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角松敏生、35周年公演は6時間40曲!100人“協奏”の壮大なスケール/ライブレポート

MusicVoice 7月14日(木)15時50分配信

ミュージシャンの角松敏生が去る2日、神奈川・横浜アリーナでデビュー35周年記念公演『TOSHIKI KADOMATSU 35th Anniversary Live~逢えて良かった~』を開催した。大規模改修工事終えた“新”横浜アリーナ最初の公演。その記念すべき“こけら落とし”は、参加ミュージシャン100人、公演時間6時間半という壮大なスケール。1万2000人の観客を前に全40曲を奏で、歌い届けた。

ライブ写真

■豪華ミュージシャン

 贅沢極まりない6時間半だった。常に最高峰の音楽を創作し続ける角松敏生が、楽曲の世界観と音像を忠実に、且つ生音で再現するのが角松流ライブコンサート。この日も、ドラムだけで3台というスケールで届けられた。

 ▽参加ミュージシャン
 <Dr>村上“PONTA“秀一・玉田豊夢・山本真央樹、<B>山内薫、<G>梶原順・鈴木英俊、<Key>小林信吾・友成好宏・森俊之、<Per>田中倫明・大儀見元、<SAX>本田雅人、<Tb>中川英二郎、<Tp>西村浩二・横山均、<Cho>チアキ・凡子・片桐舞子(MAY’S)・為岡そのみ・vahoE・鬼無宣寿、<Guest>吉沢梨絵。

 角松との所縁が深い、村上“PONTA“秀一をはじめ、角松音楽の“再現”に必要不可欠ななんとも豪華な面々が参加。角松自身もギターとパーカッションを併用した。そんな彼らが立つステージもまた壮大だ。所狭しと設けられた数々の楽器は、薄暗い場内のなかで、深い青色の光を浴び、それによって作られた影がまた重厚さを際立たせた。さながら要塞のよう。

 ステージに広がる、そうした光景に観客もワクワク感を隠せない。角松ファンなら見慣れた光景とも言えるが、それでも開演を待つファン同士の会話にこんなやりとりがあった。「贅沢だよね。音質も良いし期待できる」「音環境が良さそうだから楽しみ」。さすがの角松ファンである。

 これだけの陣形をみても、ここで発せられる幾つもの音が更に重なって出来る音がいかに繊細でダイナミックかを容易に想像できる。

 そう期待を膨らませていると、ステージ両脇に設置されたスクリーンに映像が流れた。この日を迎えるにあたり、公演の意義を見つけるため旅に出た事を回想するシーン。陶芸家・島村真司氏との出会い、陶芸作品を創作することで得た心情などを紹介していく。周年公演に込めた意義を説き、サブタイトル「逢えて良かった」に寄せた想いを伝えた。

■意表を突くオープニング

 そうした想いを観客と共有した後、その“要塞”にメンバーが集まる。拍手を浴びながら、タキシード姿でゆっくりと歩を進める角松。中央に立つと右手でハットを取り頭を下げる。と同時にどこからともなく大歓声が飛び交う。その歓声、視線は、アリーナ席の中央に設けられた正方形の特設リフトステージに向けられている。そう、メインステージにいるのは偽物で、こちらが本物の角松。意表を突く登場に驚いた歓声だった。

 カラフルなシャツにピンクのパンツという装いの角松はニヤリと笑みを浮かべ、高さ3メートル程まで上昇したリフトステージで「これからもずっと」を歌う。周年公演はこうして、してやったりのサプライズで幕を開けた。2階席のファンはほぼ同じ目線、1階席は見上げる格好で角松を見る。その頭上で白光が煌々と輝くなか、爽やかな表情で歌う角松は、ひとり一人の観客に届けるように目線を送り、そして手を振った。

 ニクい演出で観客を喜ばせると、曲終りにステージを降りて、2階席袖に設けられた通路を伝ってメインステージへと移動する。その道中はインストが流れ、観客から求められるハイタッチにも応えた。“所定の位置”で今一度深々と頭を下げると、アコギを構えて再び一礼。インストを止めて短く挨拶する。「みなさん、こんばんは。角松敏生です」。本編はここからがスタートと言わんばかりに3曲目は「Statin’」。

■「SEA BREEZE」を完全に再現

 この日のライブは「ACT-1」と「ACT-2」の2部構成で展開された。演奏前には角松のユーモアたっぷりの解説が入るなど“楽曲の背景を訪ねて角松音楽を知る”授業さながらの“プログラム”は時間の経過を感じさせなかった。ただ、6時間半にもおよぶ長丁場。角松も途中のMCで「既に後悔をし始めています。時間との闘い。マラソンみたいにランナーを沿道で見守る様に」と自身をマラソンランナーに見立てるほどの過酷なステージ。

