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なぜ今、唐突に 「石棺化」言及導入の布石か

福島民報 7月15日(金)9時53分配信

 東京電力福島第一原発の廃炉技術を研究する原子力損害賠償・廃炉等支援機構が溶融燃料(燃料デブリ)を建屋内に閉じ込める「石棺」方式に突然言及したことを巡り、福島県や立地自治体は「議論がないまま方針転換するのか」と不信感を募らせている。機構は一貫して、燃料デブリを取り出して処分すると説明してきたためだ。唐突感は否めず、「石棺化にかじを切る布石ではないか」との観測も出ている。

 「通称“石棺方式”の適用は、(中略)長期にわたる安全管理が困難」。機構が13日公表した廃炉についての戦略プランは300ページに及ぶ。石棺方式に触れたのは6行のみで、前半には導入に否定的な言葉が並ぶ。
 だが、文章は「(中略)今後明らかになる内部状況に応じて柔軟に見直しを図ることが適切である」と続く。「玉虫色」に見える表現の真意は一体どこにあるのか。
 「石棺に選択の余地を残した」との報道を受け、機構は14日夕、「事実と異なる」とする文書をマスコミ各社に送り火消しに走った。県内の行政関係者から石棺について質問を受けるため「機構の見解を示すため記載した」とも説明している。
 もともと戦略プランは、政府と東電が策定した廃炉の中長期ロードマップを進める上での課題などをまとめている。しかし、ロードマップは石棺方式に一切触れていないだけになぜ、改めて戦略プランで取り上げる必要があるのか。疑問は消えない。
 中長期ロードマップでは来年を燃料デブリ取り出しの工法を決める時期としている。政府の福島第一原発事故調査・検証委メンバーを務めた九州大の吉岡斉教授は「燃料デブリの取り出しが失敗して関係者が責任を問われることがないよう、石棺化という別な方法をにおわせた可能性がある。来年以降の本格的な議論への地ならしにも見える」と指摘する。

 県は「石棺化は容認できない」と強く反発しており、内堀雅雄知事が15日、高木陽介経済産業副大臣に県外処分を改めて要望する。
 国の核燃料サイクル政策は、国内の原発から出た使用済み核燃料を青森県六ケ所村の再処理施設に搬入しウランなどを取り出して有効活用するとしている。東京電力福島第一原発事故前、同原発と福島第二原発からも一部が運び出されてきた経緯があり、県は燃料デブリについても同様の扱いを求めてきた。
 中間貯蔵施設に運び込まれる汚染土壌などについては県外最終処分が法制化された。一方、燃料デブリについては取り出し後の保管・処理方法は白紙だ。県関係者は「急いで議論しなければ、県内への燃料デブリ固定化を招きかねない」との危機感をにじませる。

 政府と東電は廃炉が今後、3、40年続くとしている。事故発生からわずか5年余りで石棺方式が浮上した背景について、角山茂章県原子力対策監は「機構が燃料デブリの取り出しは困難という認識を持ったためではないか」と推測している。
 一方、福島第一原発が立地する双葉町の担当者は「燃料デブリを取り出さなければ、廃炉の達成とは言えない」と強く訴えている。

福島民報社

最終更新:7月15日(金)11時0分

福島民報