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ただ、たたくだけ――エンジニアにオススメな“打鍵”瞑想法

@IT 7月19日(火)9時50分配信

 先日、テレビにトップアスリートのメンタルトレーナーをしている白石豊さんが出演していました。

【その他の画像】エンジニアのための瞑想法

 白石さんによると、アスリートは「一流になればなるほどプレッシャーが大きく」、下記3つの方法を使って、心を整理するのだそうです。

1. 面談
2. メンタル日誌
3. 瞑想

 筆者も自身の心を整理したいとき、この3つのうちのどれかを実行することが多いので、「どんな業種であれ、大切なことは同じなのだな」と感じました。

 過度な開発スケジュールやシステムリリース前の緊張感、チームをまとめる責任感など、エンジニアもプレッシャーを抱える仕事です。

 そこで今回は、3つのポイントをエンジニア(に加えて、多くのビジネスパーソン)が実践しやすいようにアレンジして、「心の整理術」を解説します。

●エンジニアの「心の整理術」その1――面談

 エンジニアの心の整理術、1つめは「面談」です。面談とは「話す」ことです。

○効果1:気持ちがスッキリする

 意識的に言葉にして「内にたまった気持ちを外に出す」と、頭の中のモヤモヤが整理できて、気持ちがスッキリします。ごちゃごちゃになっている机の引き出しの中を、取りあえず全部出してしまうイメージです。

○効果2:矛盾や本心に気が付く

 「考えを言語化する」ことは、矛盾や思い込み、本心に気付くきっかけになります。

 自分の言葉を1番近くで聞いているのは自分です。「この状況では○○すべきだ」と口にすることで「おや、それではつじつまが合わないな」と矛盾に気付いたり、話したときに胸の辺りがモヤモヤすることで本心に気付いたりすることがあります。

○効果3:新しいアイデアが生まれる

 「人に話す」ことで、問題の解決策や新しいアイデアが生まれる場合もあります。

 親しい知人とおしゃべりをしていると、「あっ、そうそう、あれも話そう」とか、「あっ、そうか! ○○はこうすればいいな」など、全く考えてもいなかったアイデアが突然思い浮かぶことがありますよね。あの感覚です。

○面談相手の選び方

 面談の相手には、本音が話せる「聞き上手な人」を選びましょう。

 聞き下手な人は、「それは違うんじゃない?」と聞き手の価値観で「良い/悪い」を判断したり、「そうそう、そういうことってあるよねー。オレ(ワタシ)の場合はさー」と話を奪ったりします。また、「そういう場合はこうすればいいんじゃない?」といった、求めてもいないアドバイスをしたりもします。こういう人が相手だと自由に話せず、面談でかえってストレスがたまってしまいます。

 聞き上手な人とは、「安心できる人」「心地よく話せる人」「聞き手の意見を押し付けない人」です。

 心地よく話せると、内にたまった気持ちが外に出ていくので、ストレスが減り、気分が明るくなり、自然とモチベーションが上がります。

 聞き上手な人が周りにいない場合は、身近な人に「今日はアドバイスよりも、とにかく話を聞いてほしい」と最初にお願いしておくのも良いでしょう。もし適任者がいなければ、筆者が伺うこともできます。

●エンジニアの「心の整理術」その2――メンタル日誌

 本当は誰かに話したいけれどなかなか話せない場合は、「メンタル日誌」がオススメです。メンタル日誌とは、「心の状態をノートに書き出す」ことです。

 メンタル日誌には、「話す」と同様に「外に出す」効果があります。心の中で抱いているプレッシャーを思うがままノートに書き出すと、ストレス発散にもなります。また、書いた文字を目にすると、自分の考えを客観的に見れるので、頭や心が整理できます。

 メンタル日誌については、連載第6回「孤独なままでいいの?――「誰も分かってくれない」と中間管理職が思ったら」でも説明しました。併せて読んでください。

●エンジニアの「心の整理術」その3――瞑想

 人はうまくいかないことがあると、「この場合、どうすれば解決できるか」というように、頭で「解決策」をいろいろと考えます。頭で考えてもうまくいかないときにオススメなのが、瞑想(めいそう)です。

