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テクノロジーが企業戦略を支え、「セキュリティ」がテクノロジーを支える──シスコのロビンスCEO

@IT 7月14日(木)14時23分配信

 米シスコシステムズは2016年7月12日から、米ラスベガスで年次カンファレンス「Cisco Live US 2016」を開催し、企業の「デジタルトランスフォーメーションを後押ししていく支援者」としての役割を果たす姿勢を強調した。

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 「テクノロジーこそが企業戦略を握る」と述べた。そして、テクノロジーを通じて企業のデジタルトランスフォーメーションを後押ししていく姿勢に変わりはないことを強調した。

 長年に渡って同社を率いてきたジョン・チェンバース氏に代わり、2015年から同社CEO(最高経営責任者)を務めるチャック・ロビンス氏は基調講演で、「テクノロジーこそが企業戦略を握る」と述べた。そして、テクノロジーを通じて企業のデジタルトランスフォーメーションを後押ししていく姿勢に変わりはないことをあらためて訴えた。

 シスコのみならず、多くのIT企業が掲げるキーワードが「デジタルトランスフォーメーション(デジタルやITの力で、変革すること)」だ。各社それぞれの定義に少しずつ違いはあるが、単なる「IT化」や「デジタル化」という意味合いではない。コスト削減や効率化という文脈ではなく、「企業の価値を高め、差別化するための武器」としてITを捉えるところにその本質がある。ITをオフィスの備品扱いするのではなく、企業活動そのものの中にITを埋め込む動きと表現してもいいだろう。

 最初のキャリアを金融機関でCOBOLエンジニアとしてスタートしたというロビンス氏は、「当時、ITはコストセンターと見なされていた。だが今は違う。テクノロジーは、組織や企業が掲げる戦略の基盤である」と述べ、テクノロジーこそ企業戦略の基盤であると呼び掛けた。

●デジタルトランスフォーメーションを妨げる要因は、「セキュリティ」か?

 企業のデジタルトランスフォーメーションを推進する上で必要な要素は何だろうか? いろいろな答えが考えられるだろうが、ネットワーク、クラウド、それにセキュリティといった事柄は欠かせないはずだ。

 ロビンス氏は、デジタルトランスフォーメーションを進める中、企業がさまざまなサービスを顧客の手元に届け、かつ顧客とインタラクティブな関係を築く上で、「デジタルレディネットワーク」(意訳すれば、デジタルトランスファーに備えたネットワーク、とでもなろうか)という基盤が必要になると述べた。そのネットワークは、簡単に運用できるよう自動化され、あらかじめセキュリティを備え、また多様で効果的なコミュニケーションを通じてコラボレーションを支える役割を果たなくてはならない。もちろん、増大するデバイスやトラフィックに耐えられるだけの拡張性も必要だ。

 そんなネットワークの実現に向けてシスコは、自社での技術開発に加えて積極的に買収を行い、ポートフォリオを拡張してきた。先日日本でもリリースされた「Tetration Analytics」はその1つだ。他にも、IoT(Internet of Things)プラットフォームを提供するJasper、アプリケーションベースのクラウドオーケストレーションを実現するCliQr、ネットワーク分析・可視化を支援するLancopeなどがあり、シスコはそれらの技術をアーキテクチャに統合している。

 中でも、今回のCisco Liveで同社が強調した要素がセキュリティだ。企業が最新のテクノロジーを取り入れ、変革を図ろうと考える際に最も懸念される事項がセキュリティだという。ロビンス氏は「デジタルトランスフォーメーションには包括的なセキュリティが欠かせない。テクノロジーは企業戦略の中核を担うものであり、中でもセキュリティは重要な役割を果たす」と述べている。

 こうした背景から、シスコはCisco Live 2016に合わせ、新たなセキュリティ製品の投入と、それを含む「Cisco Digital Network Architecture(DNA)の強化を発表した。DNAには、複数の拠点に導入されたセキュリティ機器の一括設定・管理をクラウド側で行えるようにする「Cisco Defense Orchestrator」や、スケール可能な分散型機械学習技術を活用し、高度な分析を通じて通常とは異なる挙動を検出する「Cisco StealthWatch Learning Network License」などが含まれている。

 どのようなマルウェアも、フィッシングメールも、悪意あるWebサイトへのアクセスも、ネットワークを経由していることに変わりはない。ネットワークは全てを見ている。「ネットワークをセンサーとして、またネットワークを監視役として活用する」ことによって、それが可能になる。

●IoTを活用して、製品そのもののデジタルトランスフォーメーションを

 Cisco Liveで行われたプレス向け説明会では、IoTもまた、デジタルトランスフォーメーションを推進する重要な要素の1つとして位置付けられた。

 米シスコのシニアバイスプレジデント、ローワン・トロロープ氏は、コンピュータの登場によってビジネスプロセスの自動化、効率化が進み、インターネットの普及によって、企業の相互接続が実現されたという過去の歴史を振り返った。

 そして「ITによって製品を作るためのビジネスの在り方や生産方法は効率化したが、それによって作り出される製品自体が変わったわけではない。だがIoTによって、製品自体のデジタルトランスフォーメーションが実現するだろう」と述べた。

 その変化とは、「モノ」のインターネットという言葉と矛盾するようだが、端的に言うと「サービス化」だ。これまで、企業はスタンドアロンの「製品」を生産していた。それらが相互につながり、データを活用してスマート化すると、それはもはや製品ではなく「サービス」になっていく。通信機能を備えたスマートカーがもたらす本当の価値が、車体そのものではなく、得られたデータとクラウドを活用したメンテナンスサービスや情報サービスであることがその一例だ。

 トロロープ氏は、IoTによる製品のデジタルトランスフォーメーションには、セキュリティも含む新しいテクノロジー群とともに、ビジネスモデルや組織の変革も必要であると述べた。そして、「IoTはデジタルトランスフォーメーションに向けた代理人(プロキシ)であり、シスコはその変化を支援する代理人(エージェント)としての役割を果たしていく」としている。

[高橋睦美,@IT]

最終更新:7月14日(木)14時23分

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