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Excelの操作、覚えなくてもググればOK?

ITmedia エンタープライズ 7月15日(金)9時46分配信

 私が担当する研修2日目、電子メールの講座は大した問題もトラブルもなく、つつがなく終わった。

【画像:実際にGoogleで「Excel」と検索しようとすると、関数というワードや、いくつかの関数が絞り込みの候補に上がってくる】

 「電子メールにスタンプは使えるか?」という質問は、HTML形式のメール本文を見た新入社員が、メールでもスタンプが送れるはずだ、と思って質問してきたらしい。確かに仕組みを知らない人だったら、HTML形式のメールで本文に画像が貼り付けられているのとスタンプとの見分けはつかないだろうなぁ。

 3日目のテーマはExcel。新入社員たちのWordやExcelのリテラシーはというと、私が期待していたよりも……低かった。もちろん全員がそうだ、というわけではないけどね。考えてみれば、IT専業の会社でもなければ、ITリテラシーの高い学生だけを採用することはない。だからウチの会社のように、社内ITヘルプデスク部門があるわけだけど。

 研修を通じて、イマドキの若者のITリテラシー(特にOfficeスイート)に関する傾向がだんだんと分かってきた。大体こんな感じだ。

・学校や私生活でWordやExcelを使った経験は全員ある。一度も使ったことがないという人はいない。
・学校では指定された課題をやったり、完成見本(または先輩からのお下がり^^;)を見ながら操作をしたりすることが多く、そのための機能「のみ」学ぶ傾向がある。私生活で使う場合は、Web上にあるテンプレートを利用したり、友人からよくできた半完成品をコピーさせてもらったりする。目的の成果物を完成させるのが最優先。
・そのため、WordやExcelのさまざまな機能を基礎から体系的に理解している人は非常に少ない。課題や目的の成果物ができれば、それを作るために使った機能にはあまり興味はない。多くの学生は、学校の授業で真剣にそれらの機能を覚えようとはしていない。

 こうなると、WordやExcelに備わっているさまざまな機能を探そうとするわけがない。例えば、空白文字をいくつか入れて文字列を真ん中に持ってくることに成功してしまえば、わざわざ「中央寄せ」という機能を探してまで使おうとはしないのだ。その場を切り抜けるには効率的かもしれないけど……いやでも、これって新入社員に限らない話かも。ITに興味がなければみんな大体そんな感じよね。

 こりゃExcelの研修でも、テキストの最初から飛ばさず丁寧にやる必要がありそうだ。恐る恐る講座を始めて少したったころ、Excelのセル(マス目)に計算式を入力させよう思って簡単な表を作らせたとき、新入社員の手が上がった。

●電卓で入力した数値をExcelで入力って……

新入社員: あの……。

わたし: はい? 何か分からないところがあるのかな?

新入社員: いいえあの、すみません。今日は電卓を持ってきていないんですが……。

わたし: え?

新入社員: 電卓の代わりにスマートフォンのアプリを使ってもいいですか?

わたし: なんですと!?

 言った。本当に言った。「なんですと!?」って。人間、予期せぬ出来事に遭遇すると、自分でもびっくりするようなことを口走るものだとよく分かった。

わたし: いやいや、Excelを使うんだから電卓はいらないのよ……。

新入社員: え!?

 さすがに、新入社員は「なんですと!?」とは言わないなぁ。言わないか。詳しく話を聞くと、大学時代は合計値やら平均値やらは全て電卓で計算し、その計算結果をセルに入力していたのだそうだ。うわー、お疲れさまです。じゃなくて、計算式入れようよ……。

わたし: ほら、先頭に「=」を入れたら式を入れることができるのよ。こうしたら――ほら、Excelが勝手に計算してくれるでしょ。

 計算式(ただの足し算なんだけど)を入力してEnterキーを押すと、式を入力したセルに計算結果が表示される。質問した本人だけでなく、一部の人から「おぉー」という声が上がった。これは2、3人いるぞ……。本当に? ひとまずフォローしておこう。

わたし: 表計算ソフトってね、表の中に計算式を入れると自動的に計算してくれるんだよ。

 この説明はまずかった(まずいとは思ってもみなかったけれど)。新入社員にとって「分からないこと」を無駄に増やした、つまり、一部の新入社員に「表計算ソフト」というExcelとは別のソフトが登場したと思われてしまったのだ。ここは「Excelってね……」と言えばよかったのに。

新入社員A: 表計算ソフトってなに?

新入社員B: さぁ……Excelは知っているけれど、表計算ソフトってのは知らないなぁ。

 そんな新入社員たちの会話を聞いたときには、本当にびっくりした。この時点で「デジタルネイティブな人たちにITリテラシーを教えるのは簡単。FAQもあるし、これでヘルプデスクの仕事が楽になる」という私の考えは、“現実”の前に脆くも崩れ去った。

 どうやら、想定よりもハードルを下げて説明したほうがよさそうだ。気を取り直して「Excelは表計算ソフトの一種」ということを説明し、

わたし: 「=2/4」って入力したら、この式の答えである0.5が出てくるでしょ? これが計算式。「=」で始めたら計算式だって自動で認識してくれるの。でも、「=」を入力せずに「2/4」って入れたら、ほら「2月4日」になるんだよ。この場合は、計算式だって認識されていないわけ。

 と説明したら、「おぉ~」と感動する新入社員と、そんなこと知ってまーす、という雰囲気の新入社員とに見事に分かれた。新入社員のITリテラシーは低い、とひとくくりにした自分に反省。彼らの知識レベルは、随分とバラつきがあるようだ。その後私は、頭が真っ白になりそうなくらい研修室中を走り回る羽目になった。結局、前の新入社員研修のときからあまり進化していない……。

 この話を思い出してて気付いたんだけど、新入社員の中でITリテラシーの高い人に私の「助手」になってもらって、ITリテラシーの高くない人たちに教える、ということを手伝ってもらえばよかったかも。えーん、でも後の祭り。

 その後は計算式の応用ということで、関数の話に講義が進んだが、さらなる事件が起きた。

●Excelの関数は覚えなくてもググればOK?

新入社員: 関数って、全部覚えなくても使いたいときにググればいいですよね?

わたし: え? ……まぁダメとは言わないけれど。覚えられない?

新入社員: 調べて出てくるなら、覚える必要はないんじゃないかと思うんです。

 言われてみればそうだな……ん? 私が言いくるめられてどうする。

 確かに、めったに使わないような関数はその都度調べて使う、ということはよくある。でも、よく使う関数の使い方をいつも調べるようでは効率が悪い。それに、仕事のやりかた、仕事で使うツールの使い方を「覚える」のも新入社員の仕事のうちだと思うのよね。

 配属されてから最初のうちは、既に作られているフォーマットにデータを入力するような仕事が多いだろうから、問題は少ないかもしれない。でも、将来書類を作る立場になるとそうはいかない。Excelのワザを多数紹介する本がよく売れているのも、それだけニーズがあるということだ(ということは、世間の人はやはり覚えていないのか?)。

 分からないことを調べる、というのは決して悪いことではないし、調べる力があるとか、調べるためのリソースをたくさん知っていることも立派な武器だ。けれど、たくさん経験して覚えて、正解がないような場面でも、たくさん応用できるようになってほしい。うーん、それをうまく説明できないなぁ。結局、質問してきた新入社員に答えられたのは、次の一言だけだった。

わたし: でも仕事のやり方は、ググっても出てこないから覚えてね……。

最終更新:7月15日(金)9時46分

ITmedia エンタープライズ