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もし金塊窃盗の造幣局員が金投資をしていたら

ZUU online 7月15日(金)8時10分配信

お堅いイメージがまとわりつく公務員といえども、1人の人間には変わりない。時には理性をコントロールできなくなるのだろう。

事件が発覚したのは2016年6月。なんと、造幣局の職員が展示品の約15キロの金塊を1つ盗み、逮捕されたのだ。硬貨や勲章を製造する権威ある機関での事件で、盗み出したものが金塊だったことも関心を高める効果があったと言えそうだ。

盗み出された金塊の評価額は約6384万円。決して少額ではない。しかし、金塊を盗んだ理由は「FXでの損失」だとしているが、もし金塊を盗むのではなく、金投資をしていれば、穴埋めできていたかもしれない。今回は、犯行時からの金価格の推移とともにシュミレーションしてみる。

■有事の金、各国政府も資産として保有

紙幣や株式は、国家や会社の破産、スーパーインフレにおいては紙くず同然になってしまう。そんな恐れがある一方で、「有事の金」と言われるほど、金はインフレや国家破たんのリスクに備える現物資産として、ポートフォリオに組み込まれることもある。

各国の政府や中央銀行も外貨建ての資産である外貨準備に加えて、金を資産として保有する例も一般的だ。日本政府も6月末時点で、2400万6000トロイオンス(1トロイオンス=約31.1グラム)を所有している。歴史的にも金は貨幣、貴金属として用いられ、世界各地でその価値が共有されてきた。年間約3000トン産出されており、原油や穀物などといった他の商品先物と同じく、市場で価格が決められる。

金投資にはさまざまなスタイルがあり、毎月定額での純金の積み立てや、金ETFも証券会社で取り扱っている。株式からの配当や債券の利息などのインカムゲインはなく、購入時より高い値段で売却きたときのキャピタルゲインを狙うのが基本的な仕組みだ。

またオーストラリア・パース造幣局のカンガルー金貨、オーストリア造幣局のウィーン金貨ハーモニー、カナダ王室造幣局のメイプルリーフ金貨も人気で、10分の1オンス(約3.1グラム)単位から購入が可能だ。

■年初から右肩上がりだった金の価格

その金価格は、株式同様、世界経済や地政学リスクが高まった際には、値動きが荒くなり、注目を集めると言われる。ちなみに、今回の事件で造幣局職員の一人が金塊を盗み出した日の金価格は、1オンス=1077ドルだった。15キロの金塊は約57万ドルに相当する。

その後、2016年第1四半期は、中国経済の減速懸念、米国の利上げスピードの緩和などから、金融市場に不透明感が漂い、投資家がリスク回避のために、金に資産を振り向けたことで金価格は右肩上がりに。

盗みを働いた1月からわずか5カ月ほどの間、日銀がマイナス史上初めてとなるマイナス金利を導入するなど、マーケットで先行きの不透明さからリスクを回避して金が買われ、約20%も値上がりした。その結果、同職員が逮捕された6月20日には、1オンス=1288ドルまで上昇しており、利益の獲得を狙えたのは間違いないだろう。

逮捕された造幣局の職員は、外国為替証拠金取引の損失を穴埋めするために、犯行に及んだと供述。職員が抱えていた損失の額は明らかになっていないが、金塊を博物館から盗み出す代わりに、同等の金額を金投資に回していれば、ひょっとしたらその損失をカバーできたかもしれない。

金投資には、世界経済の動向、地政学リスク、為替相場といった要因が絡み合うが、2016年上半期のような相場環境ならば、金塊を盗んで質に入れたのがばれて逮捕されるより、金投資に挑戦したほうがよっぽど合理的だっただろう。(ZUU online 編集部)

最終更新:7月15日(金)8時10分

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