 その折り返しまでの前半「ACT-1」では、「色んな世代にも広がった」と今年3月に発売され、初週売上1万枚を超えたアルバム『SEA BREEZE 2016』の収録曲を曲順そのままに再現。89年発売当時のアナログマルチテープをアーカイブし、当時の音源を活かしつつ、角松自身の歌を再録音。「最高のミュージシャンが演奏しているのに僕だけがそこに達していなくて。当時よりも高まった歌唱力で録り直したかった」という思いで作られた作品で、自然と『SEA BREEZE 2016』を再現する格好となった。

 「もちろんこの作品を表現するにはこの人は欠かせません」と、当時レコーディングドラマーだった村上を迎え入れた。器用でダイナミックな玉田・山本のドリミングに対して、軽快でありながらもアダルティな村上のドラム裁きが絶妙なグルーヴを生み出し、そこに乗る各パートの音色によって華やかな音像を作りあげた。現代に蘇る音源、そして当時の描写はここに更新され、色あせない爽やかな風を送り込んだ。

 「レコードを裏返してB面に針を落とします」と語って披露したB面1曲目、本編12曲目「YOKOHAMA Twilight Time」は全ての楽器が一斉に鳴り響く強烈な音像に、観客も圧倒されながらもその迫力に心を躍らせた。そして、角松の歌声は優しく爽やかでありながらも、この高揚感に満たされて時折ソウルフルに。その歌声はサックスと絡み、更にセクシーさが増した。

 『SEA BREEZE』収録の全8曲を披露すると会場は割れんばかりの拍手。「さあ行きますか!」と85年リリースのシングル「初恋」を歌い、「ACT-1」は終了。出演者全員がステージ前に横並びになって角松が「こういうのも珍しいけど、以上のメンバーでお届けします」と一笑いを入れてステージを後にした。

■20分のプログレに、疾走するインスト

 30分のインターバルを挟んでの「ACT-2」は、“角松音楽”の深層部に傾倒した。白のスーツに青のシャツ、オレンジのネクタイで再登場した角松は、曲ごとにパート編成を変えた。まず最初に届けた「RAIN MAIN」はキーボード3人、パーカッション2人を迎えての特別バージョン。ここにコーラス6人が加わった。レンガ畳みの道を傘をさして優雅に歩く女性の情景が浮かぶ軽やかな曲は3つの異なるキーボードの音色、そしてその上下を並走するコーラスによってその物語をより鮮明に映し出した。

 その編成での「IZUMO」では、パーカッションが一段と強調され、リズミカル且つダイナミックに。それに合わせるようにソウルフルに歌い上げる角松。間奏では、キーボードに指揮を執って音を誘った。

 この章の3曲目に披露したのは「The Moment of 4.6 Billion Years」。「アルバム収録曲を飛ばして聴いてしまう時代に問題定義するように制作した」と前説を入れた同曲は演奏時間20分のプログレ。2面のスクリーンに川や森、都会の環境映像を流し、視覚と聴覚でその世界観を表現する。

 その世界観は、ジャケットを脱ぎ臨戦態勢の角松の背後から地を這うキーボードの低音から始まる。聖歌隊の合唱が加わり、やがてドラムが力強い音を轟かせる。そして、キーボード、ベース、サックス、ギターと旋律を放っていく。入れ替わる楽器隊の攻守。音色は時に単奏し、時に合奏、交差したかと思えばDNAの螺旋のように絡み合う。自由自在に飛び交う音像は海を颯爽と泳ぐイルカのようでもあった。

 6曲目のインスト楽曲「OSHI-TAO-SHITAI」はパート毎にバトルを展開。ドラム3台によるユニゾンから始まり、その合間を縫うように山内のベースが絡み、村上のソロドラムへと流れ、本田のサックスが重奏する。やがて、森のキーボードに引き継がれ、友成とのセッションを始める。それを角松がパーカッションで煽る。その後、角松はギターに持ち替え奏でると、そのギターサウンドを梶原、そして鈴木へと渡す。両極にある2人のサウンドは互いを行き来した後、ベースの山内が受け取り、グルーヴィーな低音へと変える。更に角松がパーカッションで参戦すると、今度は大儀見とのリズムセッション。激しいやり取りが続いたあと、ドラムの玉田と山本の打音が響き渡り、そのままドラム対決。最後は村上が静と動を巧みに使ったドラミングで空間を支配すると、意表を突くドラムカウントを始め、“通常路線”に帰した。この茶目っ気に角松も笑顔を見せた。F1のように凄腕ドライバーによるスリリングな“走り”に場内は大歓声に沸いた。