 瞑想とは、意識的に「考える」のをやめて、「静かに思いにふけること」です。

○効果1:思考力が弱まり、リラックスできる

 瞑想状態に入ると思考力が弱まるので、あれやこれやと忙しく考えてしまう状態から解放されてリラックスできます。

 朝、寝起きのときの「起きてはいる(意識はある)けれど、まだ夢の中にいる」状態に似ています。布団の中にいる「あの、ボーっとした感覚」はとても心地いいですよね。

○効果2:自分の状態が分かる

 瞑想状態では、思考や感情から1歩距離を置いて、それらが自由に動く状態が作られます。心の状態を、もう1人の自分が傍観者となって、ただ眺めているようなイメージです。

 寝起きで夢の中にいるときに、「夢の中にいる自分」を「意識がある自分」が観察しているような感じです。

 傍観者になることによって自身を客観的に観察できるので、今の状態が分かったり、やるべきことが明確になったりします。

●瞑想のやり方

 一般的な瞑想のイメージは、「頭を空っぽにして、何も考えない」「思考を止める」といったものです。言うのは簡単ですが、これがなかなか難しい。

 なぜなら、「何も考えないようにしよう」と思えば思うほど、いろいろな思いが頭の中をよぎりますし、単に目を閉じているのは退屈なので、すぐに飽きてしまうからです。

 そもそも、「何も考えないようにしよう」と考えている状態は、頭の中が空っぽになっていません。また、脳には「○○するな」と否定的な命令をすると、したくなる特徴があります。「太るから食べ過ぎちゃだめ」と思うと、ますます食べたくなるように。

 それよりも、「今、ここ」(ある1点)に集中した方が、瞑想状態に入りやすいのです。

 例えば、椅子にリラックスして座り、軽く目を閉じながらガムをかみます。ガムの味(つまり、味覚です)だけに意識を集中してしばらくかみ続け、ガムの味の変化を、ただ、味わいます。

 呼吸に意識を合わせるのも良い方法です。ゆっくり、深く呼吸をしながら、大きく膨らんだり、しぼんだりする肺の動きに意識を合わせます。深く深呼吸すると胸が広がり、心地良いので一石二鳥です。調子が出てきたら、後は自然な呼吸に任せます。

 他には、体が椅子に触れている部分や、足の裏が床についている感覚に集中したり、頭のてっぺんに意識を集めて、太陽の光が頭から体の中に入ってきて、光の暖かさをじんわりと感じながら、おしりから抜けていくようにイメージしたりするのも良い方法です。

 方法は何でも良いのですが、ポイントは「今、ここ」(ある1点)に集中することです。そして、それを数分間継続します。頭はややボーっとしながらも、意識はとても澄んでいる状態になったら、うまくいっているサインです。

●エンジニアのための瞑想法

 エンジニアなら「ただ、キーボードをたたく」のも良い方法です。

 リラックスして椅子に座り、意識をモニターに集中して、頭にふと浮かんだ言葉を、たた、キーボードで打ち込みます。

 「考える」のではなく、意識はむしろ「ボーっとする」くらいがちょうどいい。心を開いて、言葉や感情が浮かんでは消えるのを観察しながら、それらをただ、傍観者のようにトレースするように打ち込むのがコツです。慣れないうちは単語だけでも構いません。

 何も浮かばなければ、「何も浮かんでこないなー」「あー、退屈―」など、その時々の思いを書き出しても構いません。書き出した言葉に「良い」「悪い」という判断をする必要もありません。心や感情の赴くままに、だた、キーボードをたたけば良いのです。

●「自分との対話」を大切にしよう

 「面談」「メンタル日誌」「瞑想」の共通点は「客観的な立場で、もう1人の自分と対話する」ことです。

 プレッシャーを抱えているときほど、「今のやり方で良いのだろうか?」と現状を疑い、「このままだと失敗するのではないか」と将来に不安を抱きます。それを何とかしようと、あれやこれやと考えてしまいます。それが、ますますプレッシャーになります。

 プレッシャーを感じること自体は悪いことではありません。大切なのは、「プレッシャーでダメになってしまわないこと」。プレッシャーを抱えている自分から離れて、客観的な視点から自分を眺められれば、メンタルコントロールはやりやすくなります。

 そして、もし、プレッシャーを抱えているもう1人の自分に気付いたら、伝えてあげてください。

 「あなたは、今までよく頑張ってきたよね」「今までだって、いろんな困難を乗り越えてきたよね」「今、抱えている困難も、きっと乗り越えられるよ」「近い将来から今を眺めたら、とても良い経験になるよ」と。

●今回のワーク

 大切なのは、「なるほどね」で終わらせないことです。静かな場所に行って、コーヒーでも飲みながら、紙とペンを取り出して考えてみてください。

1 プレッシャーに感じていることがあったら、周りに「聞き上手な人がいないか」探してみましょう。そして、話を聞いてくれるよう、アポイントを取りましょう2 日常的にプレッシャーを感じるようなら、毎日、心の動きをノートに書き出しましょう。遠慮せずに書き出すのがポイントです3 毎日数分、瞑想する時間を作りましょう。意識を「今、ここ」に集中して、自分の状態を、ただ、眺めてみてください

●筆者プロフィール しごとのみらい理事長 竹内義晴:「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。著書「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。

最終更新:7月19日(火)9時50分

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