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ハサミで切れる不揮発性ディスプレイ

EE Times Japan 7月14日(木)9時51分配信

■エレクトロクロミックディスプレイをフレキ基板で

 物質・材料研究機構(NIMS)機能性材料研究拠点電子機能高分子グループリーダー樋口昌芳氏らの研究グループは2016年7月13日、ハサミで好きな形に切れるディスプレイを開発したと発表した。ハサミで自在に切り取れるため、衣服や建物など複雑な形状のものに張り付けて使用するなど、これまでのディスプレイでは表現できなかったさまざまな表示が行えるという。

【エレクトロクロミックシートの作製手順】

 開発した新ディスプレイは、電力供給を遮断しても表示が失われない不揮発性ディスプレイの1種で、電気化学的酸化還元により色が変わる特性であるエレクトロクロミック(EC)特性を持つEC物質を使ったECディスプレイだ。

 ECディスプレイの性能は、EC物質の特性に大きく依存し、これまで実用化に絶えられる材料が極めて少なく、その応用は一部に限られてきた。NIMSの樋口氏らの研究グループは、これまで、鉄やルテニウムなどの遷移金属イオンを含む有機/金属ハイブリッドポリマーにおいて、優れたEC特性を見いだしている。なお、優れたEC特性とは、高い繰り返し駆動安定性、優れた応答性、豊富なカラーバリエーションなどを持つことをいう。

 一方で、研究グループがこれまで作製してきたECディスプレイはガラス基板を使用していたため、フレキシブル性に欠けるなど、EC材料の長所を生かし切れていなかった。

■スプレーで均一に成膜

 今回、研究グループは、有機/金属ハイブリッドポリマーの優れた成膜性を生かして、スプレーでコートすることで、フレキシブル電極に対して均一なポリマー膜を作製することに成功した。同時に、同ポリマーの電気化学的酸化で生じるプラス電荷の増加を補償するアニオン(マイナスの電荷を持つイオン)の供給源となる固体電界質層についても、均一な厚みでの成膜を実現。その結果、透明電極の付いた2枚のフレキシブル基板の間に、有機/金属ハイブリッドポリマー層と固体電解質層からなる構造を持つフレキシブルなシート状のECディスプレイを実現した。

■乾電池2本で駆動し、数時間保持

 固体電解質層は適度な硬さであり、ECディスプレイ自体も容易にハサミで切断可能。ハサミで任意の場所を切断しても、湿気や酸素に対する同ポリマーの高い安定性により、電圧印加による繰り返し表示が行えるという。表示を変更するための電圧は、今回作製した10cm角サイズの場合、3Vで「乾電池2本で駆動できた」(同)とした。さらに、電源ユニットを外し、ディスプレイへの電力供給を遮断しても、「デバイスによって個体差はあるが、少なくとも数時間は表示を保持できることを確認した」(NIMS)という。表示保持時間については、「理論的には半永久的に保持でき、今後、材料の見直しなどを図ることで延長できる見込み」とした。

■将来的にフルカラーも可能か

 有機/金属ハイブリッドポリマーの色は、含まれる金属イオンの種類や用いる有機配位子の構造で変わり、鉄イオンを含むと青色系、ルテニウムイオンで赤色系、コバルトイオンで黄色系、銅イオンで緑色系になるという。またコバルトイオンの酸化数を1価まで還元すると黒色になるという。「仮に3原色(赤、緑、青)のポリマーが実現できれば、各ポリマーの酸化/還元する電圧の違いを利用することなどにより、フルカラー表示のECディスプレイも作製できる可能性がある」(NIMS)としている。

■2~3年後の実用化目指す

 NIMSでは今後、開発成果をさらに発展させ、大面積かつ低消費電力で表示できるディスプレイとして乗り物や建物における窓や内装、外装、家具、さらには衣服など「色のあるさまざまなものの色を透明にしたり、着色させたりできる“色の着せ替えを楽しむ新しいライフスタイル”を提案していく予定」とし、「2~3年後に何らかの形で実用化したい」という。

最終更新:7月14日(木)9時51分

EE Times Japan

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