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なぜ、Windows 10のWindows Updateは嫌われているのか?

@IT 7月15日(金)6時10分配信

●不評なWindows 10のWindows Update、実はイケてる? イケてない?

【その他の画像】現状の「Get-WindowsUpdateLog」コマンドレットの「残念」な結果

 既にWindows 10を利用している方ならご存じとは思いますが、Windows 10ではオペレーティングシステム(OS)を最新の状態に更新する「Windows Update」の機能が、以前のWindowsから大きく変更されました。

 コントロールパネルからは「Windows Update」アプレットが削除され、「設定」アプリにWindows Updateは統合されました。そして、この新しいWindows Updateは、Windows 10が登場して1年が経過しようとする今もなお、多くの一般ユーザーを、そしてWindows PCを管理する企業のIT部門の担当者を悩ませているようです。

 まだWindows 10を利用したことがないという人もいると思うので、「なぜ、Windows 10のWindows Updateが不評なのか」を考えてみました。

○更新オプションの選択肢が少ない

 Windows 10のWindows Updateの更新オプションは、「自動(推奨)」がデフォルト(既定)です。更新プログラムは定期的にチェックされ、自動的にインストールが開始されます。そして、再起動が必要な場合は、“PCが使用中ではない”とWindowsが判断すると自動的に再起動してしまいます。ユーザーにしてみれば使用中という状況であっても、自動的に再起動することもあるので、それがWindows Updateの印象を悪くしているようです。

 勝手に再起動されるのを回避したければ、「再起動の日時を設定するように通知する」に変更できます。しかし、Windows 8.1以前はもっと選択肢がありました。ダウンロードは自動で行わせ、インストールの準備が整ったら通知するように構成したり、更新の検出だけを行い、ダウンロードとインストールはユーザーの指示で行ったり、あるいは完全に手動で更新を確認し、インストールしたりするという選択ができました。

 ポリシー設定をサポートするWindows 10 Pro/Enterprise/Educationエディションの場合は、「ローカルコンピューターポリシー」や「グループポリシー」で、以前の更新オプションを構成することも可能です。しかし、Windows 10 Homeエディションは、「自動(推奨)」または「再起動の日時を設定するように通知する」の二者択一です。レジストリ設定で更新オプションを構成することもできません。

 選択肢が少なくなったということで、「自由が奪われた」「主導権を握られた」と感じるユーザーも多いのではないのでしょうか。また、Windows 10にアップグレードするつもりがないのに、勝手にアップグレードされてしまったと感じているユーザーにとっては、Windows UpdateによるWindows 7やWindows 8.1からWindows 10への“半ば強制的”ともいえるアップグレードを思い出させ、単にWindows Updateに対して拒否反応を示しているだけかもしれません。

○問題のある更新をブロックするのが面倒

 Windows 8.1以前のWindows Updateでは、検出された更新プログラムをインストールするかどうかを選択することができました。「重要な更新プログラム」は自動的にインストール対象として選択されますが、非表示にすることで、以降のWindows Updateではインストール対象として検出されないように構成することもできました。

 Windows 10のWindows Updateでは、インストール対象を選択する手段が“OSの機能として存在しません”。重要度に応じた選択オプションもなく、検出された更新プログラム(ドライバを含む)は全てインストールする以外にありません。

 マイクロソフトは、更新プログラムやドライバに重大な問題があることが発覚した場合、Windows Updateからそれを取り下げ、修正された別の更新にプログラムに置き換えます。しかし、その作業に間に合わなかったPCは、問題のある更新プログラムやドライバがインストールされてしまい、PCが正常に起動しない、突然ストップエラーでブルースクリーンになるなどの重大なトラブルに見舞われることになります。

 マイクロソフトは救済策として「Show or hide updates」(wushowhide.diagcab)というトラブルシューティングツールをダウンロード提供し、更新プログラムやドライバがインストールされるのをブロックする手段を提供しています。

 しかし、このツールが役に立つのは、インストール前に問題がある更新プログラムであることを知っているか、またはインストールされてしまった問題のある更新プログラムをアンインストールできた後か、またはバックアップやシステム状態からインストール前に復元できることが必要です。

