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【ユーロ総括】イングランド代表はなぜ国際舞台で期待を裏切り続けるのか?

SOCCER KING 7月14日(木)18時33分配信

 終わってみれば、いつものイングランドだった。国際大会での失望には慣れっこの国民とファンは「期待しない」という予防線を張っていたはずだが、それでも、攻撃陣が近年稀に見るタレントぞろいだったことを考えれば、やはり落胆は大きい。

 しかも、鬼門の8強越えどころか16強止まりで、敗れた相手が伏兵アイスランドだったのだからなおさらバツが悪い。アイスランド戦翌日の現地紙は、「イングランド史上最大の屈辱」「お手上げ」など、これでもかというほど酷評の嵐。試合直後に辞任したロイ・ホジソン監督に対しては「いなくなって清々した」という辛辣な見出しまで躍った。また、つい数日前の国民投票で決まったイギリスのEU離脱に引っ掛けて、ドイツやイタリアの新聞にまで「もうひとつのBREXIT(ブレグジット)」とイジられる始末だった。

 その上、今回はいつものようにPK戦の不運を嘆くこともできなければ、デイヴィッド・ベッカムやウェイン・ルーニーの退場劇も、フランク・ランパードの“幻のゴール”も、ましてや「神の手」に屈したなどという“酒の肴”になるようなドラマもない。本当に、ただただ失意しか残らないユーロ2016だった。

 敗因は、ホジソンが多士済々の個をチームに落としこむ最適解を見出せなかったことに尽きる。ホジソンはウインガーを減らして5枚のストライカーをフランスに連れてきたにも関わらず、4-3-3に固執した。1トップを任せたプレミア得点王のハリー・ケインが予想外のスランプに陥り、両翼もラヒーム・スターリングはキレを欠き、アダム・ララーナは好調だったがいかんせんシュートが枠に飛ばなかった。結果、グループステージでは24カ国中2番目に多いシュート数を記録しながら、ゴール欠乏症に泣かされた。代表OBのギャリー・リネカーが「プランBがなかった」とコメントしたように、大会前のテストマッチでは何度か試していた2トップへのシフトに、なぜ本番で踏み切らなかったのか。大きな疑問が残る。

 ジェイミー・ヴァーディとダニエル・スタリッジは、唯一の白星を挙げた2戦目のウェールズ戦でそろって途中出場からゴールを決めたが、大会を通して見ればヴァーディは相手にスペースを消された状態でしか起用されず持ち味が出せなかったし、不慣れなウイングで使われたスタリッジも本領を発揮できなかった。セントラルMFへのコンバートが話題になったルーニーは随所で高い能力を示したが、そもそも中盤起用は直前の親善試合でもテストなしの“ぶっつけ本番”。エリック・ダイアーやデレ・アリとのバランスは理想的だったとは言えず、結果的にルーニーもアリも創造力をフルには発揮できず、共倒れのような形になってしまった。

 敗退後、アラン・シアラーが放った「大会4試合目でまだベストメンバーとフォーメーションを探しているのが正しいわけがない」という言葉が重く響く。イングランド代表チームを論ずる際の常套句に「put a square peg in a round hole(丸い穴に四角い杭を打つ)」という言い回しがあるが、このフレーズがやはり今回も当てはまった。スティーヴン・ジェラードとランパードを共存させようとして失敗してきた過去の監督たちと同じように、今大会のホジソンもまた、チームの機能性を無視してただスターを戦術ボード上に並べただけだった。彼のチームは、最後まで明確なプレースタイル、戦略、ベストメンバーが見えてこなかった。準備不足は明らかで、戦術も場当たり的。ルーニーやスタリッジの起用法に限らず、ケインにCKを蹴らせ、フィットネス不足のジャック・ウィルシャーにこだわり、スロヴァキア戦で先発を6枚も入れ替えてチームを混乱させ、アイスランド戦では1点を追う場面で87分までマーカス・ラッシュフォードの投入を渋り……挙げればキリがない不可解な采配のオンパレードでは、失脚も必然である。

 このようにホジソンが選手の長所を引き出せなかったのは事実だが、とはいえ選手に責任がなかったわけではない。たとえば、アイスランド戦の後半における選手たちの心理状態を、2年前のワールドカップで主将を務めたジェラードはこう説明する。

「逆転されてしまうと、選手たちは負けて帰国すればどれほど批判されるかを考えてしまう。パニックに陥り、やるべきだと分かっていることができなくなる。試合前に言われたことや準備してきたこともすべて忘れてしまい、ミスをする。メンタルが弱いと言われたらその通りだが、それこそが50年もタイトルを獲得できていないイングランド代表に身についてしまった気質なんだ」

 ジェイミー・キャラガーも、イングランド代表が精神的に「軟弱だ」と酷評する。彼は、アントニオ・コンテ監督の綿密なゲームプランを完璧に遂行し、ベルギーやスペインを破ったアズーリの選手を引き合いに出してこう語る。

「準々決勝に進んだイタリアの選手が、イングランドの選手より技術的に優れているとは思わない。エマヌエレ・ジャッケリーニはサンダーランドで試合に出られなかったし、グラツィアーノ・ペッレはイングランドなら23人に入れなかっただろう。だが、彼らの方が上にいる。彼らは抜け目なく、状況に対処する方法を知っている。それぞれの選手が自分のやるべき仕事を理解しているから、システムが絶対に壊れない。重圧が強まっても、決してパニックにならない。イングランドはどうか? 目に見えて縮こまってしまう。アイスランド戦がそのいい例さ」

 同じ英国人でも、ウェールズや北アイルランドのような“持たざる者たち”のチームなら、実力不足を反骨心や結束力でカバーし、潔くできることだけを追求できるが、なまじプライドが高いスリーライオンズのエリートたちはそれができない。プレミアでなら発揮できるスキル、エネルギー、スピリットを、国際舞台では体現できないのだ。規律、忍耐、それにストレス耐性が欠如しているから、先制後わずか15分弱で逆転を許したアイスランド戦、ラスト数分で追いつかれたロシア戦のようにここ一番で脆さが出てしまう。

 その根本的な原因について、ジェラードは「過去のトラウマ」と言い、キャラガーは「若いうちから甘やかされ、大金をもらってきた」アカデミー世代の弊害だと考える。ライアン・ギグスもキャラガーに同調し、“温室育ち”の選手たちは「言われたことをやるだけで、ピッチ上で問題を解決することができないロボットばかり」だと警鐘を鳴らす。いずれにせよ、文化的な背景に議論が及ぶほど問題の根は深く、一朝一夕で解決できるものではなさそうだ。

 選手の個性を引き出し、一枚岩にまとめられる新監督の選定も重要だが、こうしたメジャートーナメントでの“イップス”を徐々にでも改善していかない限り、2年後のロシアでも、イングランドは同じことを繰り返すのだろう。

(記事/Footmedia)

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最終更新:7月14日(木)19時41分

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