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《白球の詩》後輩に悲願を託す 前橋商・小林圭介主将

上毛新聞 7月14日(木)6時0分配信

◎「打倒私学」かなわず

 プロ野球を見ていても、独走するチームがあるのは好きではない。条件に恵まれないチームが勝ったり、下位チームが接戦をものにしたりする方が「見ていて熱くなる」。前橋商の主将、小林圭介はそんな考えを持っている。

 少年野球をしていたころ、同じ桐生市内に圧倒的な力のあるチームがあった。「そこに勝ちたい」と練習したが、かなわなかった。桐生相生中在学時は市大会で準優勝2度が最高成績。屈指の好投手で後に桐生第一のエースになる内池翔を擁する桐生川内中に2度とも決勝で敗れた。

 強敵を破ること、いわば下克上への思いが自然と強くなっていったに違いない。2012年夏の大会を高崎商が制したのを最後に公立勢は秋、春を含めた県大会の優勝から遠ざかっている。「ずっと私立ばかりじゃおもしろくない」。私学から誘いもある中、「打倒私学」を目標に前橋商で白球を追うことを選んだ。

 もう一つ、前橋商に進んだ理由がある。「自分の代で桐生から来ている選手はいない。知らない場所、厳しい環境で野球をやるのもいい。野球だけでなく、社会に出て役に立つこともいっぱいあると思う」。野球を通じた仲間も多い桐生を離れ、甘えを捨てて野球に取り組む覚悟だった。

 2年でレギュラーをつかんで臨んだ昨夏は準決勝で健大高崎に1―7で敗れた。新チームとなった昨秋は樹徳に2―4で屈し、4強を逃した。相手の勝負強さを痛感した。

 「打倒私学」の思いはいっそう強まった。最後の夏。自分たちで考えて練習すること、練習時間が限られる分、無駄な動きをなくすこと、そして何より「悔しさを忘れないこと」で私学の壁を乗り越えるつもりだった。

 樹徳との初戦。4点リードを許した四回、2死から押し出しで1点返した後、打席に立った。初球を引っかけ一塁ゴロ。打撃で貢献する「自分の野球」ができなかった。3点差の九回、樹徳は2死一、二塁から2者連続本塁打でダメ押ししてきた。勝負強かった。「さすがだな」。三塁を回る相手選手を間近に見ながら、素直に認めた。

 甲子園には届かなかった。ただ、卒業までグラウンドを離れるつもりはない。後輩たちに伝えたいことがあるから。「悔しさを忘れてしまう、薄れてしまう時がある。そんな時、引っ張っていける人間が出てくればいい」

 副将の生方充樹、松井惇平が口をそろえるように周囲にも、自身にも甘い主将ではなかった。それでもまだ足りないところがあったと振り返る。「自分たちの代だけじゃないから」。体験を次につなげる。

 前橋商に進んだ選択を「間違いじゃない」と言い切れる。「チームのみんなや監督、学校の仲間に出会えたことが自分にとって一番大きい」(米原守)

最終更新:7月14日(木)6時59分

上毛新聞