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福島原発事故、責任問う訴訟30近くも 原告は計1万人

ニュースソクラ 7/14(木) 12:00配信

来年には判決次々、証拠隠滅もあったが法廷で新事実も

 「誰も原発事故の責任をとっていないのはおかしい」

 福島第一原子力発電所の事故で生活を一変させられてしまった被害者たちの多くは、こう思っているだろう。  

 東京電力が今、被害者に賠償しているのは、原子力損害賠償法では電力会社は過失が無くても賠償しなければならないからだ(第三条、無過失責任)。東電は「地震の規模が想定外で過失は無かった」と主張し、自分たちも被害者だという姿勢を崩していない。

 しかし東電が自らの過失で事故を起こした疑いが消えたわけではない。住民たちは、福島地方裁判所や避難先など全国30か所近くの裁判所で東電や政府に損害賠償を求める集団訴訟をおこしている。事前の対策や事後の対応は十分だったのか、事故の責任を明確にすることがねらいの一つだ。原告は計約1万人にもなる。

 各裁判所で、被害実態の陳述、津波の研究者などを呼んだ証人尋問、現場検証などが進められている。前橋地裁は10月に結審し、来年早々にも判決が出される。千葉なども来年、判決が続きそうだ。

 これらの集団訴訟とは別に、勝俣恒久会長ら事故当時の東電幹部が今年3月、業務上過失致死傷の罪で東京地裁に起訴された。この刑事裁判も近く始まる見通しで、法廷での事実解明に期待がかかる。

 初期の事故調査や検察の捜査が甘く、東電や政府に証拠隠滅を許した。それが「天災か人災か」の検証を難しくし、長引かせている。

 事故直後、「炉心溶融」という言葉を使わないように東電社長が副社長に指示していたことは、東電の社内調査で2012年6月までにはわかっていたのに、東電が白状したのは、つい最近のことだ。

 津波の事前対策については、電気事業連合会(電事連)が、原発に都合の悪い政府の津波想定に細かく干渉し、政府報告書を書き変えさせようとしていた。集団訴訟の中で政府が提出した資料で明らかになった。ところが電事連で各電力会社の役員がその書き換えを検討していた議事録は、事故から1年後までは保存されていたのに、その後電事連が行方不明にさせている。

 旧原子力安全・保安院の担当者は、事故の1年前、津波をきちんと調べることを止められ、上司から「余計な事を言うな」「クビになるよ」と圧力をかけられていた。政府の事故調査委員会はそれを知っていながら、2012年にまとめた報告書で一言も触れていない。

 電力会社や政府の規制当局が社会の信頼を得られるか、事故の真摯な検証がなされるかどうかにかかっている。水俣病で原因企業チッソの責任が確定したのは患者が公式確認されてから17年後、国や県の責任が司法の場で確定したのは48年後の2004年だった。そんなに時間をかけてはいけない。

■添田 孝史(サイエンスライター 元朝日新聞記者)
1964年生まれ。大阪大学大学院基礎工学研究科修士課程修了。サイエンスライター。1990年朝日新聞社入社。大津支局、学研都市支局を経て大阪本社科学部、東京本社科学部などで科学・医療分野を担当。97年から原発と震災についての取材を続ける。2011年に退社、以降フリーランス。東電福島原発事故の国会事故調査委員会で協力調査員として津波分野の調査を担当した。

最終更新:7/14(木) 12:00

ニュースソクラ