 これでは、多くの一般ユーザーが簡単にできるトラブルシューティング方法とは言えません。既定では、Windows UpdateでPCが自動的に(勝手に)再起動するのですから、その後、PCが正常に起動しなくなった場合、その原因も対処方法も分からず、手に負えないというユーザーがほとんどではないでしょうか。

○更新プログラムのダウンロードサイズが分からない

 Windows 8.1のWindows Updateでは、更新プログラムを自動的にダウンロードするように構成していなければ、インストールする更新プログラムを選択して、ダウンロードの開始を指示する際に個別の更新プログラムと合計のダウンロードサイズを確認できました。また、ダウンロードを開始すると、ダウンロードの進み具合を確認することもできました。

 Windows 10のWindows Updateは、手動で更新を確認した場合、更新プログラムの名前は分かりますが、そのダウンロードサイズや具体的な進行状況は示されません。これでは、低速/低帯域のネットワークでインターネットに接続されている場合、いつ終わるのかと心配になったり、空き領域不足のPCでダウンロードできるのかと不安になったりするでしょう。

 更新プログラムのダウンロードサイズの目安は、「Microsoft Update カタログ」のサイトで検索すれば確認できます。ただし、「累積的な更新プログラム」である場合、これは最大サイズの目安にしかなりません。

 Windows 10では、随時提供される更新プログラム(緊急のセキュリティ更新やドライバなど)と、過去の更新を含む累積的な更新プログラムがあります。累積的な更新プログラムは、「既にインストールされている過去の更新プログラムとの差分」がダウンロードされるため、Microsoft Updateカタログが示すサイズは、実際のダウンロードサイズとは異なるのです。

 おそらく、PCにインストール済みの更新をスキャンしながらダウンロードするため、事前にサイズを示すことができないのでしょう。しかし、ダウンロードサイズが大きくなる可能性が高いのが、この累積的な更新プログラムなのです。

 Windows Updateでは「機能アップグレード」と呼ばれる、新しいビルドも配布されます。機能アップグレードは、Windowsの新バージョンへのアップグレードインストールのようなもので、ダウンロードサイズは数GBになるはずです。

 初めての機能アップグレードは2015年11月に配布された「Windows 10 バージョン1511、ビルド10586」です。2016年8月中には2回目の機能アップグレードとなる「Windows 10 Anniversary Update」(バージョン1607の予定)が配布される予定です。

 なお、Windows 10では、モバイルインターネット接続(Wi-Fi接続を含む)を「従量課金接続」として設定することで、その接続では更新プログラムをダウンロードさせないように構成することが可能です。ダウンロードサイズが接続料金やサイズ制限に影響する場合は、設定を確認することをお勧めします。

○更新回数が多くなった(気がする)

 Windows 8.1以前は、通常時「Patch Tuesday」と呼ばれる第二火曜日(日本では第二火曜日の翌日)に多数の更新プログラムが同時に提供されてきました。緊急性の高いセキュリティ更新については、Patch Tuesdayと関係なく提供されることもありますが、それほど回数は多くなかったと思います。

 Windows 10では、緊急性の高いセキュリティ更新や累積的な更新プログラムは随時提供されます。だからといって、Patch Tuesdayでの更新プログラムの提供がないわけではなく、毎月のPatch Tuesdayには累積的な更新プログラムや「Adobe Flash Player」の更新プログラムが提供されてきました。

 PCを起動している限り、Windows 7やWindows 8.1よりも確実に更新プログラムのインストールや、それに伴う再起動の回数は増えています。気のせいではありません。ただし、Windows 10では、個別に提供された更新プログラムや、過去の累積的な更新プログラムが、新しい累積的な更新プログラムに含まれる形で提供されるようになりました。よって、PCを利用する機会が少なければ、最新の累積的更新プログラムと、累積的な更新に含まれない新しい更新プログラムのインストールだけで済むため、更新の回数は減ります。