 その後は趣向を変えて、35年の中で角松がプロデュースした作品を女性コーラスとデュエットするという“和みコーナー”へ。特色ある女性歌手の美声によって色を変えるように角松も歌唱を使い分け、華を添えた。優雅なひと時を過ごした後、アルバム『THE MOMENT』のツアーで全国各地の公演で参加したChoirが総勢98人の大所帯で登場、「Get Back to the Love」を披露し、歌の素晴らしさを共有した。

 そして、80年代を代表する作品「After 5 Crash」「RUSH HOUR」「Tokyo Tower」「Girl in the Box」を歌唱し、「今夜はどうもありがとうございました!」と一言挨拶して「ハナノサクコロ」で本編は終了した。

■アンコールも壮大

 オーディエンスからの大声援と拍手の嵐を受けてのアンコール。サマーチューンで人気の高い「浜辺の歌」、「ILLUMINANT」ではキティとダニエルが応援に駆け付けてダンスを披露、ライブの定番「Take You To The Sky High」は客席から無数の紙飛行機が飛ばされた。

 アンコールだけでも5曲が披露されたが、興奮冷めやらぬ会場からは再びのアンコール。ダブルアンコールに応えた角松は、最近感じる事を打ち明けてから「新しいものをしながらも、下の世代に残すこともしないといけないなと思う。前向きな曲を届けたい」と語って「Always Be With You」を披露。本田のフルートが渡り鳥のように音色を遠くに響かせると、角松はそれに乗って空を泳ぐように優雅で力強く歌う。ステージには大量のスモークがたかれ“天空の城”ならぬ“天空の要塞”に。そして、サックスが未来を暗示するような神秘性を持った音色を奏でた。

 そして、角松は感銘を受けたという、高倉健さんの言葉「拍手されるよりも、拍手をした方が豊かになる」を引き合いに、まず自身が会場に居る全ての者に拍手を送り、次にバンドメンバー、そしてファンそれぞれに促した。この拍手をもってメンバーが退場。角松一人、再度中央のリフトステージに移動する。

 アコギを構えると、ステージは高さ5メートルほどまで上昇し、リズミカルに弾き語る。最後は「NO END SUMMER」。ここまで6時間走ってきた。体力も限界に近づき満身創痍で弾き語っていると、突然、サウンドがダイナミックに。メインステージに目を向けると、戻ってきたバンドメンバーが奏でていた。終盤には、一切の音を消して観客と大合唱。最後まで壮大なスケールで届けられた。

 6時間半で40曲を届けた角松は多くのファン、多くのミュージシャンに囲まれていた。肩で息をしながらも達成感に満たされた表情の角松は何度も「ありがとう」の言葉を口にして、ラストは「逢えて良かった!」と声を張って周年公演を締めくくった。

■セットリスト

「TOSHIKI KADOMATSU 35th Anniversary Live~逢えて良かった~」
2016年7月2日YOKOHAMA ARENA

ACT-1
01.これからもずっと
02.Instrumental
03.Startin’
04.Realize
05.CINDERELLA
06.OFF SHORE
07.LUCKY LADY FEEL SO GOOD
08.Dancing Shower
09.Elena
10.Summer Babe
11.Surf Break
12.YOKOHAMA Twilight Time
13.City Nights
14.Still I’m In Love With You
15.Wave
16.初恋

ACT-2
01.RAIN MAN
02.IZUMO
03.The Moment of 4.6 Billion Year
04.RAMP IN
05.DESIRE
06.OSHI-TAO-SHITAI
07.Duet #1(DADDY)
08.Duet #2(鏡の中の二人)
09.Odakyu CM Duet
10.Duet #3(Never Gonna Miss You)
11.Duet #4(Smile)
12.Get Back to the Love
13.After 5 Crash
14.RUSH HOUR
15.Tokyo Tower
16.Girl in the Box
17.ハナノサクコロ

ENCORE

01.君のためにできること
02.浜辺の歌
03.ILLUMINANT
04.ILE AIYE~WAになっておどろう~
05.Take You To The Sky High

MORE ENCORE
01.Always Be With You
02.No End Summer

最終更新:7月14日(木)15時50分

MusicVoice