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英国で“爆買い”が増える? 外国人がたくさんやって来るかもしれない

ITmedia ビジネスオンライン 7月14日(木)8時24分配信

 6月23日に英国で欧州連合(EU)から離脱(ブレグジット)するかどうかを問う住民投票が行われ、離脱派が勝利したことで大騒ぎになったことは記憶に新しい。

 言うまでもなく、ブレグジット問題は政治的な混乱をもたらしている。今後、離脱がどう転ぶのかまだ分からない部分もあり、混乱が収まる気配はない。当面は、次期首相になるテリーザ・メイ内相とその新政権がEUに離脱を正式通知し、きちんと離脱交渉がスタートするかどうかが注目される。しばらくは様子見ということになるだろう。

 またブレグジットの結果は、経済面にも影響を及ぼしている。結果が出た直後、ポンドは対ドルで1日の下落率が過去最大を記録し、7月5日には31年ぶりに安値記録を更新したと大きく報じられた。その後もポンド安の状態は続いているが、イングランド銀行(英中銀)が金融緩和政策を示唆し、政策金利の低下が予想されるなど、今後もポンド安が続く可能性も指摘されている。

 そんな混乱状況にあって、ブレグジット投票後の英国で盛り上がりの兆候を見せているといわれる分野がある。インバウンド市場だ。

 ブレグジットが決まってすぐの27日、英旅行比較サイトの「Cheapflights(チープフライツ)」は、「先週金曜日に行われた英国での国民投票の結果は、英国のインバウンド・ツーリズムにとっての『ブレグジット・ブーム』の引き金となった可能性がある。世界を旅する人にとって、ポンドが苦戦することによって、英国が突然お値打ちになっている」と語った。つまり、ブレグジットによるポンド安で、世界中の旅行者が英国にこれまでよりもリーズナブルに訪問できるようになる。英国のインバウンド市場が盛り上がるのだ。

 そしてこう続ける。「英国人がブレグジットを決めてから数日で、米国から英国行きの旅行券検索数が2倍になり、中国から英国行きのチケット検索数は61%も増加している。カナダから英国への検索も49%増だ」。さらに「欧州諸国から英国へのチケット検索数も同時期に31%増え、特にスペインからは84%増、イタリアからは62%増であり、この2国の旅行者たちは早くも英国行きを検討しているのである」と述べる。

 同社の広報担当者は著者の取材に、「英国への関心は高まっており、全体で私たちのこの時期の予想を30%以上も超えている。ここのところインバウンドの取り込みで欧州のライバル国との競争で苦戦していた英国のインバウンド・ツーリズムには素晴らしいニュースだ」と語っている。

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●ホテルの予約が急増

 さらに英国で280軒のホテルを抱えるベスト・ウェスタンGBもブレグジットが「ブーム」をもたらしつつあるとする。ホテルの関係者によれば、ブレグジット以降、予約が2倍に増えているという。事実、ブレグジットの投票から1週間で、スコットランドのエディンバラにある同チェーンのホテルは、米国からの予約が前年同時期よりも10倍増え、中国からの予約は50%も増えていると報告している。またヨークにある同チェーン系のいくつかのホテルでも国際的な予約が急増しており、あるホテルでは米国からの予約がすでに236%以上も増加。東部のケンブリッジやイングランド北西部の湖水地方などでは、中国からの予約が10%近く増加している。

 メディアでは、英国を訪問する観光客こそ、ブレグジットの最初の勝者だと主張する記事も見られる。当然のことながら、ポンドが安くなれば、国外からの旅行者にとってホテルやレストランの料金は割安になり、買い物もお得になる。特に世界で最も買い物をしている国ランキングでトップの中国と、第4位の米国人が英国に大量に押し寄せれば、インバウンド市場にはよいニュースとなる。

 こんな見方もある。インターコンチネンタル・ホテルズグループのリチャード・ソロモンズCEOは、「長期的に見ると、ポンドが下がることによる(ホテルなどの)価格低下で、インバウンド旅行が増加することになるかもしれない」が、英国のインバウンド市場の動向は「まだ断言はできないので、もう少し様子を見る必要がある」と述べている。ちなみにソロモンズCEOは、ポンド安で英国人にとって国外旅行が割高になるため、国内旅行の需要が増えると見込んでおり、そちらの動きも注視しているようだ。

 実は、英国観光業界の最近の動向を見ると、ブレグジット前からインバウンドは好調だった。その大きな要因のひとつは2015年からポンドの価値は下落傾向だったことがある。2016年6月、英国の観光局が発表した第一四半期のインバウンドの統計によれば、国外からの訪問者数は前年同時期から6%も増えて736万人に上っていた。これは過去最高の数字であり、しかもその時期のインバウンドの訪問者は、英国に364万ドルを落としたという。そして今回のブレグジットによるインバウンドの増加傾向は、まさにそのポンド安の追い風に乗った形となる。

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●中長期的には不透明

 一方で、インバウンドの盛り上がりは短期的なものになるとする向きもある。英国のEU離脱が確定すれば、英国で新たな税金が導入されたり、さまざまな新しい費用が徴収されたりすることも考えられる。またこれまでよりも英国に乗り入れる旅客機の数などが減るとの予測もあり、そうなれば運賃が上がる可能性もある。長期的に見れば旅行コストが今以上に高くなると見る向きもある。

 ただブレグジットにより中長期的にインバウンドが増加するかどうかを見極めるのは、時期尚早かもしれない。とにかく、まだ英国が正式にEUに対して離脱を通知していない今、そして、EUへの通知から始まる2年間の交渉期間に、ポンド安を狙って英国を訪問すれば旅行者にはお得感があるかもしれない。

 ところで根本的な問題として、英国は観光地としては魅力的な国なのかということがある。英国観光局は「#OMGB」というソーシャルメディア・キャンペーンを展開している。クリエイティブでインバウンドを取り込みたい意気込みが感じられる取り組みである。

 今年の夏休みは、ブレグジット・ブームに乗ってみるというのも一案かもしれない。

(山田敏弘)

最終更新:7月14日(木)8時24分

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