○これまでの知識と経験が役に立たないことがある

 Windowsを長く使ってきたユーザーの多くは、Windows Updateに関して、自分なりの知識やテクニック、PC固有のクセのようなものを蓄積してきたと思います。例えば、Windows Updateが進まないときには、Windows Updateのコンポーネントをリセットすると回復する、「Windows Updateサービス(wuausrv)」を再起動すればうまくいく、「悪意のあるソフトウェア削除ツール」のプロセスである「mrt.exe」を強制終了すれば進む、マルウェア対策のリアルタイム保護を一時的にオフにすれば進む、などです。

 Windows 10のWindows Updateは、以前のWindowsから大きく変更されています。これまでの知識やテクニックは役に立たないかもしれませんし、間違った対応でより悪い状況にしてしまうかもしれません。例えば、前回説明したように、Windows 10では「wuauclt /detectnow」は機能しません。

 以下のマイクロソフトのサポート技術情報を見る限り、Windows Updateのコンポーネントを手動でリセットする手順は変わっていないようです。

 しかし、自動でリセットするツールはWindowsのバージョンによって異なります。このサポート技術情報は、今後、変更される可能性もあるので、トラブルシューティングの際には最新の情報を確認することをお勧めします。なお、筆者はWindows 10でWindows Updateのコンポーネントをリセットしなければならない状況になったことは、これまでありません。

●不評なWindows 10のWindows Update、時間がたてば再評価されるかも……

 Windows VistaやWindows 7はリリースされてからかなりの時間が経過し、更新プログラムの数は最後のサービスパック(Service Pack:SP)が提供されてから、100以上になっていると思います。そのため、何らかの理由でWindows VistaやWindows 7をクリーンインストールしなければならなくなった場合、最新の状態にまで更新するには時間と労力を要するようになっています。そして、クリーンインストールなのに、Windows Updateを完了できないというトラブルもあるようです。

 先日、Windows 7 SP1向けに2016年4月までにリリースされた全ての更新プログラム(セキュリティ修正を含む)をまとめた「ロールアップ更新プログラム」が提供されました。以下の記事では、Windows 7 SP1のクリーンインストールからのWindows Updateと、クリーンインストールにロールアップ更新プログラムを適用してからのWindows Updateを比較しました。

 その後、筆者はWindows Vistaはどういう状況なのか気になり、Windows Vista SP2のクリーンインストールからWindows Updateを実行してみました。しかし、Windows Updateでは、1つも更新プログラムをインストールすることができませんでした。マイクロソフトが公開している一般的なトラブルシューティング手法を試してみても、Webで検索できる民間療法的な手法を試してみても、数日間放置しても、全く更新されない状況です。

 Webを調べてみると、毎月のWindows Updateが異様に時間がかかる、Windows Updateが一向に進まないというトラブルはWindows 7を中心にたびたび繰り返されているようです。Windows Vistaについては、もうユーザーが少ないのでしょうか、あまり聞きませんが、筆者と同様の状況は海外のフォーラムで散見されます。

 Windows 10のWindows Updateでは、更新プログラムが多すぎて問題になったり、Windows Updateのサービス側の変更の影響で問題になったりという状況は発生しないでしょう。これはWindows 10の良いニュースです。

 Windows 10でなぜ問題にならないのかというと、前述のようにWindows 10の更新プログラムは“累積的な更新プログラム”だからです。Windows 10をクリーンインストールしたとしても、インストールするべき更新プログラムの数は少なくて済みます。

 また、Windows 10のこれまでの状況を踏まえると、年に2回は機能アップグレードがWindows Updateで行われます。機能アップグレードは、OSのアップグレードインストールと同等であり、更新プログラムの状態はそのたびにリセットされ、更新プログラムが100を超えるという状況にはなりません。

 Windows 10のWindows Updateのこの変更については、数年後に再評価されることになるでしょう。

 もし、Windows 8.1以前を使っているのなら、「Systeminfo」コマンドを実行してみてください。最新状態に更新されているPCでは、更新プログラム(ホットフィックス)情報の出力が途中で途切れてしまうはずです。Windows 7 SP1やWindows 8.1では今後、セキュリティ更新ではない重要な更新を個別ではなく、Windows 10と同じように累積的な更新プログラムとして提供するようですが、今後も更新プログラムが提供され続けることには変わりません。

