年7月に発表したIoT(モノのインターネット)プラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」の考え方や技術を適用した上で汎用化したデジタルソリューションに仕立て、2017年度から国内外の製造業向けに提案する。

 今回発表した画像解析システムは、5種類のカメラ(距離カメラ、固定カメラ、高速カメラ、PZTカメラ、全方位カメラ)を用いて作業者や設備、材料加工の状態を撮影する。撮影した映像を専用アルゴリズムで解析して、ミスや不具合などの予兆となる通常と異なる状態を見つけ出し、その解析結果を生産ラインのマネジャーなどに通知する。これによって品質保証は、生産ロット単位の代表点管理から、製品シリアルごとに連続監視できる全点管理に移行でき、工程内保証率を高められる。

●人、設備、材料の3M+作業手順

 日立製作所 産業・流通ビジネスユニット 産業ソリューション事業部 産業製造ソリューション本部 本部長の森田和信氏は「日立の考えるIoTでは『Sense』『Think』『Act』をいかにスムーズに回していくかが重要になる。今回の画像解析システムでは、このサイクルを、人(Man)、設備(Machine)、材料(Material)の3Mに適用するべく、作業員が業務を進める作業手順(Method)に落とし込むことを重視して開発を進めた」と語る。

 実際の機能も、「人」に対応する人物動作解析、「設備」に対応する設備異常解析、「材料」に対応する溶接異常解析を行えるようになっている。人物動作解析では、距離カメラを用いて作業者の手やひじ、肩などの関節位置情報を取得した上で、標準動作モデルと関節位置情報を統計的に比較することで逸脱動作を検知する。具体的には、両手動作、目視動作、屈み動作の3項目について、規定した逸脱度を超えると、生産ラインのマネジャーに通知が送られる仕組みになっている。

 関節位置情報は作業該当部を切り出すなどの工夫を施しているので認識率は高い。「当社研究所での成果では90%以上という数字も出ている」(森田氏)という。

 設備異常解析は、固定カメラで設備内の画像をリアルタイムで取得する。正常な状態との間で差分判定を行い、一定のしきい値を超えたら異常として通知する。

 溶接異常解析の場合、高速カメラで溶接過程の画像と溶接時発光波長データ、製造実行システム(MES)から取得した溶接時の印加電流波形を取得し、時間軸を合わせて分析する。

 さらに3Mデータと画像データをひも付け表示することで、生産工程における製品品質・作業品質の継続的な改善に活用するとしている。

 現在、ダイセルが画像解析システムを運用しているのは播磨工場だけだが、今後は海外の6工場にも導入していく計画である。導入を広げて行く中で、各工場のデータを一元管理してのビッグデータ解析や、グローバル統合管理による技術レベルと品質レベルのさらなる底上げ、解析結果を活用したエンジニアリングチェーンやサプライチェーンの最適化なども実施するとしている。

●「ダイセル式生産革新」は「人にやさしいモノづくり」

 ダイセルは、プロセス産業におけるモノづくり革新の手法である「ダイセル式生産革新」で知られている。会見に登壇した、ダイセル 取締役 常務執行役員の小河義美氏は「熟練工が大量に定年退職する2007年問題について、当社はそれよりも早いタイミングで迎えていた。そこで、熟練工のノウハウや技能の継承や、安心して作業を行える環境づくりを目指したのがダイセル式生産革新の始まりになる。面積約100万m2の網干工場(兵庫県姫路市)ではかつて、間接部門を入れて約3500人が勤めていたが、ダイセル式生産革新によって約1000人に減らすことができた。現在はさらに革新を進めて、1直当たり約20人、間接部門を含めて300人以下で回せるようになっている」と語る。

 網干工場におけるこの究極の取り組みは、プロセス産業のみならず、組み立て産業からも注目を集めている。同工場の工場見学は8カ月待ちが10年間続いているという。

 人員削減=生産性向上に注目が集まるダイセル式生産革新だが、その背景には「人にやさしいモノづくり」というコンセプトがある。今回の画像解析システムの共同開発でも「モノづくりは最終的に現場で人が関与する以上、どうしてもミスは発生する。そんな現場作業をバックアップする、ポカをしても安心できるシステムが欲しい」(小河氏)という考えがあった。

 また、画像解析システムの機能の1つである人物動作解析を開発する上で重要だったのが、逸脱状態を見つけ出す基礎データとなる標準作業モデルの構築である。森田氏は「ダイセルの作業手順がしっかりと標準化されていたこともあって、日立で行った標準作業モデル構築のための画像撮影作業は1日で完了した」と説明し、今回の画像解析システムを実現する上でダイセル式生産革新が重要な役割を果たしていることを示唆した。

●プロセスオートメーションへの適用は

 画像解析システムを適用したエアバッグ用インフレータは組み立てラインで製造されるものであり、ファクトリオートメーションに分類される。しかし、ダイセルの主力事業は、プロセスオートメーションを用いて生産する化学品である。今回の画像解析システムは、プロセスオートメーションにも展開可能なのだろうか。

 小河氏は「プロセスオートメーションの場合、化学品を連続で生産する定常作業と、定常作業を止めて行うメンテナンスや品種切り替えといった非定常作業に分けることができる。現時点でトラブルが多いのは非定常作業だ。なぜかというと、1~2年に1回の頻度でしか行わないため、その非定常作業のノウハウを習得する機会が少ないからだ。この非定常作業に画像解析システムを適用すれば、課題だったトラブルを大幅に削減できるだろう」と述べている。

最終更新:7月14日(木)8時25分

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