 なお、Systeminfoコマンドの問題は、かなり古いバージョンのWindowsから存在する既知の問題であり、Windows 8.1まで修正されることはありませんでした。インストール済みの更新プログラムをコマンドラインから確認するには、「wmic qfe」コマンドまたはWindows PowerShellの「Get-Hotfix」コマンドレットを使用する必要があります。Windows 10のSysteminfoコマンドにも同様の問題が存在するかもしれませんが、Windows 10では数百の更新プログラムという状況は発生しないので、影響することはないはずです。

●現状、「WindowsUpdate.log」が“役立たず”な件について

 最後に、Windows 10の「WindowsUpdate.log」について、現状の問題点を指摘しておきます。Windows 8.1以前は、Windows Updateが正常に動作しないとき、ログファイル「C:\Windows\WindowsUpdate.log」を調べることで、動作状況を追跡することができました。

 Windows 10の「WindowsUpdate.log」は、Windows Updateのログを記録しません。Windows Updateのログは「Event Tracing for Windows」のログに変更され、そのままでは人が読めない形式になりました。Event Tracing for Windowsで収集されたWindows Updateのログは、Windows PowerShellの「Get-WindowsUpdateLog」コマンドレットを使用して人が読める形式にデコードする必要があります。

 Get-WindowsUpdateLogコマンドレットは、インターネット経由でサーバからデコードに必要なシンボル(デバッグ用のシンボル)をダウンロードし、成形してデスクトップにテキスト形式のログファイル「WindowsUpdate.log」を保存します。

 しかし、Get-WindowsUpdateLogコマンドレットが保存した「WindowsUpdate.log」を参照すると、次のような行が大量にあります。ちなみに、インターネットから切断した状態でGet-WindowsUpdateLogコマンドレットを実行すると、全ての行がこのような行になります。

1601/01/01 09:00:00.0000000 300 XXXX Unknown( XX): GUID=XXXXXXXXX-XXXX-XXXX-XXXX-XXXXXXXXXXXX (No Format Information found).

 大量のノイズに埋もれるような感じで正しくデコードされた意味のあるログもあるので、現状、デコードに必要なシンボルが十分に整備されていないと思われます。または、別の問題があるのかもしれません。これまで、Windows 10で「WindowsUpdate.log」を参照する必要があるトラブルには遭遇していませんが、この状況ではトラブルシューティングに役に立つとは思えません。

●Windows 10 Anniversary UpdateでWindows Updateはまた変わる

 2016年8月に入るとすぐに、次の機能アップグレード「Windows 10 Anniversary Update」(バージョン1607の予定)の提供が始まります。Windows 10 Anniversary UpdateではWindows Updateがどのように変更されるのか、開発中のビルドである「Windows 10 Enterprise Insider Preview」で確認してみました。正式リリースや他のエディション(未確認)とは違っているかもしれませんが、ご参考までに。

 新しいWindows Updateに関しては、良いニュースと悪いニュースをお伝えできます(良い悪いは筆者個人の判断です)。

 良いニュースの方は、「アクティブ時間」という設定オプションが新たに追加され、アクティブ時間の間は自動的に再起動されなくなるようです。席を離れていたら再起動が始まっていた、といったトラブルは少なくなると思われます。ただし、既定のアクティブ時間が8時~17時になっているので、自分の仕事や生活のスタイルに合わせて調整する必要があるでしょう。

 悪いニュースの方は、詳細オプションから「更新プログラムのインストール方法を選ぶ」がなくなることです。これまでの「自動(推奨)」の設定を変更できなくなり、完全にWindowsにお任せになります。Pro以上のエディションであれば、ローカルコンピューターポリシーやグループポリシーで更新オプションを変更することは引き続き可能なようです。ただし、ポリシーが正しく適用されているかどうかを、Windows UpdateのUIから確認することはできません。

 また、これまではダウンロードおよびインストール中に表示できた「詳細」も見当たりません。どのような更新プログラムがインストールされるかなんて、ユーザーは知らなくてもよいということなのでしょうか。嫌われてもいいから、ユーザーを守りたいということなのかもしれませんね。

●筆者紹介 山市良:岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。

最終更新:7月15日(金)6時10分

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